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なぜ「ケアレスミス」はなくならない?
――いくら口酸っぱく「気を付けようね」と言ってもなくならない、子どものケアレスミス…これって、直らないものなのでしょうか?
えりか先生 ケアレスミスをなくせるかどうかは、まずは本人の意識しだい。同じ不正解でもケアレスミスの場合、「本当はわかっているから大丈夫」と、ミスに対する危機感に乏しい子が多い気がします。
ただ当然のことながら、ケアレスミスもミスはミス。テストではケアレス(注意不足)であれ理解不足であれ、一律にミスとカウントされ点数がもらえません。「たかがケアレスミス」「本当はできていたはず」とミスをうやむやにするのではなく、「ケアレスミスをなくして向上したい!」と本人が自分の癖に真摯に向き合うことが改善への第一歩だと思います。
――危機感を持たせるために、親は子どもにどう接したらいいでしょうか。少しは脅したほうがいい!?
えりか先生 いいえ。脅しをかけると子どもがますます勉強から逃げ出したくなるなど、逆効果かもしれません。ケアレスミスをネガティブに捉えるのではなく、むしろ「伸びしろ」「成長のチャンス」とポジティブに捉える方向がよいでしょう。
というのも、先ほど“ケアレスミスもミスはミス”とお伝えしましたが、知識や理解が不足していることによる不正解よりも、解き方までは分かっているという点でケアレスミスのほうが正解までの距離が近いことは確かなんです。
ゼロから新しいことを学ぶよりも、ケアレスミスの改善に取り組むほうが、バツがマルに変わるのを実感しやすく「やればできる!」という自信にもつながるかと思います。
テスト後は親子の「作戦会議」でケアレスミスを得点源に!
――親としてはついイライラしてしまうケアレスミスが、実は「伸びしろ」だとは目からウロコが落ちるようです。

えりか先生 わが子のことを真剣に思えばこそ、親御さんが焦ってしまうのも当然でしょう。ただ、自分では分かっているつもりなのに、思うようにテストの得点に反映されず誰よりも傷ついているのは当人ではないでしょうか。そこへお母さんからケアレスミスについて責められると、「いくら勉強しても自分はどうせできない」と、ますます勉強に対して後ろ向きになりかねません。
それに、ケアレスミスについて「本当は分かっているから大丈夫!」と言い張るお子さんは「理解できていることは認めてほしい」というもどかしい思いを抱えていることがあります。常日頃できていないことばかり指摘されていると感じているからこそ、ケアレスミスを認めたくない。そのために、ケアレスミスを改善するきっかけをなかなかつかめないという負のスパイラルです。
――叱るとかえってよくないんですね…。ケアレスミスの多い子どもにはどう接したらいいのでしょうか?
えりか先生 テストが返ってきたらケアレスミスを叱る前に、まずは少しでもできている部分を褒めてあげてほしいです。そのうえで、「あと5~10点上げるにはどうしたらいいだろうね」と親子で作戦会議をするのがよいかと思います。
親から一方的に「ああしなさい」「こうしなさい」と押しつけるのではなく、「あなたはどうなりたいの?」とできるだけ子どもの気持ちにフォーカスしてみてください。もちろん、子ども自身がどうすればいいのか分からないことのほうが多いので、親が「ケアレスミスは正解まであと一歩のところまで来ている惜しいミスなんだよ」「このミスをなくせば100点だね!」など気づきのヒントを与えるのはOKです。
テストの見直しを子どもの糾弾の場ではなく、得点力アップのきっかけを見付けるためのワクワクする時間にして、子どもの「ケアレスミスをなくして向上したい!」という気持ちを後押ししてあげてください。
自己採点の習慣がケアレスミスを改善すると共にメタ認知能力を高める
――子どもが「ケアレスミスをなくしたい!」とやる気になったら、まずは何から始めればよいのでしょうか?

えりか先生 自分のケアレスミスの傾向を徹底的に分析・把握することからですね。そのためにも、子どもが解いた問題は自分で答え合わせをさせてください。
自分の答えと解答とを突き合わせて正しいか間違っているかを判断するセルフ採点は、客観的に自分の解答を見る力、メタ認知能力を高める効果があり、ケアレスミス改善につながるだけでなく、自分で主体的に学ぶ姿勢を小学生のうちから身につけるのに効果的です。
子どもが答えを見るのがよくないとか、時間がもったいないなどの理由で、親御さんがマル付けをしている家庭は多いかと思います。でも、親が付けたマルバツをただ眺めるだけでは、結果に対する当事者意識を持ちにくいのではないでしょうか。
他方、自分で答え合わせをすれば、マルを付けるときは「よし!」という達成感が得られ、バツを付けるときには「しまった!」という危機感が伴い、「なぜ間違えたのか?」「どうすれば次は正答できるのか」という問いが自然と湧き上がってきます。
――子どもに答え合わせをさせると、不正解なのにマルにしちゃったりしないでしょうか?
えりか先生 それはありますね。だから、子どもに任せきりにするのではなく、親御さんもこっそりチェックはしてください。ただ、子どもの自己採点が甘いからといって、「ここ間違っているじゃない」とか「いい加減なことしないで!」など頭ごなしに叱るのはNGです。

えりか先生 「たくさんマルが付いたね! 念のためもう一回チェックしてみようか」とか「ここの問題が解けたのはすごいね。どうやって解いたのか教えてくれる?」など、さりげなくバツの問題の見直しを促しましょう。
それから、「自分が先生になったつもりでチェックしてみて」と子どもに伝えるのもおすすめです。自分の答案だと全部マルを付けたくなりますが、先生という立場になるとそんないい加減なことはできませんよね。
私自身も生徒さんの名前に“先生”を付けて「〇〇先生、答え合わせお願いします!」なんて声をかけていますが、生徒さんはその気になって「自分は先生なんだから生徒のためにちゃんと仕事しなければ」という責任感を持ってマル付けを遂行してくれますよ。
ケアレスミスの原因を徹底的に具体化して改善策を導く
――自分のケアレスミスの傾向を把握するためには、どのようなことをすればいいのでしょうか?
えりか先生 私の運営するスクールの「ケアレスミス改善講座」では、どのようなケアレスミスだったのかについて具体的に突き詰めていきます。
生徒さんに「なぜ間違えたのか?」を問うと「ケアレスミスでした」の一言で終わらせてしまいがちですが、それだけでは分析として不十分です。なぜそのミスに至ったのか、より具体的に言語化することで、ケアレスミスを改善するのに効果的な対策を導けます。
例えば、算数の計算ミスで、途中の計算で「2+5」を10としてしまったために正しい答えにたどり着けなかったとします。この場合、「+」と「×」の取り違えという可能性もありますが、もしかするとその生徒さんは「2」と「5」を見ると反射的にかけ算をしてしまう思考の癖があるのかもしれません。そこまで分析ができれば、次からは数字の「2」と「5」が出てきた瞬間、アラートが鳴ってケアレスミスの防止につながります。

このような掘り下げた分析は、自分の解答を客観視することが必要なので、最初は難しいかもしれません。どこで間違ってしまったのか、お母さんお父さんも一緒に探してあげるなどして、ケアレスミスを誘発する思考の癖を突き止めましょう。
テスト中、ケアレスミスを防ぐために心がけることは?
――ケアレスミスを防ぐために、テスト中に気を付けることはありますか?
えりか先生 実は、ケアレスミスのパターンとして非常に多いのが問題文の読み飛ばしです。りんごの数を問われているのに、みかんの数を答えてしまったり、問題文にいくつか条件が提示されているのにそれをスキップしたために正解にたどり着けなかったり…。
問題文を読みながら何が問われているのかしっかり意識するというのは、できる人にとっては当然のことですが、それができていない生徒は小学生に限らず中学生くらいでも少なくありません。
このタイプのケアレスミスが多い生徒さんには、漫然と問題文を斜め読みしてしまわないように、問題文のキーワードや問われていることには必ず線を引くように指導しています。
――問題文の読み飛ばしは、全教科に関わることなので、ここを意識するだけでもケアレスミスの防止効果はかなりありそうですね。他にはどんな点を気に付ければよいでしょうか?
えりか先生 問題を解くための自分の思考過程はできるだけ書き残しましょう。
シンプルな例で言えば、さっと暗算できる問題であっても、計算式を書く。また、筆算では繰り上がり、繰り下がりの数字をきちんと書く。もう少し複雑な算数の文章題でいくつかの手順を積み重ねて答えを出す問題であれば、どの段階の式なのかメモを残すことがケアレスミスを防ぐことにつながります。
問題の解き方は理解しているはずなのに、なぜかテストになると得点に結びつかないのは、自分の頭の中だけで問題を処理しようとしているのが一因です。

えりか先生 自分の頭の中で分かっていることは「面倒だから」と過程を書き残さないでいるために、自分がどの段階にいるのか途中で分からなくなったり、計算ミスに気づかないまま進めてしまったりして、正解にたどり着けないことがあります。頭の良い子ほど陥りがちです。
解けるはずの問題を落とすこと自体、非常にもったいないですよね。しかも、思考過程のメモがないと、先ほど述べたケアレスミスの傾向分析をしようにも、自分が一体どこでつまずいたのか特定が困難になってしまいます。
中学以降に「伸び悩む子」「伸びる子」の違いはここにあった!
――メモを残さない理由としては、「面倒だから」という以外に、「制限時間がタイトな試験中にいちいち書いていられない」という焦りもあるのでは?
えりか先生 それもあるかもしれませんね。とくにメモ書きに慣れていない生徒さんだと、どれくらい時間がかかるか分からないために不安が大きいかと思います。
ただ、実際にやってみると、メモを書くことで頭の中の整理ができてスムーズに解けるという効用もあるので、その作業が致命的なタイムロスになることはありません。メモを書かずに解くのと、メモを書きながら解くのとで、どれくらい時間や正答率が変化するのか計測してみれば、おそらく「急がば回れ」を実感できるのではないでしょうか。
それに、小学生のうちから“解きながらメモを残す”習慣を身に付けておくことは、中学以降の学習にも大きくかかわることになるのです。学年につれて問題の難易度も上がると、いよいよ頭の中だけで処理することが困難になりますが、「書かずに解く」癖が染み付いてしまっていると、そこで一気に立ち行かなくなってしまいます。
小学生のうちから自分の思考を可視化する習慣があれば、学習の土台が身に付いているのも同然。難問に直面して歯が立たないことがあっても、自分の解答の筋道と正答ルートとをじっくり照らし合わせて軌道修正を図ることができるからです。
どこで間違えたのか、どうすれば解けるようになるのかを自分で把握することで「やればできる!」と自信がつき、より難しい問題にもチャレンジする意欲が湧いてきますよ。
――問題を解く際にメモを残すというちょっとした習慣が、ケアレスミスを防ぐだけでなく中学以降の学習の伸びにもつながってくるんですね!
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ミスを責めるのではなく、思考のプロセスを親子で可視化していくこと。その積み重ねが、中学受験のみならず、その先の「自ら伸びる力」へとつながっていくはずです。まずは今日から、お子さんに「〇〇先生、採点お願いします!」と声をかけるところからスタートしてみてはいかがでしょうか?
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お話を聞いたのは…
オンライン全国個別指導塾「E-School☆」代表。勉強を習慣化するためのオンラインスクールを全国で運営。東京と山形を拠点にオンラインで小学生から高校生まで全国の子どもたちを指導。家庭教師からロコミで評判が広がり塾経営17年目。中高数学・理科の教員免許取得。塾講師としての経験は20年を超え、3000人以上の指導実績がある。
自分を含め、これまで3000人以上の生徒の個別指導をしてきた経験20年超の塾講師が、ケアレスミスをなくして、学力をグングン上げていく勉強のコツを、徹底伝授。ケアレスミスを引き起こす、「学習のクセ」「メンタル」「生活習慣」の3大原因に着目。 親のちょっとしたサポートで、我が子の本来の力が100%発揮できるようになる、コツやポイントを多数紹介。
取材・文/中田綾美