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グリーンランドの購入に意欲を見せるトランプ大統領
最近、アメリカのトランプ大統領が、デンマークの領土である「グリーンランドを買いたい」という考えを繰り返し強調し、世界中で大きな話題となっています。一見、遠い北の果てにある氷の島をなぜ欲しがるのか不思議に思うかもしれません。
しかし、そこには世界中の企業が注目する宝の山と、地球の未来を変えるかもしれない新しい海の道が隠されています。
グリーンランドは石油や天然ガス、鉱物の宝庫
北極圏にあるグリーンランドは、島のほとんどが分厚い氷で覆われています。これまではその厳しすぎる寒さのせいで、地面の下に何があるのかを調べることさえ困難でした。
ところが、地球温暖化によって氷が少しずつ溶け始めたことで状況は一変。氷の下には、私たちの暮らしに欠かせない石油や天然ガスが、世界全体の数割にも及ぶほど大量に眠っていることが分かってきたのです。
さらに、スマートフォンや電気自動車を作るために必要な「レアアース」という貴重な鉱物も豊富に含まれています。これらの資源を手に入れることは、これからの世界の経済をリードすることに直結するため、アメリカだけでなく中国やロシアといった大国、そして世界中の企業が熱い視線を送っています。

氷が溶けたら、物流の新たなルートができる
また、氷が溶けることで「北極海航路」という新しい海のルートが現実味を帯びてきました。これまで、アジアからヨーロッパへ荷物を運ぶには、南回りでスエズ運河を通る長い旅が必要でしたが、氷がなくなって北極海を通ることができれば距離を約4割も短縮できます。
時間はもちろん、船の燃料も大幅に節約できるため、物流の常識を覆す「未来のハイウェイ」として期待されているのです。トランプ大統領がグリーンランドにこだわるのは、単に土地が欲しいわけではなく、この場所が新しい資源開発と国際物流の「一等地」になることを見越しているからだといえます。
なぜグリーンランドがデンマークの領土なの?
ところで、この巨大な島はなぜ遠く離れたヨーロッパの国、デンマークの領土(自治領)なのでしょうか。その歴史は1000年以上前の北欧人の祖先バイキングの時代までさかのぼります。
当時、アイスランドからやってきた「赤毛のエリク」という人物がこの島を発見し、入植しました。その後、14世紀にデンマーク、ノルウェー、スウェーデンが「カルマル同盟」という一つのグループになった際、ノルウェーの領地だったグリーンランドはデンマークの管理下に入りました。

その後、他の国々が同盟から離れてもグリーンランドはデンマークのもとに残り続け、18世紀以降の本格的なキリスト教の布教や植民地化を経て、現在の形になりました。
地球温暖化によって、世界の経済や歴史が大きく動くことに
このように、グリーンランドをめぐる動きは、古い歴史と最新の地球環境の変化が複雑に絡み合っています。地球温暖化という深刻な問題が、皮肉にも新しいビジネスのチャンスを生み出し、それが国と国との大きな駆け引きにつながっているのです。
北極の氷が溶けていくニュースを見るときは、それが単なる気象の変化だけでなく、世界の経済や歴史を大きく動かしていることを親子で想像してみると、新しい発見があるかもしれません。
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記事執筆/国際政治先生
国際政治学者として米中対立やグローバルサウスの研究に取り組む。大学で教壇に立つ一方、民間シンクタンクの外部有識者、学術雑誌の査読委員、中央省庁向けの助言や講演などを行う。
