【2026年中学受験を振り返る】サンデーショックが変えた女子入試。偏差値だけではない「学校選び」の実態は?首都圏中学入試の結果と分析(森上教育研究所講演レポート)

2026年度の中学入試は、2月1日が日曜日となった「サンデーショック」の影響を大きく受けました。特に女子校では御三家のひとつをはじめとするプロテスタント校の入試日程が変わり、併願パターンや出願動向、繰り上げ合格の発生状況まで例年と異なる動きが見られました。一方で男子校や共学校では教育内容や大学合格実績への評価を背景とした人気上昇校も目立ちました。ここでは、2月19日、順天堂大学小川秀興講堂で行われた「2026年入試 首都圏中学入試の結果と分析」(主催:森上教育研究所)の講演内容と、首都圏模試センターの分析をもとに、2026年入試の特徴と2027年以降に向けた受験戦略を整理します。

女子校:サンデーショックの影響もあり御三家の志願者増

入試は、桜蔭と雙葉が例年通り2月1日、キリスト教系の女子学院は翌2月2日に入試を実施。これにより、例年は同日に実施されるため1校しか受験できない女子御三家を、2校受験できる状況が生まれ、女子学院は昨年の706人から1,088人に、桜蔭は542人から599人に、雙葉は389人から435人に志願者が増加しました。

一方で、キリスト教系でもフェリス女学院中学校や横浜雙葉中学校は、従来通り2月1日に入試を実施。女子学院との併願が可能になり、今年ならではの併願パターンが生まれるなど、各校の出願者数にも影響が見られました。

御三家の結果を見ると、女子学院は繰り上げ合格者を足したとしても合格率は約38%と見られ、例年よりも厳しい入試になりました。2月2日の女子学院は、出願者1,088人に対して受験者は947人で、約150人が欠席しています。これは、2月1日の入試結果によって受験校を変更し、2月2日は別の学校を受験する受験生が多かったことを示しています。サンデーショックの影響により、受験生の動きが大きく変わった、非常に特徴的な入試だったと言えるでしょう。

雙葉については、合格者数は130人とかなり絞られていました。合格発表後、1日に1~2人程度の繰り上げ合格が何日も続くような状況で、最終的には例年と大きく変わらない入試結果に落ち着きました。桜蔭は補欠合格を32名発表し、その全員が繰り上げ合格に。その結果、合格率56%と、ほぼ例年通りの入試になりました。ただ、補欠が全員合格するのはなかなかないので、これによって多くの学校が影響を受けました。

女子校の平均出願数が過去最高に!

女子校の中では、山脇学園の人気上昇が特に印象的でした。受験者数は前年比で407人増加し、受験者増加校ランキングでも上位に入っています。このほか、白百合学園、頌栄女子学院、フェリス女学院で面接を廃止するなど制度面でも変化があり、今年は男子校より女子校のほうが動きの大きい入試となりました。

また、女子校は複数校に出願する傾向が強く、平均出願校数は過去最多の8.23校に。午後入試を組み合わせる受験パターンが定着していることも、今年の特徴でした。次の「サンデーショック」は、新小学1年生が6年生になる2032年度入試です。6年後と聞くと遠く感じますが、受験準備の期間を考えると決して長い時間ではありません。該当するご家庭は、早い段階から入試日程の動きや併願パターンの変化を意識しておくことが大切になるでしょう。

男子校:安定した入試に。「面倒見のよさ」が再評価

女子校に比べると、男子校は大きな日程変更がなく比較的落ち着いた入試でした。ただしその中でも志願者を大きく伸ばした学校はいくつか見られます。

東京都市大学付属は前年比436人増と大きく志願者を増やしました。大学合格実績の上昇に加え、学校説明会では先生と生徒の距離の近さや面倒見のよさが印象的だったという声が多く聞かれています。

佼成学園も志願者数を伸ばした学校の一つです。国公立大学の合格実績が伸びていることに加え、「丁寧な男子教育」という方針が説明会でも強く語られていました。教員の対応が熱心で、学校全体の雰囲気のよさが保護者の支持につながっているようです。

攻玉社も志願者を増やした学校に挙げられます。駅から近い立地や大学進学実績に加え、説明会では先生の語りが非常にわかりやすかったという声もあり、学校の教育姿勢が評価されています。

高輪では大学進学実績の向上に加え、「中学1・2年でマナーを徹底して身につけさせる」という教育方針に共感した保護者が多かったようです。

暁星ではキリスト教教育と語学教育に焦点を当て、英語とフランス語を必修とする教育方針が注目されています。

男子校では大学進学実績に加え、丁寧な男子教育や面倒見のよさを打ち出す学校への評価が高まっています。

共学校:人気は引き続き加速。堅実志向も

共学校はここ数年続く人気を維持しています。社会に出れば男女が一緒に働くのが当たり前という意識や、小学校まで男女一緒に学んできた流れから、自然な環境として共学校を選ぶ家庭が増えていることが背景にあるのではないでしょうか。

今回を振り返っても、「堅実志向」がさらに強まった印象です。難関校だけに挑戦するのではなく、合格の可能性を見ながら確実に進学先を確保する受験計画を立てる家庭が増えています。一方で難関校の入試レベルは依然として高く、受験者数が多少減っても合格者の学力層は変わらないため、入試の難度自体は維持されています。

地域別に見ると、埼玉では前年に受験者が大きく増えた反動で今年はやや減少しました。千葉では受験者数や倍率はほぼ例年並みで、比較的落ち着いた動きでした。千葉では地元志向が強く、麗澤や八千代松陰、昭和学院など特色ある学校が安定した人気を保っています。神奈川では新しい動きも見られました。鎌倉女子大学中等部が共学化し「鎌倉国際文理中学校」としてスタートし、出願者が大きく増えています。

入試日程の使い方も変化しています。以前は「午前にチャレンジ校、午後は安全校」という併願が多く見られましたが、最近では午後入試でも挑戦校を受けるケースが増えています。受験機会が増えたことで、午後入試の役割が広がってきていると言えます。

出願数を大きく増やしたのが文教大学付属と東京農業大学第一です。文教大学付属は人間愛を軸とした面倒見のよい教育と放課後学習などの手厚いサポートが評価され、前年比約1.5倍となる延べ2,755名の志願者を集めました。東京農業大学第一は豊富な体験型学習、難関私立大に対応する高い進学実績、文武両道の校風が人気。第1〜4回入試の合計出願者数が3,452人、実質倍率が3.3倍となり、受験者数・出願者数ともに過去最高を記録しました。

入試全体:受験率は過去最高水準を維持

受験者数が高い水準を保つ一方で、学校選びの基準が少しずつ変化してきていることが特徴でした。

首都圏模試センターの集計によると、2026年の首都圏中学受験者数は52,050人で、受験率は18.06%でした。中学受験は依然として人気が高く、受験率は過去最高水準に近い状況となっています。入試日程の動きでは、サンデーショックの影響も見られました。2月1日午前の受験者数がやや減少する一方、2月2日午前や2月3日の受験者数が増加し、受験日程が分散する形となりました。

地域別に見ると、東京都では受験者数が前年より増えましたが、神奈川や埼玉ではやや減少するなど地域差も見られました。ただし、こうした受験者数の変化があっても、難関校の入試レベルは依然として高いままです。受験者が減ったからといって合格が容易になったわけではなく、合格者の学力層は大きく変わっていません。結果として、入試の難易度は引き続き高い水準が維持されたと言えます。

問題傾向:「暗記」の壁を越える。全教科で突きつけられた「思考のプロセス」

4教科ともに「基礎力+思考力」を重視する傾向がよりはっきりと見られました。国語は奇抜な出題よりも、文章を丁寧に読み取るオーソドックスな問題が中心となり、記述や内容理解を通して読解力を問う出題に回帰しています。

算数では、典型問題の単純な反復ではなく、定番解法を理解したうえで条件を少し変えたり組み合わせたりする「考える問題」が増え、解法の暗記だけでは対応しにくい問題が目立ちました。

社会は昨年に続き全体として比較的平易な難易度で、特に最難関校では基礎知識を土台に資料や統計、文章を読み取りながら答える問題が多く、読解力の重要性が高まっています。

理科ではデータやグラフ、実験結果などをもとに考察する問題が増え、与えられた情報をその場で整理しながら判断する力が求められました。4教科を通して、単なる知識量だけではなく、情報を読み取り、考えて答えを導く力が重視される入試となっています。

2027年以降に向けて:学校選びは「偏差値」から「わが子に合う6年間」へ

今回の入試から見えてきたのは、中学受験の学校選びの基準が大きく変わりつつあるという点です。もちろん偏差値や大学合格実績は依然として大切な要素ですが、それだけで学校を選ぶ家庭は少なくなっています。教育方針や校風、学習環境などを総合的に見て、「その子にとって最も合う学校」を探す動きが広がっています。大学進学のルートが多様化する中で、その学校でどのような進路が開けるのかも志望校選びの重要なポイントになっています。

同時に、「塾に頼らず学校の教育の中で大学受験まで導いてほしい」という保護者の意識も強まっています。放課後学習や学習サポートなど学校の支援体制を重視し、「6年間安心して子どもを預けられる学校かどうか」が重要な判断材料になっています。

その象徴の一つが、山脇学園のように、サイエンス教育や探究型学習を打ち出す学校の人気です。理系教育や研究活動に力を入れる学校では志願者が増える傾向が見られ、教育内容そのものへの関心が高まっています。

中学受験は単なる試験ではなく、6年間の学びの場を選ぶ機会でもあります。実際に学校見学や文化祭などに足を運び、学校の雰囲気を感じることで「この学校に通いたい」という思いが生まれ、それが学習意欲につながるケースも少なくありません。

2027年以降の受験では、偏差値や入試日程だけで併願計画を立てるのではなく、学校の教育内容や6年間の学び、将来の進路まで見据えて志望校を考えることが、これまで以上に重要になっていくでしょう。

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文・構成/黒澤真紀

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