「言語の敏感期」にいる4歳が書く、“不正解”かつ“満足”な文字。つい正解を伝えたくなるけれど…愛おしく尊い「未完成」。《モンテッソーリ教師の子育てエッセイ》vol.5

子どもとの毎日は、カラフルで鮮やかな瞬間だけでなく、大変なことや葛藤も含めてさまざまな色(感情や体験)に満ちていますよね。時には、喜怒哀楽をうまく言葉にできない気持ちが、脳内をぐるぐるすることも。モンテッソーリ教師・杉浦あきえさんの連載「今日は何色?子どもと紡ぐ彩りデイズ」では、あきえさんご自身の子育て中の脳内をそのままエッセイとしてつづります。

連載5話目は、子どもの「文字」について。

・杉浦あきえ:モンテッソーリ教師


・夫:同じ年で多趣味
・長女:9歳(2016年生まれ)、何かを考えたり言葉にしたりすることが大好き
・次女:4歳(2021年生まれ)、天真爛漫でおしゃべりが止まらない

大人の「できた」と子どもの「できた」は、時に大きく異なることがある

お互いの思っている「できた」の間には、大きな川が流れているくらい。それくらい別のもの。

大人から見たら“未完成の”できた。
でも、子どもからしたら“スーパー最高の”できた。

この「”子どもなり”のできた」は、実は今しかなくて、ほんの、一瞬の姿。「もっと正確にできるようになりたい」という欲求をもっているからこそ、何度も何度も繰り返す中で、大人が思っているような「できた」にあっという間に到達してしまう。

大人と子ども、二人の間にはあんなに大きな川が流れていたのに。

まだ正確には書けていない。でも、本人は大満足の「文字」

4歳の次女が、今はひらがなを書くことに夢中。「言語の敏感期」(※)真っただなかで、言葉というものにとてつもなく強い興味とエネルギーが湧いている。

※敏感期とは、モンテッソーリ教育において、「言語」「運動」「秩序」などの能力などを獲得するためにエネルギーが強く表れる時期のことを指します。

もちろん話すこともそう。食事中も移動中も、寝る寸前までもずーっとしゃべっている。絵本を読むこと(読み聞かせ)も大好き。

その中で加わってきた「書くこと」への興味。

へびのような線をたくさん書いたり、丸をたくさん書いたりする時期を経て、「文字」に興味を示すようになった。

ご飯を食べる前も、食べた後も、お風呂上がりに着替える前にも(先に着替えよう!笑)ずっと書いている。つまりは、隙さえあれば、ずっと文字を書いている。

集中しているときには、くちびるをぎゅっとする。次女の周辺だけ時間がゆっくり流れているかのような空気感の中、鉛筆の先をじっと見ながら、文字を真剣に書いている。

「できたー!」と喜んで見せてくれるその「文字」は、まだ正確には書けていない。でも、本人は「できた」「書けた」と大満足で、キラッキラとした瞳でこちらを見ている。

「〇〇ちゃんが書いたんだ」「これは”まま”って書いてあるの?」と聞くと、「ままじゃない!! “まほ”だよ! お友だちの“まほちゃん”!」。

「ああ、ごめんごめん。てっきり、ままって書いてくれたかと勘違いしちゃった」と笑う頃には、もう目の前にはいない。「ねえ〜パパ!見て」と次の人のところへ向かっている。「へえ!書いたんだ」と承認されると、スキップするように椅子に向かい、また新しいページに何やら真剣に書いている。

大人が見て「完璧」「できている」かではなく、子どもが「できた」と思えるこの気持ち。

だんだんと年齢と共に、周りの評価や他者と比べてどうかが気になっていく

だからこそ、そんな外部の評価には目もくれず、自分の中での「できた」という気持ちを存分に感じてほしい。

いつか必ず、その子のペースで「正確性」を求めて、向上するようになっていく。だからこそ、今しかないこの「未完成」がなんとも愛おしくて、尊い。

見ているとじれったくて、「違うよ」「こうだよ」と正解をさっと伝えたくなる。けれども、子どもの中で静かに静かに積み上げている、この子どもなりの「できた」を子どもと一緒に大切にしたい。

大人の思う「できた」までのプロセスには、いくつもの子どもなりの「できた」がある。

そのプロセスは、時間が経つともう見ることはできない。

だから、「今だけの期間限定」として限定物を味わうかのように、今日も「未完成」のできたに触れられる喜びを噛み締めている。

前回の話はこちら

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プロフィール

杉浦あきえ モンテッソーリ教師

国際モンテッソーリ教師(AMI)

幼稚園教諭、保育士、小学校教諭。二児の母。

 

幼い頃から夢見た保育職に期待が溢れる思いとは裏腹に、現実は「大人主導」の環境で、行事に追われる日々。そのような教育現場に「もっと一人ひとりを尊重し、『個』を大切にする教育が必要なのではないか」とショックと疑問を感じる。その後、自身の出産を機に「日本の教育は本当にこのままでよいのか」というさらなる強い疑問を感じ、退職してモンテッソーリ教育を学び、モンテッソーリ教師となる。「子育てのためにモンテッソーリ教育を学べるオンラインスクール Montessori Parents」創設、オンラインコミュニティ”Park”主宰。著書に『モンテッソーリ教育が教えてくれた「信じる」子育て』(すばる舎)、『モンテッソーリ流 声かけ変換ワークブック』(宝島社)、『子育ての「引き算」』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『子育ての“イラッ”“モヤッ”を手放す本』(小学館)。

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イラスト/カラシソエル

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