繰り返す子どもの「まばたき」「せき払い」が気になる…これって《チック症》? 専門医に聞く受診の目安と家庭での対応

「最近、子どもが何度もまばたきをする」「せき払いが続いているけれど、風邪ではなさそう」。そんな様子が気になったことはありませんか? まばたきやせき払い、鼻すすりなどを繰り返す「チック症」は、幼児期から小学生にかけてよく見られる症状のひとつです。一方で、「病院を受診したほうがいいの?」「ストレスが原因なの?」と不安になる保護者も少なくありません。そこで今回は、NPO法人日本トゥレット協会会長で児童精神科医の金生由紀子先生に、チック症の特徴や受診の目安、家庭での接し方について伺いました。

チック症とは? まばたきやせき払いだけではない様々な症状

――チック症とはどのような症状ですか?

金生先生:チック症というと、「目をパチパチさせる」「目をぎゅっとつぶる」といった症状を思い浮かべる方が多いかもしれません。実際にこうした症状はよく見られますが、実はチック症は大きく分けて「運動チック」と「音声チック」の2種類があります。

運動チックには、まばたき以外でも鼻をひくひく動かしたり、口をゆがめたり、首を振ったり、肩をすくめたりするという症状もあります。

音声チックでは、せき払いや鼻すすり、息を吐く音などを繰り返すケースもあります。チック症の特徴は、突然起こり、素早く繰り返されることです。同じ症状が続くこともあれば、しばらくすると別の症状に変わることもあります。

発症は幼児期から小学生ごろに多く見られます。とくに4~6歳ごろに始まることが多く、決して珍しい症状ではありません。

1年以上、多彩な運動チックおよび1つ以上の音声チックが続いた場合は「トゥレット症」と診断されることもあります。

――風邪や花粉症と似た症状の場合、どのように見分ければよいでしょうか?

金生先生:せき払いや鼻すすりは、風邪や花粉症の症状と見分けがつきにくいことがあります。まず確認したいのは、鼻水や目のかゆみ、発熱など、風邪やアレルギーによる症状があるかどうかです。こうした症状が見られる場合は、風邪や花粉症の可能性が考えられます。ただし、風邪の症状が治まった後もせき払いや鼻すすりだけが続く場合は、チック症が関係していることもあります。

また、チック症のあるお子さんでは、風邪や花粉症をきっかけに症状が目立つようになることもあります。せきや鼻をすする動作が続くことで、その動きがチックとして現れやすくなる場合があるためです。

風邪や花粉症とチック症を完全に見分けるのが難しいこともありますが、「風邪は治ったのに症状だけが続いている」「緊張したときや疲れたときに症状が増える」といった場合は、チック症の可能性も考えられます。

チック症の症状が見られたら? まずはあわてず見守ることが大切

――子どもにチック症の症状が見られたら、まずどのように対応すればよいでしょうか?

金生先生:まずはあわてないことが大切です。チック症は幼児期から小学生ごろに見られることが多く、決して珍しい症状ではありません。そのため、「どうしよう」と過度に心配する必要はありません。

お子さんにチック症のような症状が見られた場合は、どのような場面で症状が出ているのかを少し気にかけてみるとよいでしょう。例えば、運動会や発表会の前、新学期など、いつもとは違うできごとがある時期に症状が目立つこともあります。

緊張や興奮、疲れなどによってチック症の症状が出やすくなることもあるため、十分な睡眠をとり、規則正しい生活を心がけることも大切です。また、お子さんが不安や心配ごとを話している場合は、まずはしっかり耳を傾けてあげてください。「話を聞いてもらえた」「分かってもらえた」という安心感につながります。

大切なのは、チック症そのものだけに目を向けるのではなく、お子さんが安心して過ごせる環境を整えることです。

――保護者がやってしまいがちなNG対応や、家庭でできるサポートについて教えてください。

金生先生:保護者の方は心配なあまり、「やめなさい」「またやっているよ」などと注意したくなることがあるかもしれません。しかし、繰り返し指摘することはあまりおすすめできません。チック症は本人の意思で行っているものではなく、注意されることでかえって症状を意識してしまい、増えてしまうことがあります。

もちろん、チックについて責めないということはどの年齢でも基本ですが、お子さんの年齢が上がり、自分でも症状を気にしている場合には、どのように付き合っていくかを一緒に考えることも大切です。

また、チック症ばかりに目を向けるのではなく、お子さんが好きなことや得意なことにも目を向けながら関わっていくとよいでしょう。症状の有無だけで子どもを見るのではなく、「今日は楽しそうに過ごせたかな」「安心して過ごせているかな」という視点で見守ることも大切です。

病院を受診する目安は? 気になったら小児科へ相談を

――どのような場合に受診を考えたほうがよいでしょうか?

金生先生:受診の目安として大切なのは、お子さんやご家族がどの程度困っているかということです。例えば、症状が軽く、本人も気にしておらず、日常生活に支障がない場合は、しばらく様子を見てもよいでしょう。一方で、症状が強くなってきた場合や、学校生活に影響が出ている場合、本人がつらさを感じている場合には、一度相談してみることをおすすめします。

また、「チック症かどうか分からない」「様子を見ていてよいのか不安」と感じる場合は、受診してみるとよいでしょう。医師から説明を受けることで、保護者の不安が軽くなることもあります。

――受診する場合は何科を受診すればよいですか?

金生先生:受診先としては、まずはかかりつけの小児科に相談するとよいでしょう。必要に応じて、小児神経を専門とする医師や児童精神科医につないでもらえることもあります。

診察を受ける際は、症状が出ている様子をスマートフォンなどで動画撮影しておくと役立ちます。チック症は診察室では症状が見られないことも多いため、自宅での様子が分かる動画は診断の参考になります。

ひきつけの経験や発達障害との関連性は?

――「小さい頃にひきつけを起こしたことが関係しているのかな」「発達障害と関係があるのかな」と、親としてはいろいろと考えてしまうのですが、チック症になりやすい体質や原因はあるのでしょうか。

金生先生:チックは、運動をコントロールする神経の働きが、ある時期に少し不安定になることで起こると考えられています。そのため、神経の発達に広く影響するような要因があると、チックが出やすくなる可能性はあると思います。

だからといって、例えば熱性けいれんなどでひきつけを起こしたことが、そのままチック症のリスクに直結するわけではありません。ただ、神経の発達に関わることなので、まったく関係がないとも言い切れません。実際に診察では、ひきつけの既往があるかどうかや、妊娠・出産時の状況、出生時に何らかのトラブルがなかったかなど、神経発達に影響を与える可能性があるできごとについてお聞きすることがあります。

また、ご家族にチックのある方がいるケースも少なくありません。それを聞いたからといって原因がはっきり分かるわけではありませんが、ご家族にチックや強いこだわり傾向のある方がいないかを確認することもあります。病気がそのまま遺伝するというより、「なりやすい体質」があるかどうかを確認するイメージですね。

――体質的な要素があるということでしょうか。

金生先生:そうですね。広い意味では遺伝的な要因が関与することもあると考えられています。ただし、「この遺伝子があるから必ずチックになる」というような単純な話ではありません。

自閉スペクトラム症なども同様ですが、多くの遺伝子が関係していて、それらが環境要因とどのように組み合わさるかによって現れ方が変わります。そのため、「遺伝で決まる」と考えるのは正確ではありません。いろいろな要因が重なって、神経の働きがチックを起こしやすい状態になることがある、という理解が近いと思います。

また、最新の診断基準であるDSM-5-TRでは、チック症は自閉スペクトラム症やADHDなどと同じ「神経発達症(神経発達障害)」のカテゴリーに含まれています。脳や神経の発達の過程で生じる特性として捉えられているということです。

チック症はずっと続くの? 気になる経過について

――チック症は成長とともに落ち着くのでしょうか?

金生先生:チック症は、幼児期から学童期に発症し、思春期に症状のピークを迎えることが多いとされています。個人差はありますが、多くのお子さんは成長とともに症状が軽くなります。全く症状が見られなくなる方もいれば、多少症状が残っていても気にならない程度になる方もいます。

そのため、「今チック症の症状があるから、この先もずっと続くのではないか」と過度に心配する必要はありません。ただし、症状の経過には個人差があります。症状が強くなったり、学校生活に影響が出たりしている場合は、医療機関に相談しながら見守っていくとよいでしょう。

――わが子のチック症に悩む保護者へメッセージをお願いします。

金生先生:チック症があると、どうしても症状に目が向きがちです。「また出ている」「ひどくなっているのではないか」と心配になることもあるでしょう。しかし、チック症だけを見るのではなく、お子さん全体を見てあげることが大切です。

お子さんには、好きなことや得意なこと、頑張っていることがたくさんあります。チック症があることも含めて、その子らしさを受け止めながら見守ってあげてください。「どうしたらこの子が楽しく過ごせるだろう」「安心して生活できるだろう」という視点で関わることが、お子さんにとって大きな支えになると思います。

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お話を聞いたのは

金生由紀子 NPO法人日本トゥレット協会会長・児童精神科医

東北大学医学部卒業。東大病院精神神経科で研修。同科小児部デイケアで自閉症児の療育関連の活動に参加すると共に、トゥレット症を含めたチック症の診療や研究を行う。Yale Child Study Center留学、北里大学勤務などを経て、東大病院こころの発達診療部で活動。現在は全国療育相談センターなどでチック症を含めたこころの発達に関する診療を担当。児童精神科医。
日本トゥレット協会公式サイトは>>こちら

この記事を書いたのは

やまさきけいこ ライター

美容師として働いた後、子育てをきっかけにWEBライターとして活動をスタート。現在は親子向けWEBメディアを中心に、子育て・教育・ライフスタイル分野の記事を執筆している。親子イベントや商品レビュー、専門家インタビューのほか、映画や配信作品のレビュー記事も手がける。

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