我が子に合うフリースクール、選ぶときは「子どもの目」を見て。 教育ジャーナリストおおたとしまささんが提唱する見極めの視点と「ひとつに絞らない」付き合い方

文部科学省が2025年10月に公表したデータによると、小中学生の不登校児童生徒の人数は過去最多の353,970人。学校に行きたくても行けない子どもたちの学びの場として、フリースクールが注目されています。しかし選択肢が多く、いざわが子に合う場所を探そうとすると、何を基準に選べばいいのか迷ってしまうこともあるでしょう。

そこで『フリースクールという選択』(講談社)の著者である教育ジャーナリストのおおたとしまささんに、フリースクールを検討するときに知っておきたい5つの視点や、フリースクールとの付き合い方について伺いました。

フリースクール選びは「5つの視点」で整理して

――今回、フリースクールをテーマに本を書かれた理由を教えてください。

おおたさん:2022年に出版した『不登校でも学べる』(集英社新書)では、不登校特例校(現在は学びの多様化学校)や通信制高校などを主に取材しましたが、それ以降、フリースクールにもっと足を踏み入れてみたいと考えていました。学校教育法にしばられない学びの場を見ていくことで、逆説的に「学校教育」や「学校」とは何かが見えてくる予感がしていたのです。私たちは「教育=学校教育」のこととして語りがちですが、いったんその外に出て教育を眺めてみたいと思い、フリースクールの取材を始めました。

――たくさんのフリースクールがありますが、どのようなポイントで選ぶのがよいでしょうか。

おおたさん:本の中で「5つの視点」を詳しく紹介しています。実際にフリースクールの説明会に参加したり、見学に行ったりしたときにも、自然にそれぞれの特徴や違いが見えてくるようになるはずです。

居場所↔学び

「居場所」と「学び」のどちらを重視しているかです。要するに、「ここにいてくれるだけでいいよ」と、そーっとしておいてもらえる雰囲気か、「あれをやってみよう!」「これ面白いんじゃない?」と学びを促す刺激が多いかですね。もちろん、居場所の方も学ばなくていいと言っているわけではありませんが、学ぶタイミングや学び方は人それぞれだという考え方が基本になっています。

学校っぽくない↔学校っぽい

学校に傷ついた子どもたちは「学校っぽさ」を嫌う傾向があるため、フリースクールではなく「フリースペース」と呼ぶところもあります。スタッフを「先生」と呼ぶかどうかというところにも、運営者の意識が表れているといえます。

個人商店↔チェーン店

フリースクールには個人や小さなNPOがやっているところもあれば、大手の通信制高校や塾などが母体になっている場合もあります。小規模だと基盤が弱いので保護者の負担もありますが、人任せにせず親も一緒に子どもの学びを作っていける、という前向きな面があると感じます。チェーン店のようなフリースクールは経営的に安定していて、看板に見合った一定のクオリティが期待できる一方で、融通が利かなかったり、マニュアル的だったりすることもあります。

個別↔集団

集団の規模にも違いがあります。オンラインのフリースクールであってもメタバースの空間の中に何十人、何百人と入っている場合もあれば、少人数のグループに区切っている場合もあります。いろんな子がいる大集団の方が楽しい子もいれば、少人数の方が安心できる子もいるので、その子の好みで使い分けるといいと思います。

中継型↔継続型

一般的な学校への復帰をどう位置づけているかです。「元気になったら他の学校やフリースクールに移ってもらってもいいよ」というスタンスの「中継型」のところもあれば、「元気になってもずっとここで学ぼう」という「継続型」のところもあります。オルタナティブスクールのように、自分たちの教育にこだわりを持ってやっているところは後者ですね。

――とてもわかりやすいです。まずはわが子にはどんなタイプが合っているのかを知る必要がありますね。

おおたさん:フリースクールの雰囲気は、メンバーによって変わりますし、子どもの状態によってどんなところが合うのかも変わります。ですから、いくつかのフリースクールを知っておいて、行き来できる体制を作れるといいですね。

フリースクールを選ぶ際、いちばん大事なのは子どもの目を見ることです。子どもは安心できる場所では自然とリラックスして輝くはずなので、親御さんにはその輝きを見逃さないでほしいです。そして、タイミングも大切。いくらよいフリースクールであっても、心の準備ができていない段階で子どもはその場所を受け入れられません。マッチングよりもタイミングの方が重要だということは多くのフリースクールの先生たちが口をそろえています。

――一方で、お子さんがフリースクールに行けない場合もあると思います。

おおたさん:これだけフリースクールが増えても、実際に通えている子はまだ少ないと感じます。ですから、お子さんがフリースクールに行けなかったとしても、親御さんはどうかご自分を責めたり、思い詰めたりしないでくださいね。

オンラインフリースクールの選び方と注意点

――オンラインのフリースクールも増えているようで、気になります。

おおたさん:オンラインのフリースクールは居住地域に関わらず選ぶことができるので初めの一歩になりやすいですが、選択肢が多すぎて困ってしまうこともあると思います。そこでおすすめなのが、AIに比較表を作ってもらうことです。教科学習の量やどんな教材を使っているか、保護者へのサポートや料金など、自分の気になる条件を書き出してAIに指示すれば、すぐにまとめてくれます。

――オンラインフリースクールを選ぶポイントを教えてください。

おおたさん:先ほど「5つの視点」の中でオンラインのフリースクールにも個別か集団かの違いがあるとご紹介しましたが、雰囲気にも違いがあります。たとえば探究学習やクリエイティブなことに取り組むような能動的なスクールはキラキラした雰囲気のため、心のエネルギーが満ちていない子は気後れしてしまうこともあるでしょう。

また、保護者が子どもについて相談できたり、客観的な意見をもらえたりすることも重要で、保護者へのケアやサポートがどれくらい充実しているかという点もチェックするとよいと思います。チャットなどで保護者どうしがつながるシステムを用意しているスクールもあります。

――一方で「不登校ビジネス」への注意も呼びかけていますね。

おおたさん:リアルでもオンラインでも気をつけてほしいのは、わかりやすい成果をぶら下げてくるところです。「3か月で学校に戻れます」「出席認定が取れます」といったうたい文句は要注意。本来フリースクールがまず取り組むべきことは、子どもが自分自身をありのままに受け止められる安心感を取り戻すことだからです。出席認定が取れるかどうかは、本質的には気にしなくてもいいところなんです。

――フリースクール卒業後の進路も気になります。

おおたさん:そうですよね。誰もがうらやむような進学校に行くのは難しいかもしれないですが、その子が自信を持って選べる道は必ずあるはずです。小中学校の勉強が遅れていたとしても、その子にとって必要なものは、短時間でも学ぶことができます。実際に不登校で、中学校ではほぼ受験勉強しなかったという子が、高校生で「医者になる」と本気になって医学部に入った例もあります。医学部はわかりやすい例ではありますが、子どもは本気で「これだ」と思えるものに出合えば、努力できます。遅れはいくらでも取り戻せるんです。

受験勉強の多くは大人になれば忘れてしまうことばかり。「勉強しないと将来困る」というのは、私たち自身がずっと刷り込まれてきた呪いなのかもしれません。生きていくために必要な知識は、毎日学校に行かなくても十分に学べます。

「通学を0か100かで考えなくてもいい」フリースクールの活用法は?

――フリースクールはどのように活用していくのがよいのでしょうか。

おおたさん:おすすめしたいのは、ひとつの場所に絞らず、複数を組み合わせるという考え方です。たとえば週4日はホームスクーリング(家庭での学習)、1日だけ少人数のフリースクールに顔を出す、という方法もあります。フリースクールに限らず、水族館でも古着屋さんでも、本人が好きな場所をきっかけにして世界が広がっていくこともあります。学校に行くか行かないかを0か100かで考える必要はありません。週1〜2回フリースクールでエネルギーをチャージすれば、残りの日は学校に通うことができて、結果的に不登校の定義から外れていく子もいます。どちらかを選ばせる必要はないと思うんです。

――「フリースクール=不登校の子どもが行く場所」というイメージではなくなるかもしれませんね。

おおたさん:不登校でなくても、近くにフリースクールがあるなら見てみるとよいと思います。費用やいろいろな面での制約があり、なかなか難しいのが現実ですが、「今日は学校じゃなくて、フリースクールに行ってくるね!」と子どもが言える社会の方が健全なのではないかと思います。

不安であることは、親であることの証明

――最後に、不安を抱える保護者へメッセージをお願いします。

おおたさん:本の中で、親の不安とは「大切なわが子がいるからこそ、それと引き換えに親の心のなかに埋め込まれた真珠のようなもの」と書きました。傷つくこと、不安になること自体は決して悪いことではなく、学びの機会なのだと思います。

実際、わが子の不登校を受け入れられた親御さんは口をそろえて、「ありのままのわが子を見られるようになった」「学校が絶対だという思い込みから自由になれた」とおっしゃいます。いろいろな生き方があると気づけると、世の中の見え方まで変わってくるんです。そういった視点は人生を豊かにしてくれます。

不安であることは、親であることの証明でしかありません。どうかその不安を嫌なものと決めつけず、「ここから自分は何を学べるんだろう」と捉えてみてください。その傷の意味が見出せたとき、それは真珠のように輝きだすはずです。

ありがとうございました。おおたとしまささんは8月10日のオンラインイベント「“学校に行けない“の先にある学びとは?〜フリースクール・オルタナティブ教育のリアル〜」にも登壇されます。参加無料ですので、気になる方はぜひご参加ください。

2026年8月10日(月)おおたとしまさ氏 × 井本 陽久× 相澤 樹「“学校に行けない“の先にある学びとは?〜フリースクール・オルタナティブ教育のリアル〜」【Zoomライブ配信】

思考力教室いもいもで「デイクラス」も運営する・井本 陽久氏、そしてフリースクール「花まるAll Inclusive School」を立ち上げ、4,000人以上の子どもたちと向き合ってきた相澤 樹が登壇。

詳細はこちら

おおたとしまさ 講談社 1,320円(税込)

多様化するフリースクール。「わが子に合うスクール」の見つけ方と安心のヒント。雰囲気、出席認定、その後の進路などを徹底ルポ。

お話を聞いたのは

おおたとしまさ 教育ジャーナリスト

教育ジャーナリスト。リクルートでの雑誌編集を経て独立。数々の育児誌・教育誌の企画・編集に係わる。現在は教育に関する現場取材および執筆活動を精力的に行っており、緻密な取材、斬新な考察、明晰な筆致に定評がある。テレビ・ラジオなどへの出演や講演も多数。中高教員免許をもち、小学校教員や心理カウンセラーとしての経験もある。著書は『勇者たちの中学受験』『中学へ旅立つ君へ』など90冊以上。

この記事を書いたのは

平丸真梨子 ライター

音楽大学卒業後、出版社勤務を経て、現在はフリーライター・編集者として活動中。小学生2人の母。主に教育系、不登校への取り組み、著名人インタビューなどを執筆しています。子育ての中で感じた疑問や発見を活かしながら記事を作成することを心がけています。

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