「そんな暇があったら勉強しなさい!」は禁物。発達心理学の専門家に聞く、「子どもの好奇心の伸ばし方」と「親のNG行動」

「好奇心旺盛な子に育ってほしい」と願う親は多いもの。でも、そもそも好奇心とはどんな気持ちで、いつから芽生えるのでしょうか。子どもが夢中になっているとき、親はどこまで手を貸し、どこで見守ればいいのでしょうか。
発達心理学が専門の十文字学園女子大学・大宮明子教授に、好奇心の正体から育て方、親がやってはいけないNG行動まで伺いました。

赤ちゃんにも好奇心の芽は備わっている! 好奇心旺盛な子の強みとは?

ーーそもそも好奇心とは、どんな気持ちのことをいうのでしょうか?

大宮先生:何かに対して「知りたい」「見たい」と思う気持ちのことを好奇心といいます。これは人間に限らず動物にも共通するもので、生まれたときから身の回りのものに対して自然と芽生えるものです。ですから、「うちの子は好奇心がない」ということは基本的にありません。

ーー最近よく聞く「知的好奇心」は、生まれ持った好奇心とは違うものですか?

大宮先生:単に「知りたい」「見たい」というワクワクする気持ちだけではなく、「なぜこうなっているんだろう」「どういう仕組みなんだろう」と、その先を追求し、深掘りしたくなる状態を「知的好奇心」と呼びます。赤ちゃんが何かをじーっと見ていることってありますよね。じっと見る、手に取ろうとする、手を伸ばすといった行動が自分から出てきたときは、好奇心の入り口だと考えてよいでしょう。

どんなに小さい子でも、その子なりの知的好奇心はあるんです。ただ、言葉や理屈を使って自分で掘り下げる作業をするのは、もう少し年齢が上がってからになるということです。

ーー好奇心が旺盛な子は、どんなふうに成長していくのでしょうか?

大宮先生:好奇心は誰かに強制されるものではなく、本人の中から自然に湧き出てくる主体的な活動です。好奇心が強い子ほど、知りたい気持ちやワクワク感が持続するため、結果的に集中力や持続力が身に付きます。さらに知的好奇心へと発展すれば、自分で調べたり、周りの大人に質問したりと、探究心を伴う活動が増えていきます。

子どもの好奇心を親の目で選別するのはNG! 子どもの興味を伸ばす親の関わりとは?

ーー子どもの好奇心に対して、親はどのように見守り、サポートするのがよいでしょうか?

大宮先生:大人はどうしても「学校の勉強に結びつくか」「将来役立つかどうか」という効率で考えがちですが、子どもの好奇心の向け方に無駄はありません。非倫理的なものへの執着は別ですが、それ以外であれば親が子どもの好きなことを選別するのはNGです。たとえ大人から見て意味がなさそうに感じることでも、突き詰めていけば将来につながる学びに発展する可能性も秘めているんです。

ここで念頭に置いていただきたいのが、「親が先回りせず、子どものペースを尊重する」ことです。たとえば、子どもが昆虫に興味を持ち始めたからといって、高価な図鑑シリーズを一気に与えるようなことをすると、子どもの気持ちが逆に冷めてしまうということもよくあります。関連する本や動画などを小出しにしながら様子を見るのが大切で、最初は親も一緒に見てみることをおすすめします。

そうすることで、「昆虫の中でも、特にこういう種類が好きなんだな」というように、具体的にどんなものに惹かれているのかが見えてきて、より的確なサポートができるようになるでしょう。

ーーどのような声かけをするのがよいでしょうか?

大宮先生:もし親が興味のない話題だったとしても、「そうなんだ、よく調べたね」「どこで知ったの?」と、きちんと受け止めて評価してあげることが大切です。大好きな親御さんにそう言ってもらえると、子どもは自分の興味を認めてもらえたと感じ、もっと深く知りたいという意欲につながります。

赤ちゃんや小さな子どもの好奇心に対しても、「これが好きなの?」などと、わーっと声をかけるのではなく、少し見守ってあげるほうがよいでしょう。

ーー興味の対象がころころ変わる子の場合に気をつけることはありますか?

大宮先生:ご自宅の環境を見ていただくとよいと思います。「刺激は多い方がいい」と考えて、部屋にたくさんのものを置きすぎると、かえって目移りの原因になります。数は少なくても、子どもが選んだものにじっくり取り組める環境のほうが、集中力も育ちます。

また、知的レベルが上がったり、幼稚園や学校での体験が増えたりするにつれて、興味の対象が移っていくのは自然なことです。一度離れたものに、また別のきっかけで戻ってくることもあるので、長い目で見守ってあげてください。

ーー子どもの年齢が上がり、一緒に図鑑を見るような関わりが難しくなってきた時期にはどう接すればいいですか?

大宮先生:年齢が上がっても、親とのやりとりの大切さは変わりません。自分で調べる力がついてくるからこそ、調べたことを親に伝える機会をつくることが好奇心を伸ばす上で重要になります。相手から、「それってどういうこと?」などと質問されることで、自分では気づかなかった視点に出合えるからです。

「こんな本を読んでみたら面白かったよ」「こういうのを見てみるといいかもね」と提案したり、「ママ(パパ)は知らないから調べておいてくれる?」と頼ってみたりするのも効果的です。一緒にドキュメンタリー番組などを見ながら、ディスカッションするのもいいですね。子どもが得意げに教えてくれる関係をつくることが、次の探究心にもつながります。

子どもの頃に何かに夢中になって取り組んだ経験が、その後の学びにつながる

ーー好きなことに夢中になりすぎて、勉強がおろそかになったときはどうすればいいですか?

大宮先生:小学生になると、成績と活動が結びつくかどうかが気になってしまうものですが、「そんなことをしている暇があったら勉強しなさい!」などという言葉は禁物です。好きなことに夢中になって工夫を重ねる経験自体が、記憶の仕方や集中力、試行錯誤する力を育てています。

実際、医師の国家試験や司法試験のような難関資格に合格したり、東大や京大のような難関大学に進学したりした人を調べると、小学校入学前に昆虫や鉄道、スポーツなど何かに夢中になって取り組んだ経験を持つ人が多いというデータもあります。「もっと知りたい」「もっとうまくなりたい」という自発的な気持ちから始まっているからこそ、うまくいかなくてもあきらめずに試行錯誤を続けられ、その粘り強さが、後の学びにも生きてくるのだといいます。

生活に支障が出る場合は、やりたい気持ちは認めたうえで、「朝早く起きてやってみる」など、生活の中に組み込む工夫をするとよいでしょう。

ーーゲームやアニメが大好きな子の場合は、どう対応すればよいか悩みます。

大宮先生:テレビやスマホは画面との距離が近くなりがちで、視力低下や姿勢の偏り、運動不足による体力低下や肥満のリスクなど、健康面の問題が大きくなります。1回あたりの視聴時間を決めるなど、年齢に応じて制限することが必要です。

ただ、アニメには素晴らしい作品もたくさんありますよね。子どもだけに見せたままにするのではなく、できるだけ親も一緒に見るのがよいと思います。ストーリーについて「あれ、ちょっとかわいそうだったね」「こういうことって、学校でもある?」などと声をかけたり、感想をシェアしたりすることで、親子の会話のきっかけにもなります。

AI時代だからこそ、直接体験できる機会を大切に

ーーAIや動画で何でも調べられる時代だからこそ、気をつけたいことはありますか?

大宮先生:特に幼児期は、直接体験することがとても大切です。動画では視覚や聴覚は満足できても、匂いや味、質感などは体験できません。また、動画や生成AIは誰かの視点で切り取られた情報である点にも注意が必要です。動画は撮影する人の視点で切り取られていますし、生成AIも過去のデータから「こう答えれば喜ばれるはず」という確率論で作られたものです。

一方、子どもが自分の目や耳を使って対象と向き合うときは、大人が思いもよらない部分に注目したり、突拍子もない発想をしたりします。このような体験こそが、AIには代替できない部分です。ですから、実際に見たり、触れたりする経験を大切にしてみてください。もちろん、直接体験できないものに関しては動画やAIを積極的に活用してもよいでしょう。

ーーありがとうございました。好奇心の芽はどんな小さな子どもにもある大切な探究心の入り口だとわかりました。子どもが興味を持ったものを親の目で選別せず、見守りながら一緒に楽しんでいこうと思いました。

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お話を聞いたのは

大宮明子 十文字学園女子大学教育人文学部幼児教育学科 教授 博士(人文科学)

発達心理学・認知心理学が専門。幼児期の論理的思考、オンラインコミュニケーション、非認知能力の発達等について研究。幼児通信教育講座のアドバイザーも務める。

この記事を書いたのは

平丸真梨子 ライター

音楽大学卒業後、出版社勤務を経て、現在はフリーライター・編集者として活動中。小学生2人の母。主に教育系、不登校への取り組み、著名人インタビューなどを執筆しています。子育ての中で感じた疑問や発見を活かしながら記事を作成することを心がけています。

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