「ネットいじめ」「性的ディープフェイク」…小中学生のネットトラブル、被害者にも加害者にもならないために親ができること【ITジャーナリスト・高橋暁子さんに聞く】

オンラインゲームでの出会いやネットいじめ、性的ディープフェイクなど、子どものネットトラブルは小学生にまで広がっています。被害に遭わない、加害者にならないために家庭でできることはあるのでしょうか。今小中学生の間で起きていることから、家庭でのスマホのルール作りや、子どもへの伝え方まで、ITジャーナリストの高橋暁子さんに伺いました。

小学生のネットトラブルが急増中! オンラインゲームがきっかけになることも

――現在、10代のネットトラブルはどんなものが多いのでしょうか?

高橋さん:10代で多いのがネットで知り合った人と会って被害に遭うというトラブルですね。特に今、被害が増えているのが中学生です。ちょうどスマホデビューする子が多いのが中1なので、楽しくて夢中になってしまい、トラブルになりやすいんです。

それだけでなく小学生の被害も右肩上がりで増えていて、過去10年で最多になっています。性被害や誘拐など重大な犯罪に巻き込まれているのも特徴で、警察庁が注意喚起しています。

――小学生でも、ネットで知らない人とつながっているのでしょうか?

高橋さん:そうなんです。小学生でも「ネットだけでつながっている友達がいる」という子が少なくありません。スマホをまだ持っていないお子さんでも、家にある古いスマホ、学校から貸与されているタブレットでSNSやLINEのオープンチャットにアクセスしたり、オンラインゲームなどで遊んだりしているうちに、いつのまにか知らない人とつながっているということがあります。

――オンラインゲームもきっかけになっているのですね。

高橋さん:オンラインのゲーム内で「フレンド」になると、多くの場合、個別にメッセージをやり取りしたり、相手がいつオンラインかを確認したり、プロフィールの一部を見たりできるようになります。

小学生に人気のあるRoblox(ロブロックス)やフォートナイトのようなゲームでは通信対戦でチームプレイをしますが、ボイスチャットやテキストチャットができるので、そこで面識のない人と「フレンド」になるケースがあります。

知らない人からの「フレンド申請」をいきなり承認することはあまりないと思いますが、協力プレイがうまくいって「楽しかったからまた一緒にプレイしよう。フレンド登録よろしく」と言われたら、「まあいいか」と思ってしまいがちです。

ですが、ゲーム内のボイスチャットで少し話しただけでは相手がどんな人かはわかりません。大人が混じっていることもあれば、悪意のある人が年齢や性別を偽っていることもあります。ボイスチャットでは女性の声だったのに実際は男性だった、というケースもあるんです。

「仲間外れにする」「DMのやり取りを第三者に公開」……ネットいじめの実態とは

――「ネットいじめ」のようなこともよくあると聞き、親としても不安です。

高橋さん:特に小学生ではLINEなどを通してコミュニケーショントラブルが起こりやすいです。文字だけでのやり取りには文章力と読解力が必要なので、お互いにそれらが未熟だと誤解が生まれます。

対面なら言葉足らずでも表情から悪意がなさそうだとわかりますし、その場で「それ、どういうこと?」と聞き返してコミュニケーションが成り立ちますが、文字上だと一方的になりやすく、なかなかそれができません。

「相手は嫌かもしれない」ということに想像が及ばず、誰かを仲間外れにしたり、個人情報やDMのやり取りを別の人に公開してしまったりするというケースもあります。中学生くらいになるとクラスメートの写真を面白おかしく加工してスタンプにしたり、送り合ったりしているというトラブルもあると聞きますね。

――「ネットいじめ」でわが子が被害を受けている、あるいは加害していると気づくためにできることはあるのでしょうか?

高橋さん:普段から親子での会話の機会を増やすことが大切です。当然、子どもは言いづらいことは隠したがります。でも、何気ない会話の中で「最近こんなことがあった」「LINEでもめている」などのネガティブな内容が言葉の端々に出てくることは多いものです。

他にも「学校に行きたがらない」「遅刻や欠席が増える」「食欲が減る」「スマホをあまり見なくなる」といったお子さんの変化にも注意が必要です。

安易な気持ちで「性的ディープフェイク」の加害者に。家庭で伝えておきたいこと

――AIや画像の加工などが手軽にできるようになり、性的ディープフェイク(生成AIや画像加工アプリを悪用し、写真や動画を無断で性的な姿に生成するデジタル性暴力)の問題も広がっていますね。

高橋さん:性的ディープフェイクの加害者の多くが被害者と同じ学校の生徒だといわれています。AIを使うと誰でも簡単に、ほぼ無料で写真を加工できてしまうので、中高生でも安易な気持ちでやってしまうんです。ですが、実在する児童生徒の写真を使って作った場合は、名誉毀損罪や児童ポルノ禁止法違反になることもある犯罪行為です。

あとは、「自画撮り被害」というものもあります。彼氏や友達に自分の性的な画像を送り、そこから周りに拡散されてしまうというケースも少なくありません。

ですが一つ知っておいていただきたいのは、自分のヌードであっても撮影、送信することは法律違反になるということです。児童ポルノ禁止法において未成年の性的な画像の撮影は「製造」、送ったり、SNSで公開したりすることは「提供」にあたるんです。もちろん、誰かにだまされたり脅されたりして、性的な画像や動画を送らされた場合は、被害者となりますので警察に相談してください。

――安易な気持ちで行った画像のやり取りであっても犯罪となるということは、子どもに伝えておきたいですね。

高橋さん:そうですね。実際に中高生が宿泊行事やプールのときに同級生を盗撮して補導・逮捕されている事件もあります。子どもと近い年齢の子が事件化したニュースを親子で共有できるといいですね。そうすると「気をつけよう」「加害者になるのはやめよう」と思えますし、「自分も被害者になりうるんだな」と自覚させることにもつながります。

――性的ディープフェイクの被害を防ぐためにできることはありますか? また被害に遭った場合、どこに相談すればよいのでしょうか。

高橋さん:勝手に加工されてしまうわけなので、被害を完全に防ぐことは難しいといえますが、「画像の公開範囲を友達限定にする」「知らない人と簡単につながらない」ということは基本です。

そして、お子さんに伝えていただきたいのは、「被害に遭った場合、すぐ削除に対応してもらえる」ということです。児童生徒の性的な画像は、世界的に最優先で削除対象になるので対応が早いです。「なるべく早く言ってくれれば、変なところに掲載されたり保存されたりする前に何とかできるよ」とお子さんに伝えておくことで被害が広がるのを防ぐことができます。

画像の削除は、SNS事業者に依頼してもよいですし、セーファーインターネット協会や、違法・有害情報相談センターといった窓口もあります。東京都が運営する子どものインターネットやスマホに関するトラブル・悩みの相談窓口「こたエール」(都内在住・在学者向け)に連絡しても、「それならこうしましょう」としっかり教えてくれます。

児童ポルノにあたる場合は、警察の相談窓口(警察相談専用電話「#9110」)に連絡してもよいです。なるべく早く相談窓口や事業者に相談して対処することが大事で、加害者がわかっている場合は加害者の情報、投稿されたサイトのURLやスクリーンショットが証拠となるのでとっておいてください。

盗撮のように投稿者がわからない場合も、「確かに自分の写真であり、これは権利侵害である」ということが証明できれば、削除してもらえる可能性が高まります。ただ、サービスによって対処にかかる時間が少々異なるので、削除依頼をしてくれる窓口に早めに相談してください。

「ネットトラブルや犯罪のニュースは親子で共有」スマホのルールは随時アップデートを!

――お話を伺って、子どもに初めてスマホを持たせるときのルール作りが重要だと感じました。

高橋さん:お子さんが納得した上で、同意のもとにルールを決めるのがよいと思います。まずは「利用の上限時間」や「朝は何時から、夜は何時まで」という利用時間ですね。たとえばLINEのプロフィールに「LINEは○時〜○時」と書いておくと、夜遅くまでLINEの返信に追われるということを防げます。

投稿内容については「個人情報や顔写真、悪口はやめよう」「知らない人とはやり取りしない、会わない」というのが基本です。そして何より大事なのが、「困ったときにはすぐに相談する」ということです。早い相談が問題解決には大事だからです。

――フィルタリングをしておけば安心、というわけではないのですね。

高橋さん:フィルタリングは義務化されていますが、フィルタリングでできるのは、違法サイトや有害サイトをはじくこと、年齢に合わないアプリをはじくことなので、そのアプリの中で何が起きるかは、フィルタリングでは基本的に防げません。

ですが、アプリごとのペアレンタルコントロール機能や「ティーンアカウント」など、いろいろ用意されている機能もあります。これは若者が多く使っているTikTokやInstagram、YouTube、一部のゲーム(Robloxやフォートナイトなど)にもあります。正しい年齢で登録して、それらをうまく活用することでも効果があります。

――最後に、お子さんのスマホの使い方に悩む親御さんへのメッセージをお願いします。

高橋さん:いろいろ気をつけなくてはいけないと思われるかもしれませんが、実はスマホやSNSにまつわるトラブルになるポイントはどの家庭でもほとんど同じで、それぞれに有効な対策があるんです。「あらかじめ約束を決めて、その約束を守りやすい制限設定にすること」「なぜそうしたほうがいいのかを子どもにも納得してもらうこと」によって最大限の効果が得られるのではないかと思います。

そして反面教師となるニュースは本当にたくさんあるので、同じ年ごろの子や、子どもが使っているアプリでの被害、トラブル、事件を親子でシェアするのも効果的だと思います。こうしたニュースを一つひとつシェアしていくと、「じゃあ気をつけよう」と子どもだけでなく、親のリテラシーアップもできますし、子ども自身も「ここを気をつけるね」という新たな約束もできると思います。

ネットやスマホから子どもを守るための仕組みも次々とアップデートされています。たとえば、最近はショート動画を見続けてしまうことが問題になっていますが、YouTubeショートはペアレンタルコントロール機能で非表示にできるようになり、利用時間の上限を決めてアラートを出すこともできます。こうした新しい情報をしっかり得ておくことは、親御さん自身の安心のためにも、お子さんのためにもなります。

ルールは随時アップデートしていくことも大切です。「このルール、厳しい」「困ってる」となったら相談してもらう。怒らずに話を聞いて、「なるほど、それならしょうがないね。じゃあ変えていこう」「塾の時間が遅かったもんね、もう少し遅くまでOKにしよう」と変えていく。そうすることで、子どもが「お父さんお母さんは自分の話を聞いてくれるし、味方してくれる。心配しているだけなんだ」と思ってくれれば、基本的にはうまくいくのではないかと思います。

――ありがとうございました。スマホをめぐるトラブルは心配なものですが、子どもが納得した上でのルール作りや普段の親子での会話が何よりも大切だということがわかりました。高橋さんのXや執筆記事などでもネットにまつわるニュースや情報を知ることができますので、ぜひチェックしてみてください。

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お話を聞いたのは

高橋暁子 成蹊大学特別客員教授/ITジャーナリスト

ITジャーナリスト、成蹊大学特別客員教授。東京都で小学校教諭、Webの編集者 などを経て独立。SNSや情報リテラシー教育が専門。スマホやインターネット関連の事件やトラブル、ICT教育事情に詳しい。『若者はLINEに「。」をつけない 大人のためのSNS講義』(講談社+α新書)、『スマホで受験に失敗する子どもたち』(星海社新書)など、書籍は単著・監修を含め30冊以上。全国の小中高校大学、自治体、団体、企業などを対象に毎年 50回ほどの講演・セミナーを行っている。

この記事を書いたのは

平丸真梨子 ライター

音楽大学卒業後、出版社勤務を経て、現在はフリーライター・編集者として活動中。小学生2人の母。主に教育系、不登校への取り組み、著名人インタビューなどを執筆しています。子育ての中で感じた疑問や発見を活かしながら記事を作成することを心がけています。

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