妊娠がわかり、母子手帳を受け取った日のことをよい思い出として覚えているママもいるでしょう。しかし、その後、母子手帳を紛失するケースもあるようです。母子手帳を紛失した場合のリスクや再発行の方法を、母子手帳の重要性とともに紹介します。
母子手帳が必要な場面
母子手帳の正式名称は「母子健康手帳」です。妊娠が確定すると医療機関や医師から自治体の担当窓口で受け取るよう促されます。母子手帳が必要になる主なシーンを見ていきましょう。
健診などの助成を受けるとき
妊婦健診は自費での受診が基本です。しかし、金銭的な負担が大きいため、妊婦健診を助成する「妊婦健診受診票」が母子手帳とともに交付されます。健診の際に母子手帳と妊婦健診受診票をセットで提出し、健診記録を残すのが母子手帳最大のメリットであり、役割であるともいえます。
また、赤ちゃんの生後1カ月健診受診票も母子手帳や妊婦健診受診票とセットになっていることがほとんどです。母子手帳を受け取ることで、妊娠中から生後間もない赤ちゃんに必要な助成を受けられる仕組みになっています。
緊急時に医療機関へ提出
妊婦や産後間もない女性、乳幼児は、体調が急変することも少なくありません。母子手帳には妊娠中・出産時のママの状況、胎児や赤ちゃんの生まれた直後からの健康状態・予防接種の記録などが細かく記されています。
こうした記録は医療機関で治療を行う際の重要な情報になるため、医療を受ける際に提出を求められることがよくあります。
妊娠中や赤ちゃんが小さいうちは外出中に母子手帳を持ち歩くよう、医師や自治体の保健師から促されることも珍しくありません。母子手帳は、緊急時に医療機関や関係者に必要な情報を共有するための大切なツールです。妊婦や乳幼児のママは母子手帳の携帯を心がけましょう。
小学生・中学生の予防接種の記録に
一般的に必須とされている定期予防接種の中には、小学生・中学生になってから追加接種が必要な種類もあります。子どもが一生を通して厄介なウイルスに感染しないよう、忘れず接種しておきたいものです。
母子手帳があれば乳幼児期のようにたくさんの予防接種をする時期はもちろん、小学生以降の追加接種も管理できます。また、毎シーズンの接種が奨励されているインフルエンザワクチンや、海外渡航前に接種が望ましいとされるB型・A型肝炎の予防接種歴を確認するときにも母子手帳が役に立ちます。
さらに、多くの予防接種ワクチンには病名とは異なるワクチン名が付けられているため、どのワクチンが何の病気を予防するものか忘れることもあるでしょう。
こうしたケースでも医療機関に母子手帳を確認してもらえば、即座に予防接種歴がわかります。
子どもが成人しても使える?
成人後、家族から自分の母子手帳を譲り受けた人もいるでしょう。自分が母親の胎内にいた頃の妊娠経過記録や母親本人が書き記したメモなどを目にして感動した人もいるようです。
母子手帳は家族の記録としてだけでなく、大人になってからも必要になることがあります。例えば、旅行などで海外に行く場合、国によってはビザの申請に予防接種記録や病歴の申告が必要です。
国内でも麻疹・風疹が大流行し、ワクチン未接種の世代に抗体検査と予防接種が推奨された過去もあります。こうした場合に母子手帳があれば正確な記録をすぐに確認できます。また、高校や大学などに入学する際、予防接種の記録を確認するために母子手帳の持参を求められるケースもあるようです。
母子手帳を紛失したときのリスクとは
母子手帳は成人後も記録として手元に残しておくのが理想です。しかし、なかには引っ越しなどで紛失してしまう人もいます。もし、母子手帳を紛失するとどのようなリスクがあるのでしょうか?
個人情報の流出
母子手帳には、ママの体重や身長、胎内の赤ちゃんの状態など、とてもプライベートな情報が記載されています。ほかにも、緊急連絡先や住居・勤務先の情報などを記す欄があり、どれも重要な個人情報のため流出や悪用が心配です。
特に、妊娠中や乳幼児の育児中、ママは心身ともにデリケートな状態です。こうした時期に紛失のリスクを抱えないためにも、母子手帳の扱いには注意を払いましょう。
成長記録が消える
妊娠が確定した頃から記載が始まる母子手帳には、胎内からの赤ちゃんの成長が記録されています。自治体の中にはママの心情やメモを残す欄がある母子手帳もあり、細かく記録しているママもいるでしょう。
予防接種歴も赤ちゃんの成長記録の一つですよね。母子手帳を紛失すれば、こうした記録の一切を失うことになります。思い入れや思い出も失ったような喪失感を覚える人もいるようです。
健診などが自己負担になる
母子手帳と妊婦健診票を同じケースで保管する人は多くいます。妊婦健診票は原則として再発行ができないため、母子手帳ケースごと紛失したら、その後の妊婦健診は全額自費で診療を受ける必要があるのです。
また、自治体によって交付方法や時期にばらつきがあるものの、赤ちゃんの1カ月健診票が付帯されている母子手帳もあります。母子手帳を紛失すると、赤ちゃんの1カ月健診まで自費で受ける可能性が高いため、母子手帳と健診票の取り扱いには気を付けましょう。
母子手帳の再発行方法
母子手帳を紛失した場合、母子手帳の再発行を申請できます。特に、妊婦にとっては母子手帳は出産までの重要なツールです。速やかに再発行の手続きを行いましょう。
どこで、どのように母子手帳の再発行を受けられるのか紹介します。
再発行できる場所
再発行は母子手帳を受け取った自治体の窓口で申請するのが基本です。しかし、まず電話で役所に確認しましょう。
母子手帳紛失後に引っ越した場合なども、紛失した母子手帳を受け取った自治体に問い合わせるのがおすすめです。指示に従って再発行の申請をしましょう。
再発行時に用意するもの
母子手帳の再発行には、住所が記載された身分証明書や印鑑などが必要です。ほかにも再発行申請書などが必要な自治体もありますが、自治体のホームページや窓口で入手できます。必要な持ち物についても電話での確認が確実でしょう。
一般的には、母子手帳の再発行は料金がかからないことがほとんどです。心配な人は事前の問い合わせで金銭的な負担についても聞いておくとよいでしょう。
母子手帳を再発行した後にやることは?
母子手帳を再発行できても、すっきりした気持ちにはなれないかもしれません。複雑な心境を整理するためにできることはないのでしょうか。母子手帳を再発行した後にやっておきたいことをご紹介します。
記録を再記入してもらう
もし可能であれば、妊婦健診や出産、子どもの健診を行った医療機関に記録を再記入してもらうのがおすすめです。まずは、医療機関に問い合わせをしましょう。
保険診療であれば医療機関は診療完結の日から3年間(カルテは5年間)診療情報を保管する義務があります。しかし、健診や予防接種は保険外診療となるため、記録を保存していない医療機関も存在するようです。
さらに記録は残っていても再記入するのにお金がかかる医療機関もあるでしょう。再記入は可能か、いくらくらいかかるのかを明確にして、今後に必要な情報だけでも再記入してもらいましょう。
また、定期予防接種や子どもの定期健診の記録は、住んでいる地域の保健所で情報管理されています。保健所に再発行した母子手帳を持参すれば、記録をもらえたり記入してもらえたりする可能性が高いので、問い合わせしてみましょう。
再発行後に見つかったら?
母子手帳を再発行後に元の母子手帳が見つかるケースもあるようです。その場合は、自治体の担当窓口に相談し、どちらを使ったらよいか確認しましょう。もしくは「出生届出済証明」に記載、証明印がある方を選ぶのもよいですね。
2冊の母子手帳を比べたとき、同じ項目なのに情報量に差がある場合は、自分で書き写してもよいものか自治体に相談しましょう。1冊の母子手帳にまとめる際には書き間違いが起こらないよう細心の注意が必要です。
母子手帳の紛失には気を付けよう
母子手帳には、ママと赤ちゃんにとって大切な情報が記載されています。妊娠中・育児中に幾度となく必要となるため、肌身離さず持ち歩いているママもいるでしょう。
母子手帳は、落としたら気付けるようにケースに入れたり、鈴などを付けたりして紛失に気を付けたいですね。また、「全ての健診票を持ち歩かない」「健診で得た情報は手帳に書き写す」など、紛失のリスクに備えた行動も大切です。
構成・文/HugKum編集部