小池栄子と大泉洋がW主演!抱腹絶倒のコメディ映画到着
昨年、没後70年となった昭和の文豪・太宰治。小栗旬主演で、太宰スキャンダラスな恋と人生を描いた『人間失格 太宰治と3人の女たち』も記憶に新しいところですが、今回ご紹介する映画は、太宰の未完の遺作をモチーフにした爆笑喜劇『グッドバイ~嘘からはじまる人生喜劇~』です。
本作のベースとなったのは、鬼才ケラリーノ・サンドロヴィッチが、太宰の遺作を独自の視点で完成させた戯曲「グッドバイ」。第23回読売演劇大賞最優秀作品賞に輝いたこの舞台を、『八日目の蟬』で日本アカデミー賞最優秀監督賞に輝いた成島出監督が、小池栄子と大泉洋をW主演に迎えて、抱腹絶倒のコメディに仕上げています。
時代は、戦後の混乱期から復興へと向かう昭和。文芸雑誌の編集長である田島周二(大泉洋)は、女にとことんだらしなく、何人もの愛人を抱えていました。さすがにこのままではマズイと反省した田島ですが、優柔不断で気弱な彼は、なかなか愛人たちに別れを切り出すことができません。困った田島は、金に目がない担ぎ屋・キヌ子(小池栄子)に、女房役を演じてもらい、愛人と縁を切ろうとします。
小池栄子と大泉洋の凸凹ニセ夫婦のやりとりに大爆笑
舞台版ではすでに当たり役として高い評価を受けていた、小池栄子のキヌ子役。奇妙なカラス声で、最初はガサツで小汚いのですが、きちんと化粧をして着飾れば、かなりの美人です。一方、大泉洋が演じるのは、ふしだらなダメ男なのに、なぜか女性にモテモテ。現実にいればノーサンキューな浮気男も、大泉さんが演じると、愛すべきチャーミングなトホホ男となります。
成島出監督が今回目指したのは、テンポ良くて思い切り笑えるスクリューボール・コメディだそう。2人は、三谷幸喜の舞台「子供の事情」でも共演していますが、今回もコメディが十八番である小池さんと大泉さんによる丁々発止のやりとりでが最高です。
なかでも、キヌ子を無理やり押し倒そうとした田島が、キヌ子にベランダから勢いよく投げ飛ばされてしまうシーンなんて、ドリフみたいにベタな展開で思わず爆笑。芸達者な2人ならではの化学反応がなんとも愉快です。
妻は愛人より強し!? 愛想を尽かされた夫はどうなる?
田島とキヌ子の嘘夫婦が別れを告げに行く愛人役にも、名役者が揃いました。クールな女医・大櫛加代役に水川あさみ、挿絵画家の水原ケイ子役に橋本愛、儚げな花屋の青木保子役に緒川たまきと、それぞれが相手にとって不足はなしという女優陣が参戦。
このぐしゃぐしゃな男女関係に、さらに拍車をかけるのが、田島の妻、静江(木村多江)の存在です。なんと静江に、愛人たちの存在がバレてしまったから、さあ大変。妻から「もう娘には会わせない」という三行半をつきつけられ、ショックを受ける田島。果たして、田島やキヌ子の運命はいかに!?
いわゆる痴情のもつれを描くドタバタ喜劇ですが、実力派俳優陣のアンサンブルが絶妙なので、ドキドキハラハラしながらも、小笑いや大笑いのツボがたくさんあって、中だるみゼロです。しかも皆川猿時、田中要次、池谷のぶえ、犬山イヌコ、水澤紳吾、戸田恵子と、笑いを振りまく伏兵も控えているので、最後まで楽しめます。
そして、観終わったあとで得られるのは、やはり人を好きになるのって素敵なことだな、というシンプルな多幸感です。太宰自身も恋に生きたモテ男だったからこそ、恋のスッタモンダもかなりリアル。そんな大人の喜劇を、ぜひママたちに堪能していただきたいです。
監督:成島出 原作:ケラリーノ・サンドロヴィッチ(太宰治「グッド・バイ」より)
出演:大泉洋、小池栄子、水川あさみ、橋本愛、緒川たまき、木村多江、松重豊…ほか
公式HP: http://good-bye-movie.jp/
文/山崎伸子