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十三夜という、十五夜以外のお月見の日を知っていますか?
日本には、秋になるとお月見を楽しむ風習があります。そして、お月見といえば十五夜がよく知られていますが、十三夜にもお月見を行うことをご存じですか?
そもそも十三夜とはどんな日で、どのような意味や由来があるのか、また、十五夜と十三夜にどんな違いがあるのでしょうか。ここからは、十三夜にスポットをあてて、詳しくご紹介していきます。
2024年の十三夜はいつ?
まず最初に、2024年の十三夜がいつなのか見てみましょう。
2024年10月15日(火)は十三夜
十三夜とは、新月を1日とする旧暦の「毎月13日」を指します。しかし、旧暦の9月は農作物の収穫に感謝をする季節であり、空気が澄みわたり、月が出る位置も人間から見てもっとも美しく見えるポジションになるため、一般的に十三夜というと「旧暦の9月13日の夜」を指します。
十三夜の日付を現在の暦で数えると、毎年日付が異なります。2024年以降の十三夜の日付は次の通りで、だいたい10月か11月にあたります。
2024年 10月15日
2025年 11月2日
2026年 10月22日
2027年 10月12日
十三夜の意味と由来
そもそも十三夜には、どんな意味や由来があるのでしょうか?
十五夜とはどんな意味のある日?
十三夜の意味を説明するのに、まず十五夜がどんな日なのかをご紹介しましょう。十五夜は「旧暦で毎月15日の日の夜」を指します。
現在使われている暦は太陽の動きを基準にしていますが、旧暦は月の満ち欠けをもとにした暦です。新月になる日を毎月1日として、やがてその月が15日に満月を迎え、また次の新月になると、翌月1日として数えていました。旧暦では、十五夜に月が満月を迎える頃になるのです。
そして、秋の真っただ中である旧暦の8月は、月がちょうどいい高さに位置している季節で、空気も澄んでおり、月がより一層美しく見える時期でもあります。また、収穫への感謝や、豊作を祈るお祭りを行う意味もあり、旧暦の8月15日の十五夜を特別に祝うようになったのです。
これと同じように、旧暦の9月13日にもお月見をするようになったのが十三夜です。
日本独特の由来がある
十五夜にお月見を楽しむ習慣は、中国から平安時代頃に伝わったと言われています。当時は貴族たちが月を眺めながら、お酒を飲んだりして楽しんでいたそうです。やがて江戸時代になると、お月見が庶民にも広く知れ渡るようになり、現代にもその風習が残っているのです。
一方で、十三夜の習慣については日本独自で発展したものと考えられています。秋の収穫祭として根付いたという説や、後醍醐天皇や宇多天皇が十三夜に月見を行ったとも言われており、その起源には諸説あるようです。
十三夜と十五夜の違い
十三夜と十五夜は、どちらもお月見を楽しむ日ですが、何か違いはあるのでしょうか。
十三夜は「小麦の名月」、十五夜は「芋名月」と呼ばれる
十五夜は「中秋の名月」とも言われますが、「芋名月」または「芋の名月」という呼び名もあります。その理由は、里芋などの芋類を主食にしていた時代、ちょうど収穫された新芋を十五夜にお供えしたり、里芋の丸い形がお月見団子や満月に似ていたから、とも言われています。
一方、十三夜は「小麦の名月」と呼ばれることがあります。これは、長野県安曇郡などの小麦を作物として育てている地域では、十三夜に小麦の豊作を祈願していたことから、このような別名が生まれたのではないかという説があるようです。
その他、十三夜には、栗や豆をお供えしたことから「栗名月」や「豆名月」という呼び名もあります。また、十五夜の後に出る月なので「後の月」と言われたり、福岡県の海岸部では「女の名月」とも呼ばれ、女性が威張ってもいい日とされているそうです。
十三夜に曇りなし
旧暦の8月15日にあたる十五夜は、ちょうど台風シーズンにあたることもあり、雨になったり、夜空がすっきりしない日が多いでしょう。それに比べて、約1ヶ月後の旧暦の9月13日にあたる十三夜は、秋が深まっていく時期でもあり、空気が乾燥してきて天気がいい日が多くなってきます。そのため、十五夜よりも月が美しく見える日が多いことから、「十三夜に曇りなし」と言われています。
ちなみに、十五夜には満月に近い月を眺めることができますが、十三夜はまだ満月になる少し前。月がまだ完全に丸くなっていない状態です。
十三夜はこんなところにも登場している
秋の夜にお供え物をして月を眺める。そんな習慣はとても風流で美しく、さまざまな歌や小説にも取り上げられています。
季語
秋を表す季語には「秋分」「葉月」「栗」「新米」などがありますが、「十三夜」も秋に使われる季語です。秋の夜空に浮かぶ月には不思議な魅力があふれるのでしょうか、十三夜という季語を使った俳句や歌が数多く詠まれています。
また、俳句の世界において、月は秋を表します。十三夜はもちろん、十五夜や満月、新月、三日月、十六夜なども秋の季語とされています。
夏井いつきの「月」の歳時記 見て感じて愉しむ秋の季語
秋の季語「月」をモチーフに、美しい写真と名句で展開する歳時記シリーズ第4巻。俳人でエッセイストの夏井いつき先生の心に響いた作品を、有名句や一般の投句から厳選しています。月は秋の季語の女王といわれ、月そのものをはじめ初月、弓張月、待宵、雨月など美しい響きのものから幻月、月の兎、月夜烏などファンタジックなものなど、俳句心を誘う豊かな関連季語を多数掲載しました。あなただけのとっておきの秋の一句が詠める、季語「月」のすべてを解き明かす内容になっています。
歌の歌詞
十三夜が歌に登場するのは、現代でもあります。たとえば、さだまさしが作詞作曲を手がけた「十三夜」というタイトルのバラードを鈴木雅之が2012年にリリース。また谷村新司や小笠原美都子などのシンガーも「十三夜」という歌を出しています。
十三夜(鈴木雅之)
2012年10月3日にリリースされた鈴木雅之の37枚目のシングル「十三夜」。シンガーソングライターのさだまさしが書き下ろしたバラードで、カップリングには、さだまさしが1980年2月25日にリリースしたシングル曲「道化師のソネット」のカバーが収録されている。
小説
また、小説に十三夜も取り上げられています。有名なのは、樋口一葉の短編小説「十三夜」。
貧しい家に育った主人公の娘は結婚して子どもも生まれたのですが、夫によるひどい仕打ちをうけ、子どもに別れを告げて離縁することを決意。ある十三夜、実家に戻ってきました。話を聞いた両親は悲しむものの、残された子どものためを思い、娘は運命と思ってあきらめて夫のもとに戻ることを決めたのです。そして帰り道に使った人力車の車夫が偶然、昔想いを寄せていた男性でした。身の上話をしたあと、2人は想い合うまま、月の下で別れを告げた……というストーリーです。
大つごもり・十三夜 (岩波文庫 緑 25-2)
明治文学を代表する小説家、歌人である樋口一葉の短篇小説。初出は「文藝俱楽部」臨時増刊「閨秀小説」(1895(明治28)年)。
十三夜のお月見の風習
十三夜は満月になるすこし前の月で、まだ完全な丸い月にはなっていない状態です。そんな十三夜の月にお供え物をして、お月見を楽しむ風習があります。
片見月は縁起が悪い?
十五夜にお月見を楽しみ、十三夜にも同様にお月見を行うのが昔からの習慣です。十五夜と十三夜のどちらかにしかお月見をしないことを、「片見月」または「方月見」と呼び、縁起が悪いとも言われています。十五夜にお月見をするのであれば、ぜひ十三夜にも月を愛でる時間を設けてみてください。
ちなみに、旧暦の10月10日の夜を「十日夜(とおかんや)」と呼び、この日にもお月見をする地域もあるそうです。十五夜と十三夜、十日夜の3日間ともお月見を行うと、「三月見」といって縁起がいいと考えられていたようです。
団子は13個並べる
お月見に欠かせないお供え物に、月見団子があります。満月のように真ん丸の形をした団子を用意して飾りますが、十五夜では15個、十三夜では13個の団子を並べるのが一般的です。
また、十三夜の団子の並べ方は、1段目に9個の団子を正方形になるように並べたあと、その上に4個の団子を重ねます。もしくは、13個の団子ではなく3個の団子で代用してもOKです。
栗や豆も供える
お月見の定番のお供え物とも言える、月見団子やススキのほかに、栗や豆などの農作物をお供えすることもあります。旬を迎える野菜や果物などを用意してもいいでしょう。現代では、栗や豆を使った和菓子などが季節のお菓子として販売されているので、それらを準備してお供えするのもいいですね。
二十三夜とは?
月にまつわる呼び方で覚えておきたい言葉に、「二十三夜」もあります。これは旧暦の23日の夜のことで、下弦の月となります。昔は、特定の月齢の日に仲間たちが集まって、食事を楽しみながら月が出てくるのを待つ「月待ち(つきまち)」と呼ばれる行事が行われていました。この月待ちを行う日に二十三夜があり、「二十三夜待ち」と呼ぶそうです。
十三夜のお月見を忘れずに
現代では、改まってきちんとお月見をすることはあまりないかもしれません。しかし、旬の食材を使った料理や、お月見にちなんだ料理などを用意するのは、季節を感じられるものです。今年の十三夜は、秋の恵みたっぷりのメニューとともに、夜空を眺めながら過ごしてみてはいかがでしょうか。
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文・構成/HugKum編集部