モンテッソーリ教育とは、今大注目の藤井聡太棋士が幼少期に学んでいたとされることで、ここ数年関連書籍も多く出版され、注目を浴びている教育法。でも、実際にはどんな内容なのか分からないという人も多いですよね。今回は、そんなモンテッソーリ教育の基本やおうちでできる取り入れ方、教具についてもご紹介します。
目次
モンテッソーリ教育とは?
最近話題に上がることの多いモンテッソーリ教育。最新の教育法というわけではなく、その歴史は長いもの。ママ・パパ自身がモンテッソーリで育ったという人も少なからずいるのでは。これからの子どもの育児に活かしていけるのか興味津々の人も多いですよね。
マリア・モンテッソーリ博士が考案した教育法
モンテッソーリ教育とは、女医として障害児にも携わっていたマリア・モンテッソーリ博士が考案した教育法のこと。Googleの創業者やAmazonの創業者、オバマ元大統領なども学んでいたと言われていて、欧米では3割の子どもたちがモンテッソーリに親しんでいます。
モンテッソーリの基本は、「子どもは、生まれながらにして自分を育てる力が備わっている」という「自己教育力」という考えを基とした教育法です。
そして、子どもは0~6歳の乳幼児期に、何かに強く興味を持ち、集中して同じことを繰り返す時期があり、これを “敏感期”と呼びます。
敏感期にぴったり合った環境が整えられた子どもは、驚くほど集中し繰り返し活動し満足げに活動を終え、「達成感や満足感」 を感じながら学んでいくことができます。
その結果、「心を満たしながら能力を高め、自分の能力を他人の役に立てようという社会性や思いやりを持った自律した人間を育てる」ことにつながり、それこそがモンテッソーリが支持される理由なのです。
HugKumではママ・パパにモンテッソーリ教育の認知度についてアンケート調査しました。
Q.モンテッソーリ教育を知っていますか?
ママ・パパにモンテッソーリ教育を知っているかアンケートを取ったところ、約20%の人がすでに始めている、興味があると回答。知っているという人も含めると3割にもなるので、幼児教育として着実に浸透してきているようですね。
モンテッソーリ教育の取り入れ方
モンテッソーリ教育の特徴は、子どもの自発的活動をサポートすること。子どもが何かを「やりたがっている」のは能力獲得のチャンス!欲求を満たせるような環境さえあれば、その中で、子どもはさまざまな能力を獲得していきます。そのため、保護者は子どもの生活環境を整えることを通して、子どもの発達・自立をサポートをすることができる存在、とされています。自宅で取り入れる場合には、「教具」と呼ばれる子どもの活動道具を厳選することでもサポートすることができるので、教具を使った家庭での取り入れ方をまとめました。
取り入れ方① 選択の機会を設ける
子どもが興味を持ち、自ら選べる環境を用意しましょう。子どもが興味を持つのは「敏感期」の発達に即し、自らの心身を成長させてくれると感じられるものです。たくさんの情報の中から自分に必要なものを探し出すのが難しいのは、子どもの活動も同じこと。おもちゃ棚や活動道具を収納する場所は、物を少なく分かりやすく整理した上で、子どもが迷わず自分で選べるようにすることが大切です。
取り入れ方② 活動の仕方をゆっくり見せる
子どもは環境の中にあるもの全てを、見て・聞いて・感じて・学び、真似することで能力を持っていきます。そのため、子どもが興味を持ちやすいようにまずは大人が活動を実践してみましょう。その際、見やすいように動作をゆっくりとスローモーションで見せていくことが大切です。さらに目で動きを追うこと、耳で説明を聞くことの両方を行うのは、実は至難のワザ。言葉は添えず、動きをいくつかの工程に分けながら伝えていくといいでしょう。
取り入れ方③ 挑戦し始めたら見守る
子どもが自分で活動を選び、取り組み始めたら満足するまで見守りましょう。ついつい、先回りして遊び方を教えてあげたり、間違っていたりすると正解を示したくなるもの。でも、それは子どもの探究心や、自分で気づき発見する機会を奪うことになり、せっかくのやる気を削いでしまうことも。子どもから「教えて」のサインが出るまでは、じっと待ってあげることが大切です。
また、予告なしに途中で切り上げることはせずに、「終わり方」も事前に見せて伝えることも大切です。
モンテッソーリ教具の選び方
モンテッソーリの教具は、成長や発達のタイミングに合わせて用意をしていくことがポイント。また、自分の体を動かして楽しむだけではなく、その先に目的を持たせることで子どもの好奇心や社会性を育み、さらなる意欲へとつなげることができます。
発達に合わせて選ぶ
モンテッソーリ教育の領域は「日常生活の練習」「感覚教育」「言語教育」「数教育」「文化教育」の5分野に分けられます。それぞれの発達段階にあらわれる「敏感期」に沿った教育環境が用意されているのがポイントです。「敏感期」とは、自分の成長に必要なことに対して敏感になっている時期のこと。子ども自身が周りの環境のなかから成長に必要なことを選び出して、熱心に取り組みながらそれらを獲得する時期のことを言います。
0~3歳向けの選び方
0歳から3歳までは、「無意識的吸収期」と呼ばれ、胎児だった赤ちゃんが人間社会に「適応」していくための能力を獲得していく時期です。そのため、「運動の敏感期」を通して身体的な運動能力を獲得することはもちろん、「言語の敏感期」によって話し言語を習得したり、「秩序の敏感期」から生活習慣、文化的な慣例など、ありとあらゆるものを無意識のうちに吸収していきます。ですから、子どもが生活習慣を身につけるための助けとなるものを用意していきましょう。
例えば、手・指を使った「微細運動」は、握る、落とす、たたくなどの動きの教具を通して獲得できます。同時に「目と手の協応動作」も身につけます。自分の体を思うように動かせるようになることは、自分で身の回りのことをできるようにするので重要です。さらに、教具で遊びながら大人が言葉がけをすることで、子どもは言葉を身につけていきます。物の名称を知ること、言葉で表現する手段を得ることで、子どもは自らの語彙力を増やし、生活へと適応する力を高めていきます。
3~6歳向けの選び方
3歳から6歳までは、「意識の芽生え」の時期。3歳までに吸収したことを、意識的に整理、分類、秩序化していく時期と考えられています。さらに「数の敏感期」の訪れを通して数を数えたり計算を通して論理的思考力を育むことも楽しみます。
教具は、動きがより洗練され複雑化した物と発展していきましょう。具体的には、単一的な作業ではなく、複数の工程がある活動を楽しめるようになります。これまではただ「触る」「知る」を楽しんでいましたが、「道具を使って作業をする」など目的を持って活動することを楽しめるようになります。
小学生以上の選び方
小学生以上になれば、体や指先を動かすことだけではなく知的好奇心も高まり「知りたい」「学びたい」という欲求も強くなります。子どもの興味を広げられるようなアイテムを教具として用意していきましょう。
0~3歳向け|モンテッソーリ教具のおすすめ
知識・経験が少ないこの時期の子どもは、自分が生活する世界のことをよく知ることが必要です。生活に必要なものを子どものサイズにして用意すること、また具体物に触れて知識を増やしていくことがオススメです。
シュライヒのフィギュア
知識・経験が少ない子どもは具体物を使って体を動かしながら「知る」ことで理解しやすく記憶に残ります。実物を見て、触って五感を通して体験することが理想ですが、全て実物を手にすることはできないのでフィギュアを使って知識を深めていきましょう!「野生動物」「水鳥」などカテゴリーセットで揃えることで仲間を知ったり見比べたりすることもできます。
太鼓などの楽器
太鼓を叩く時に使う腕の動き、バチを握る手の動きは腕や手のみならず体を大きく動かし体幹から鍛えられる粗大運動です。身体の発達はもちろん、叩くと音が出る反応を通し知性を育み、リズムを感じる心地よさから感性を磨くことへと繋がります。
3~6歳向け|モンテッソーリ教具のおすすめ
3歳までの間に体験したことを整理づけ、知性を育む時期です。感覚的な体験だけではなく、体験を言葉と結びつけ知識に変えることや、目的を持った活動へと導くことで、より意欲を高めて積極的に活動することができるようになります。
パズル
巧緻性の高まりに合わせて高度なパズルに挑戦することで集中力やピースを見極める観察力が養われます。また、どんな図案のパズルを選ぶかも注目していきたいポイントです。パズルを通して知識が増えることは好奇心や興味の幅が広がるきっかけに。幾何や美術的な感性を磨くこともいいでしょう。
・幾何パズル
かたちあそびとマグネットあそびの両方楽しめます。あそびを通して、具体的な「かたち」、 「図形」の把握を促し、また複雑なかたちが多くのかたちの組み合わせでできていることを実感することができます。
・人体パズル
頭、腕、上半身、下半身、足と5つに分けられたパーツは、それぞれ取りはずすことが可能です。パズルのように組み立てることができ、人体への興味を刺激します
カルタ
文字への興味が高まる時期、ただ文字を読み書きするだけではなく、カルタを通して楽しく知識を増やしていきましょう!ゲームを通して社会性を養うこともできます。「だじゃれ」は同じ言葉で違う意味を持つ言葉を知ることができ、語彙の拡充にも繋がります。イラストがわかりやすいので3歳頃から。
小学生向け|モンテッソーリ教具のおすすめ
小学生になる頃には、知的好奇心が高まってきます。図鑑や本を用意し、自ら学び深められる環境をつくりましょう。博物館や自然の中へ出かけて“社会の中から学んでいく”活動も大切です。
図鑑
知りたいと思った時に、知識を得ることができるのは図鑑!写真を通して説明がされるので分かりやすく、実体験への意欲もかき立てられます。
・なんでもいっぱい大図鑑 ピクチャーペディア
スミソニアン協会完全監修の世界9カ国で刊行されている百科図鑑。宇宙、科学から自然、文化、スポーツ、歴史など158ものテーマを10000点のカラー写真で付きで解説!こどもからおとなまで楽しめるスーパー大図鑑です。
・小学館こども大百科
約4000点の豊富な写真とイラストを駆使し、好奇心に訴えながらわかりやすく解説しています。各テーマをさまざまな視点で掘り下げるので、基礎知識だけでなく、新しい見方、考え方が身に付く!「なぜ?」「なに?」という、こどもの素朴な疑問に応える最新情報満載の学習ビジュアル百科です。
・大図解 (キッズペディア こども大百科)
身の回りの道具や機械、話題の乗り物や建物などの内部の仕組みを精密な透視図や分解図、一部を切り取った形でのイラストなどを使ってわかりやすく図解。関連項目の表示や博物館・資料館などの情報や関連書籍の紹介などもあり、より発展的に学べる仕組みが満載の、理数系に強くなる工夫が満載の大百科です!
・ふしぎの図鑑 (小学館の子ども図鑑プレNEO)
小学生に実際リサーチして集めた「なぜ?」「なんで?」の素朴な疑問に答えます!【いきもの】【しぜん】【からだ】【たべもの】【せいかつ】のふしぎをわかりやすくQ&Aで図説しています。
アート
ステッドラー 色鉛筆 36色 油性色鉛筆 ノリスクラブ
小学生になると観察力や巧緻性が高まり、表現豊かに絵を描くことを楽しみます。カラーバリエーションが豊富な色鉛筆はマストアイテム!描くことがより楽しくなる手頃な教具です。
モンテッソーリ教具が購入できるショップのおすすめ
モンテッソーリの教具は「遊ぶ」ためのおもちゃだけではなく、生活に必要なものを子どもに使いやすくすることも重要です。家庭でそんな教具を取り入れるにはどのようなものが必要なのか、プロの目線でセレクトされている信頼できるショップをご紹介します。
コソダチショップ
「おうちではじめるモンテッソーリ教育」をテーマに国際モンテッソーリ資格保有者がセレクトした商品やオリジナル商品が販売されています。日常生活の教具のみならず、家庭で取り入れられる感覚教具や数教具の販売もあり、使用方法などのポイントも学べます。
つばめの家
https://www.tubamenoieonline.com
「全てのはじまりはお家から」そして「おうちたのしい♪」を大切にしたモンテッソーリ教室「つばめの家」で考えられた商品が販売されています。親子の生活に沿った教具は生活における自立力を高め、考える力・感じる力を高めてくれるものがたくさん!ハンドメイドのぬくもりも感じられるショップです。
無料でダウンロードできる教具
子どもの育ちをサポートする教具は、家にあるもので手作りすることもできます。モンテッソーリ園でも手作りすることが多く、そんな教具・教材を無料で配布しているサービスもあります。ぜひチェックしてみてくださいね。
■言語・文化教育
https://montessoridigital.org/classified-cards-all
国際モンテッソーリ協会が公開している質の高い教材です。
「絵カード」といい、物の名称を覚える言語教育や文化教育の教具として使用します。月の形や葉の形の名称を覚えることは、記憶したい知的欲求を満たしながら興味の世界を広げるきっかけになります。他言語対応しているので、英語学習の教材としても使用できますね。
■日常生活・言語・文化教育
https://bambi-no.net/column/downloadprint/
上野毛モンテッソーリこどものいえ「バンビーノ」でも使用されている実際の教具を家庭用にデータ配布しています。日常生活の練習で多く取り入れられる指先を使った活動はハサミや色ぬり、など家庭で気軽に取り入れられるものが多いです。ただ、塗って遊ぶだけではなく「季節を感じる」「文字を知る」など目的を持った活動へと繋がっていく仕組みがある点が、モンテッソーリ教具ならではの特徴です。
記事監修
いしづか かな
モンテッソーリ教師の資格を持つ母として子育てをスタート。 食の大切さと、親子で過ごす楽しい時間に重きを置いた日々の中で、たどり着いたのが「親子料理」という過ごし方。 二人の子どもたちと一緒に作ったごはんやおやつは6年間で1500品以上。 重ね煮・発酵食・養生食をベースとした体にやさしい料理を身につけられる親子料理教室「kids kitchen atelierデキタヨ!」を主宰。 湘南を拠点に親子料理教室運営のほか、大人向けの講座・執筆・レシピ開発・監修事業・出張講座など「親子の食にまつわる環境整備」を軸に活動中。
文・構成/HugKum編集部