目次
小学生も注意したい熱中症
気温が上がってくると心配なのが熱中症です。
小学生はまだ体が未発達なうえ、自分で熱中症を注意したり、予防したりすることが難しいため、まわりの大人は子どもが熱中症にならないよう、注意することが不可欠です。小学生の熱中症の症状や原因、対処法などを見てきましょう。
小学生の熱中症の症状
真夏でなくても起こる熱中症。まず、熱中症の症状を解説します。熱中症になるとどのような症状が出るのかを知り、熱中症が疑われるときはすぐに涼しい場所に移動する、水分補給をするなどの対処ができるようにしておきましょう。
子どもの場合、熱中症を発症していたとしても、自分の感じている症状を周りの大人や医師にうまく伝えることができません。お子さんが夏場に「なんだかだるい」と訴えていたり、ぐったりしている場合には、積極的に熱中症を疑うことが大切です。これは小児の熱中症の注意点といえます。
めまい・たちくらみ
乗り物に酔ったような感じがしたり、ふらふらとして立っていられないようなときは、体内に熱がこもることで脳への血流が不十分になっている状態で、熱失神とも呼ばれる熱中症の初期症状のひとつです。
顔から血の気が引き、一時的に目が見えにくくなったりすることもあります。突然倒れる可能性があるので、転倒して頭をぶつけないよう注意が必要です。
手足のしびれ・筋肉痛
手足のしびれ、こむら返り、手足の筋肉がぴくぴくするといった症状は、大量に汗をかいたときなど、体内の塩分が不足状態になったことによって引き起こされるもので、熱痙攣(ねつけいれん)と呼ばれる熱中症の初期症状のひとつです。
全身に痙攣が起こるわけではなく、手足などに部分的に起こることが特徴です。ひどくなると全身のこむら返りが起こることもあります。そのときは、自分で移動することが難しいため、すぐに医療機関の受診が必要と考えられます。
吐き気・頭痛・倦怠感
熱中症が進むと、体がだるくなったり、吐き気や頭痛の症状が出ることがあります。これらの症状は、熱疲労とも呼ばれる熱中症の中等症にあたり、場合によっては病院での診察が必要になります。
いつもと様子が違うと感じたり、意識が朦朧としているようならすぐに医療機関を受診するようにしてください。
小学生の熱中症の原因
子どもは暑い中でも元気いっぱいというイメージがありますが、実は熱中症や脱水を起こしやすく、大人よりも暑さに弱いのです。
ここでは小学生の熱中症の原因について解説します。
体温調節機能が未発達
人は汗をかくことで、体の熱を外に逃がします。ですが、子どもの汗腺は未発達で、発汗によって体の熱をうまく外に逃がすことができません。子どもが頭に大量の汗をかくのをよく見ますが、これは頭部の汗腺が機能しているためで、胴体や他の部位の汗腺はまだまだ未熟です。
そのため、子どもの体は発汗だけでは足りない放熱を補うために、頭や胴体の皮膚の血流量を増やすことで、熱を体の外へ逃がそうとします。暑いときに子どもの顔が真っ赤になっているのは、体が頑張って熱を外に出そうとしているためです。
しかしこの方法が有効なのは体温が気温よりも高い場合のみで、気温が体温よりも高いときは、逆にまわりの熱を体内に取り入れることになってしまいます。子どもの体は大人よりも外気温の影響を受けやすく、大人と同じように水分補給をしていたとしても、十分な熱中症予防ができていない可能性があります。
地面の熱の影響を受けやすい
夏は地面に近づくほど気温が高くなります。子どもは大人よりも身長が低くて地面に近いため、輻射熱や日光の照り返しの影響を受けやすく、大人が感じている暑さよりも2~3度ほど高い気温の中に身をおいている可能性があります。
子どもの顔の位置までしゃがんでみて、どれくらいの暑さを感じているのかを実際に体験してみてください。
体の不調をうまく伝えられない
子どもは自分の体調をまだ上手に把握することができません。また、たとえ不調を感じていたとしても、それを言葉にしてまわりの人に伝えることができないことの方が多いでしょう。遊んでいるときは、夢中になって自分の体調不良に気づかないこともあります。
小学生の熱中症が起こりやすい状況
熱中症を発症しやすいのはどのような場面でしょうか。リスクの高い状況を知り、熱中症を防げるようにしましょう。小学生の熱中症が起こりやすい状況を解説します。
炎天下での活動
7月~8月にかけて、最高気温が高くなった日は熱中症の患者数が増加します。特に炎天下は直射日光や地面からの照り返しの影響を受けやすいこともあり、熱中症を起こしやすい状況になります。
長時間の活動は避け、強い日差しになるべくあたらないようにしてください。学校の登下校時にも注意が必要です。
高温多湿の場所での活動
室内であっても油断はできません。室温がそこまで高くなかったとしても、湿度が高い場所では汗が蒸発しにくくなるため、熱中症になる可能性があります。冷房施設がない、風通しの良くない建物の中での長時間の活動は避けてください。
窓から差し込む日差しにも注意が必要です。また、車の中もエアコンを切った後は車内の温度が急上昇するので、短時間でも子どもを車内に残したままにすることは危険ですから、絶対にやめましょう。
急に暑くなる時期
梅雨の合間や梅雨明けの時期など、まだ暑さに慣れていない時期に急に気温が上がると体が対応できず、熱中症が起こりやすくなります。
暑くなり始めの時期はまだ発汗がうまくできず、体温調節が難しいためです。暑い日を過ごすことで徐々に体も慣れていきます。
夏場のマスク
これまで屋外ではマスク着用は原則不要、屋内では原則着用としていました。しかし令和5年3月13日以降、マスクの着用は個人の主体的な選択を尊重し、個人の判断が基本となりました。
マスクを着けると皮膚からの熱が逃げにくく、体温調整がしづらくなり、気付かぬうちに脱水症状を起こしやすくなります。子どもがマスクを着用している場合には、保護者や周りの大人が子どもの体調に十分注意するとともに、子どもや保護者の意図に反してマスクの着用を実質的に無理強いしないようにする必要があります。特に夏場については、熱中症予防の観点から注意しなくてはなりません。
学校での死亡事例も
考えたくないことですが、学校での死亡事例もあります。
遠足中に体調が悪化した小学6年生の男の子は、救急搬送されたものの翌日亡くなりました。また、校外学習に出かけた小学1年生の男の子が亡くなるという事故もありました。さらに体育の授業中に小学5年生の男の子が倒れて亡くなった際には、夏場のマスクの着用が原因ではという報道もありました。
子どもの命を守るためには、まずまわりの大人が注意を払うことが、なにより大切になります。
小学生が熱中症になってしまったときの対処法
未然に予防することが大切な熱中症ですが、軽度なうちに的確な対処ができれば重症化を防ぐことができます。ここでは熱中症になってしまった場合の対処法を解説します。
涼しい場所へ移動
すぐに涼しい場所へ移し、横にして休ませましょう。できれば冷房の効いた室内へ。ない場合は、木陰など直射日光があたらない風通しの良い場所へ移動させてください。
体を冷やす
マスクをしていたらまず外し、服をゆるめ、保冷剤があれば太い血管のある場所、たとえば、太ももの付け根やわきの下、首筋などを冷やします。体の表面に水や濡れタオルをかけ、うちわなどで風を送ることでも体を冷やすことができます。
水分・塩分補給
大量に汗をかくと、水分と一緒に体内の塩分やミネラルも失われます。そのため水分補給と同時に塩分補給を行うことが大切になります。
手軽に水分と塩分が補給できるスポーツドリンクや、経口補水液を飲むようにするとよいでしょう。
熱が下がらないときは病院へ
熱中症が重症化すると、40度を超える高熱が出ることがあります。通常であれば、体は体内にこもった熱を発汗によって外に出すことができるのですが、体内の水分が少なくなると汗をかくことができなくなり、熱を逃がせず、体温が上昇してしまいます。高熱が出ている時には急いで病院を受診するようにしてください。
特に意識がない、呼びかけに対する反応がおかしい、痙攣をおこしている、真っ直ぐ歩けないなどの症状がある場合は重度の熱中症の可能性があります。意識障害がある場合は、他の症状がなくても救急受診が必要です。
予防が大切! 小学生の熱中症対策
熱中症のリスクは予防を心がけることで減らすことができます。小学生の熱中症対策を紹介します。
飲み物はこまめに
のどが渇いていなくても、定期的に飲み物を飲むようにしましょう。塩分や糖分が含まれている飲み物だと水分の吸収がよりスムーズになります。暑い時期は、いつでもどんな場所でも水分補給ができるように、出かけるときは必ず飲み物を持っていくようにしてください。
特にマスクを着用しているときは、のどが渇いていなくても意識的に水分補給を行うことが大切です。
暑さに応じた服装を
涼しい服装を心がけましょう。吸水性や吸湿性に優れたリネンやコットン、速乾性に優れたポリエステルなどの素材を使った服装がおすすめです。
また、外出する際には帽子や日傘を使って直射日光から身を守りましょう。
しっかり休む
暑さや疲れを感じたら、無理せず、すぐに涼しい場所へ移動して水分補給を行い、休息をとりましょう。また、寝不足で体に疲れが溜まっているときも熱中症を起こしやすくなります。
通気性の良い寝具を使用する、エアコンで室温を調整するなど、蒸し暑い夜でも快適に眠れるような環境を整えておきましょう。
記事監修
川上 洋平
神戸大学医学部卒業。米国ピッツバーグ大学に留学し、膝関節外科、再生医療、スポーツ医学を学び、神戸大学病院、新須磨病院勤務を経て、患者さんにやさしく分かりやすい医療を提供することを目的に、かわかみ整形外科クリニック(神戸市)を開業。日本整形外科学会専門医。
編集部セレクト! 小学生の熱中症対策グッズのおすすめ
熱中症を予防しながら、子どもと一緒に夏を楽しみたいですね。おすすめの熱中症対策グッズをご紹介します。
アイスハーネス キッズ 保冷剤3個付きセット
子どもを熱中症から守る冷却ベストです。背中・両脇の3か所にポケットが付いていて、凍らせた保冷剤を入れることで体温の上昇を防ぎます。元気に遊びまわる子どもの体にフィットする構造なので保冷材の重さを感じさせません。サイズは90~110㎝と120~140㎝の2種類から選ぶことができます。
クールビット・ネッククーラー
水に濡らして絞って振るだけでひんやり優しく首元を冷やしてくれる大判バンダナです。スポーツやアウトドアのお供にはもちろん、毎日の通学時にもぴったりです。効果が薄れてきたらもう一度濡らすことで繰り返し使うことができます。
マジクール 冷却ミスト&ファンクーラー
レバーを押すと微細なミストが噴射され、ファンの気化熱効果で体をクールダウンしてくれます。ハンディサイズで持ち運びにも便利。ファンはソフトスポンジプロペラなのでお子さんにも安心です。単3アルカリ乾電池1本(別売り)で最大約3.5時間使用できます。
熱中症対策は早めに
小学生の子どもは大人よりも体が小さいため、環境の影響を受けやすく、熱中症や脱水を起こしやすくなっています。
遊びに夢中になってしまう子どもには、まわりの大人が様子をこまめに見守ることが何よりも大切です。また子どもには、あまり喉が渇いていなくても定期的に水分を取らせるようにするなど、熱中症対策の大切さを伝えてください。
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文・構成/HugKum編集部