コロナ禍の夏は家庭内に危険が! 夏の事故と健康トラブルから子どもを守るチェックリスト

新型コロナウイルス感染症が流行し始めてから、2度目の夏がやってきました。おうち時間が長くなる夏に、子どもをさまざまな事故や病気から守るにはどうすればよいのでしょうか。小児科の看護師からのアドバイスをお届けします。

ウィズコロナの夏は家庭内の事故に注意

昨年の夏、私が勤務する小児科では、いわゆる「夏風邪」で受診されるケースが大幅に減りました。これには、新型コロナウイルスの感染拡大により、多くの方々が手洗いなどの感染予防対策に気を配るようになったことが影響しているように思います。

一方で増えたのが、ソファーや階段から落ちた、はさみで手を切った、パンを焼いたときにやけどをしたといった、家庭内での不慮の事故で受診されるケースです。おうち時間が長くなり、子どもがこれまでやったことのない活動に取り組むようになると、それに伴って事故のリスクも高くなります。

二度目のウィズコロナの夏を迎えるにあたり、おうちの中で事故につながりかねない危険な場所がないかをもう一度確認しておきましょう。

室内・車内でも要注意! 熱中症予防のポイント

子どもは体温調節機能が未熟であり、脱水になりやすいため、こまめな休憩や水分補給が大切です。顔や体にふれると熱いときや、ぐったりしているときは熱中症のおそれがあるので早めの応急処置を。念のため、水と電解質の補給に適した経口補水液を常備しておくと安心でしょう。

場所別予防策

室内

冷房は室温25~26度を目安に、扇風機で風を循環させると冷房効率がアップ。お昼寝は直射日光を避けて。

車内

数分でも子どもを車内に残すのは危険。チャイルドシート使用時は背中の汗を確認し、着替えや水分補給を。

屋外

炎天下では地面に近いほど高温に。ベビーカーの利用は短時間に留め、顔色や汗の状態をよく確認して。

もしものときの応急処置

涼しい場所に移動して経口補水液(なければ水や麦茶、スポーツドリンクでも可)を飲ませ、首・わきの下・足の付け根を冷たいペットボトルなどで冷やしましょう。衣服を脱がし、霧吹きで体に水をかけるのも効果的。水分がとれないときは病院へ。

おうちの中での事故を防ぐために

つかまり立ちを始め、これまで手の届かなかったところにふれるなど、子どもは昨日までできなかったことが突然できるようになります。事故の多くはおうちの方が目を離した一瞬の隙に起きてしまうものなので、おうちの中にどこか1箇所、「この場所には危険なものがないので、子どもを遊ばせても安全」というスペースをつくっておきましょう。

次に挙げるポイントに注意し、子どもの成長を予測して安全な環境を整えることが、おうちの中での事故予防につながります。

転落・転倒

ベランダや窓からの転落は命にかかわるため、踏み台になるものを置かないことが大切です。子どもが遊ぶスペースにはクッション性の高いマットを敷き、机などの角にはガードを。階段にはベビーゲートを設置しましょう。自転車に乗せる際は、シートベルトとヘルメットの着用を忘れずに。

おぼれる

子どもがおぼれるときは、バタバタ騒ぐことはなく、静かにスッと水中に沈んでいってしまいます。「きっと気づくだろう」は禁物です。おぼれた時間が5分以内でも脳に影響を及ぼすことがあるため、水のある場所では「目の届く場所」ではなく「手の届く場所」にいることを心がけて。ほんの数分でも、子どもを一人にしないことが大切です。

お風呂

おうちの方が髪を洗うときは、子どもを浴槽内に立たせたままにはせず、浴槽の外のスペースに座らせておきましょう。脱衣所で体をふくときも、子どもを浴室内に残しておくことがないように注意を。入浴後は、ため湯はなるべくせずにすぐに栓を抜き、浴室のドアには子どもの手が届かない位置に鍵をつけておくと事故予防に効果的です。

ビニールプール

鼻と口を覆うだけの水がたまっていれば、子どもは水深10㎝程度でもおぼれることがあります。ビニールプールに水を張っているとき、おうちの方が子どもから目を離して家事をしながら数分ごとに様子を見に行くのでは、一瞬の隙におぼれる危険があるため要注意です。水を張り始めたら、子どものそばから離れないようにしましょう。

誤飲・窒息

トイレットペーパーの芯(直径39㎜)を通るものは、誤飲のおそれがあります。ボタン電池と薬は特に危険なので、子どもの手の届かないところに置きましょう。ビー玉なども保管場所に注意を。ミニトマトや巨峰などの球状の食べものはのどに詰まりやすいので、細かく切って与えましょう。

もしものときの応急処置

誤飲の場合は何を飲んだのかが医師に伝わるように、現物があれば持ってすぐに受診を。窒息の場合は左の方法で吐き出させ、意識がなければ119番通報をして心肺蘇生をします。万が一に備え、応急処置の方法の動画を見ておくとよいでしょう。

【背部叩打法】

1歳以上なら、子どもの頭を下げて胸の下を大人の膝で支え、てのひらの付け根で両側の肩甲骨の間を4~5回を1セットとして強くたたきます。乳児の場合はうつぶせにして、おなかの側から腕を通して下あごを指で支え、同様に肩甲骨の間をたたきます。

【腹部突き上げ法】(1歳以上)

1歳以上が対象となる方法で、背後から両腕を回し、みぞおちの下をこぶしで斜め上に向かってグッと突き上げることをくり返します。乳児の場合はあおむけにして片手で体と後頭部を支え、中指と薬指で胸の真ん中を圧迫する、胸部突き上げ法を行います。

体調をくずしたときのホームケア

発熱時にはこまめな水分補給を行い、暑がっている場合には薄着にしましょう。 高熱でも、食事・睡眠・排泄・遊びが普段通りにできていれば基本的には心配ありません。全身状態をよく観察し、水分がとれないときや、ぐったりしているときは早めの受診を。熱の経過を記録しておくと診察の際に役立ちます。

熱の経過を「熱型表」に折れ線グラフで記入し、気づいた症状などもメモして受診時に持参すると、医師が症状を知る手がかりに。

のどを痛がるときは

食事はゼリーやプリン、うどん、そうめん、茶わん蒸し、バナナの裏ごしなど、薄味でのどごしがよいものを少しずつ与えます。すっぱいもの(柑橘系の果物やオレンジジュースなど)、からいものは、のどに刺激となるため控えましょう。食欲がないときも、こまめな水分補給は忘れずに。

おう吐・下痢のときは

水分と塩分を補う必要があるので、経口補水液を少しずつこまめに与えます。一度に大量に飲ませると、再び吐いたり、下痢をしたりすることもあるので注意が必要です。何度も吐くときは、吐き気がおさまった段階で小さじ1杯程度から与え、少しずつ量を増やしていきましょう。

皮膚トラブルで困ったときは

発疹などの皮膚トラブルは、体の内側の病気が原因で起こることもあります。子どもの皮膚の症状が気になるときは、まずはかかりつけの小児科に相談を。毎日のスキンケアでは、夏でも保湿は必要です。保湿剤は、夏はさらっとしたローションやスプレータイプ、冬はクリームタイプのものなどを使い分けるとよいでしょう。

発疹は時間がたつと消えてしまうことも。スマートフォンなどで写真を撮影しておき、医師に見せると症状が伝わりやすくなります。

あせもが気になるときは

汗をかいたら、ぬれタオルでこまめにふきましょう。関節はよく伸ばしてからふくと、汗がたまりやすい内側も清潔に保てます。汗を多くかいたときはシャワーを浴びるのもおすすめですが、必要な皮脂まで洗い流してしまうことがないように、ボディーソープで洗うのは1日1回までに。

虫に刺されたときは

軽症なら市販のかゆみ止めを塗ったり、冷やしてかゆみをやわらげたりするのでかまいません。真っ赤に腫れてしまった場合は、小児科を受診するとステロイド軟膏が処方されることも。かきむしると傷口が化膿して、とびひになることもあるので、普段から爪は短く切っておきましょう。

「いつもと違う」と感じたらためらわずに受診を

小児科クリニックで働いていると、いつも子どもを見ているおうちの方の直感は、本当によく当たると感じます。「何かおかしい」「なんとなく元気がない」「異様に機嫌が悪い」「いつもの熱とは違う感じがする」といった、おうちの方の「いつもと違う」という感覚はとても重要な情報です。そう感じたときはためらわずに受診し、感じたままを医師に伝えてください。

ウィズコロナの状況下でも、子どもの場合はほかの病気を見落とさないようにすることが大切なので、気になることがあれば遠慮なくかかりつけ医に相談してくださいね。

 

記事監修

竜美ヶ丘小児科 小児救急看護認定看護師
野村さちい先生

代表を務める「つながる ひろがる 子どもの救急」では子どもの病気を学べる講座を開催。2人の娘の母でもある。

『ベビーブック』2021年7・8月号別冊 イラスト/高村あゆみ 文/安永美穂 構成/童夢

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