Q : ノロウイルスって、どんな症状?
例年、12~1月にかけて流行のピークがあるノロウイルス感染症。子供がウイルスに感染したら、どう対応すればいいですか。小児科医の粂川 好男先生にお話を伺いました。
吐き気、腹痛、下痢。ひどい子は発熱も
症状には個人差があり、症状が出ない人(感染)もいますが、多くは突然の吐き気、腹痛から始まり、続いて下痢が起こります。発熱することも。吐き気が強く、つらいですが、一般に軽症で、2~3日以内には本人の免疫力で自然に治ります。抵抗力や体力のない子どもは大人よりも症状が重くなり、脱水になりやすい傾向はあっても、適切に対処すれば、重症化やはありません。
ノロウイルスの感染経路は?
感染は、ほとんどが口からノロウイルスが入るで、食中毒と感染性急性胃腸炎(お腹の風邪)に分けられます。
食中毒が起こる原因
①料理をつくる人が感染していて、その人を介して汚染した食品を食べる
②ノロウイルスに汚染されたカキなどの二枚貝を、加熱不十分で食べる
急性胃腸炎になる原因
①感染者の便や嘔吐物に触れた手が接触した物を介して感染する(嘔吐物には百万個以上のノロウイルスが存在。その中の数十個が体内に入るだけで感染する)
②感染者から飛沫感染する
ノロウイルスは、非常に感染力が強く、家族のひとりが感染すると、家族全員、かかってしまうことが多いようです。予防には、次のことを心がけてください。
家族の感染予防するには?
便や嘔吐物は塩素系漂白剤で消毒を
便がついたおむつや下着、嘔吐物を片づける時は、マスク、使い捨て手袋、エプロンをつけ、使用後はビニールのごみ袋に入れ、密封します。吐いた場所は、塩素系漂白剤(キャップ2杯分を500㏄の水で薄めたもの)で消毒を。夜間、急に吐くことが多いため、必要なものは、日頃から準備しておきましょう。
30秒ほどかけて入念な手洗い!
便や嘔吐物の始末の後、外出からの帰宅時、料理を作る時、食事の前、トイレ後は特に入念に手洗いを行ってください。薬用石けんで30秒くらい洗い、15秒ぐらいかけて流水で洗い流すのが目安です。
子供がノロウイルスにかかったときの対処法は?
まずは安静に。水分補給がカギ
ノロウイルスは感染力は強いですが、症状が重くなることはほとんどなく、一般に、数時間で吐き気は自然に治まるので、まず自宅で安静に過ごしてください。
重要なのは水分補給をして、脱水を予防すること。ある程度、吐き気が落ち着いてきたら、経口補水液をスプーン1杯から与え始め、吐かなかったら徐々に増やしていきます。がぶ飲みは禁物です。乳幼児の場合、1時間に50~100㏄くらいを目安に与えましょう。
薬や点滴は必要のない場合がほとんど
病院での治療は対症療法で、原則として下痢止め、痛み止めは使いません。脱水が強い時は点滴で水分補給しますが、実際には、点滴の必要はないケースがほとんどです。家庭で水分補給ができて元気になるなら、あえて病院に行かなくても大丈夫です。半日以上嘔吐が続いて水分がとれない、腹痛や下痢が激しい、ぐったりしている時は、早めに受診を。
ノロウイルスにアルコール消毒は効果がありません。ただ、同じ頃に流行するインフルエンザには効果があるので、使い続けたほうがいいと思います。スポーツドリンクは、電解質の濃度が低く糖分が高いため吸収しにくく、下痢などを悪化させることもあるので、経口補水液を。下痢があっても食欲が戻ったら、消化のいいものから食べさせるといいでしょう。
粂川 好男先生
杉並堀ノ内クリニック院長。信州大学医学部卒。立教大学卒業後、出版社に4年勤務した後、医学部入学。国立国際医療センター、愛和病院で小児科全般の臨床経験を積む。小児科専門医。
イラスト/松木祐子 構成/河又えり子 出典/『めばえ』