病気の原因に、よくウイルスと細菌があげられますが、何が違うのですか?
ウイルスと細菌は違います
ウイルス性は抗生物質が効かないため、処方される薬が異なります
ウイルスは肉眼では見えない微生物で、人間や動植物に侵入して病気を引き起こす、病原体の一つです。細菌と混同されがちですが、ウイルスと細菌は全くの別物。さまざまな違いがあります(下表)。
子どもの風邪は、ほんとんどがウイルス感染です。小児科を受診する子どもの大部分は、ウイルス感染症にかかった子です。多いのは「風邪」。咳や鼻水、発熱などの症状が軽い場合をそう呼びますが、原因の90%以上は何らかのウイルス感染です。残りの数%が細菌感染といわれています。
ウイルス性の風邪や胃腸炎は、自然に治ると考えて
外来で「ウイルス性ですね」とか「ウイルス感染症ですね」と言われたら、それは、自然に治る、「風邪」と同義語と考えていいと思います。例えば嘔吐、下痢、腹痛などの症状がある感染性胃腸炎は、90%以上がウイルス感染で、自然に治ることが多いので「お腹の風邪」とか「ウイルス性胃腸炎」とか言われます。
「風邪」が悪化して重症化すると、気管支炎や肺炎、髄膜炎、脳症などを引き起こします。これらの原因も、だいたいはウイルスによるものです。
胃腸炎には、病原性大腸菌などの細菌感染によるもの(食中毒)も。また、髄膜炎には細菌性髄膜炎もありますが、胃腸炎と髄膜炎は原因の90%以上がウイルス性で、細菌性よりも重症化するリスクが低く、ほとんどが自然治癒します。
冬に気をつけたい感染症
RSウイルス、インフルエンザなどが冬のウイルス感染症の代表格
気道のウイルス感染症の代表は、RSウイルスとインフルエンザ。胃腸炎の代表は、ノロウイルスとロタウイルスです。
RSウイルス感染症
秋~冬に流行。主症状は咳、鼻水、発熱。感染・発症を繰り返し、1歳までに半数以上が、2歳までにほぼ100%の子が、少なくても1回は感染するといわれます。初感染で発症した時、重くなりやすいため、重症化する多くは乳児。3〜5歳の年齢では重症化は少なく、普通の風邪と変わりません。
インフルエンザ
RSウイルスの流行に少し遅れて、冬~春に流行。主症状は発熱、全身倦怠感など。乳幼児と高齢者は、まれに重症化することがあります。
ノロウイルス感染症
秋~冬に流行。主症状は激しい吐き気、嘔吐など。大人もかかります。重症化することは、ほとんどありません。
ロタウイルス感染症
ノロウイルスの流行に少し遅れて、冬~春に流行。主症状は激しい下痢、発熱、脱水など。乳幼児に多く、特に乳児が重症化する傾向が見られます。任意の予防接種があります。
冬に多いウイルス感染症とウイルスに負けない対策は?
規則正しい生活やバランスのいい食事、十分な睡眠を
莫大な種類のあるウイルスの多くは人間に無害で、ほんの一部が変異して害を及ぼすウイルスになったと考えられています。
風邪のウイルスは現在、400種類以上あるようですが、それに負けない免疫や体力をつけるには、バランスのいい食事や良質な睡眠を十分にとる、規則正しい生活を送るなど、生活習慣が大切です。
抵抗力の弱い乳幼児は予防接種を受けて、免疫力を高めよう
子どもはウイルス感染を繰り返し、乗り越えて強くなります。ポリオや麻疹など、重症化や後遺症が残りやすい感染症は、予防接種が守ってくれます。その結果、3歳では大人の5割程度、6歳では9割程度の免疫の強さになります。子どもがウイルス感染症で大変な思いをするのは、小さいうちだけ。安心してください。
ママ・パパへひと言アドバイス
うがい、マスク、手洗いの3点セットで家族で予防!
ウイルス感染症の感染経路は、主に接触感染と経口感染。予防には手洗いが最も効果的とされていますが、うがい、マスクとの3点セットを定番にすると、より効果的です。流行時期には人混みを避ける、できる予防接種は必ず受けるなどの対策も行ってください。高熱や胃腸炎の場合は、経口補水液などをこまめに与え、脱水にならないケアが重要です。
粂川好男 先生
杉並堀ノ内クリニック院長
立教大卒業後、出版社に勤務した後、信州大医学部入学。国立国際医療センター、愛和病院で小児科全般の臨床経験を積む。安心と笑顔を持ち帰れるクリニックを目指す。小児科専門医。
イラスト/松木祐子 出典/『めばえ』 再構成/HugKum編集部