時代とともに家族のあり方も変化している現在。ママ・パパ側と祖父母側の考え方にも変化が生じているようです。大切な家族だからこそ、お互いが気持ちよく付き合うためにはどうしたら良いのでしょうか。長年、保育の楽しさを探求する平山 許江先生に、上手な付き合い方のポイントをうかがいました。
Q : 祖父母との賢いつき合い方は?
最近「嫁と姑のトラブル」は、あまり話題にならないようです。祖父母とママ・パパのつきあい方が変わってきたの?お互い、不満はないのでしょうか。
A : 関係は時代に影響される
確かに「嫁と姑のトラブル」は、あまり聞かなくなりました。理由の一つには、他人に干渉しなくなった社会全体の風潮があると思います。とりわけ都会ではプライベートなことに踏み込まず、隣近所でも適度な距離を置くようになっています。
もう一点は、女性の関心が家族以外に広がったこと。特に姑世代の女性達は元気で、バリバリ働いていたり多趣味だったり、温泉だ海外旅行だと出かけたり。自分の世界を持っていて「嫁は嫁、私は私、それぞれの生活をしましょう」と、割り切っている姑が増えています。
つまり、世の中がずいぶんと変わってきた、その影響が、現代の嫁・姑の関係のあり方に現れているんですね。
反対にこの頃よく耳にするのは、祖父母に頼るママ・パパが多いという話です。しかも「じいじ達は孫がかわいいのだから、預けるのは親孝行」と、お礼も言わない。それが祖父母の一番の不満だそう。
預け方が問題なのかもしれません。例えば子どもが急に病気になり、ママは仕事で「ばあば、お願い」となった時。突然の対応が大変なのは、祖父母宅も同じです。病気の孫を預かるのは負担と思っている祖父母もいます。でもママが「私のほうが大変なのだから、見てくれて当然でしょ」という気持ちでいれば、どんな人でも腹が立つでしょう。
ベビーシッターや、ママ友などに頼んだ場合を考えてみてください。第三者にはお金を支払ったり、「ありがとう」と言ったり、一方的に甘えることはしませんね。祖父母に対しても同じです。肉親なのだからどんな時も助けてくれて当たり前と思わずに、心配りをすれば、祖父母も「何とかするわ」となるものです。
「こうしてほしい」と伝える
一方、多くのママの不満は、祖父母がやたらとおやつや、おもちゃを買い与える、それが自分のしつけと反するのに「ノー」と言えないことだとか。そんな場合は、代案を出しましょう。「チョコレートではなくて、果物にしてもらえます?」とか「次の誕生日に少し高いおもちゃを買ってもらえると、うれしい」などと、してほしいことを言うのです。あるいは「甘いものを食べるとご飯を食べないんです。どんなおやつがいいかしら」と相談する形にして、一緒に代案を考えてもいいかもしれません。
甘やかすから、子どもが祖父母にべったりで心配という人もいますが、どんなことがあっても、子どもは絶対にママのところに戻ってきます。自分の愛情に自信を持ち、子どもを信じてください。
お互いのいいところを見る
ともすると祖父母は「子育てはこうするべき」と決めがちです。でも、2~3人育てただけの経験で、「私の頃はこうだった」とは言えても、どんな場合にも通じるわけではありません。
祖父母は若い人の子育てを見て「へー、今はこうなんだ。一生懸命やっているんだな」と、ママも祖父母の話を聞いて「ばあばも熱意を持って子育てしたんだな」と、お互いに敬意を表しましょう。そして、使える!と思ったことは取り入れればいいんです。家族であっても、人間関係は努力してつくり上げていくものです。円満な関係を築いていくためには、ひとまず相手のやり方や考えに耳を傾ける姿勢が基本です。
祖父母には、子どもに物ではなく体験を与えてもらうといいと思います。得意なことや、好んでやってくれそうなことなら、祖父母も楽しめるでしょう。電車を乗り継いで遠出するとか、日曜大工の手伝いとか。私は孫と野菜づくりや球根植えなどをしました。ママやパパと違う人との経験は、特別の日として、子どもはいつまでも覚えているものです。物じゃなくても、愛情はしっかり伝わりますよ。
平山 許江先生
保育楽者
東京学芸大大学院への入学などをはさみ、幼稚園に20年勤務。大学教授を歴任し、現在、青木教育研究所所員。日々、保育の楽しさを探究中。著書に『子育てはどたばたがよろしい』(世界文化社)
イラスト/松木祐子 構成/河又えり子 出典/『めばえ』