「家人」は誰に対して使う? 正しい意味や類語をマスターしよう

「家人」は、近年、ほとんど使われていない言葉ですが、まれに年配の人との会話や、時代劇などで見聞きすることがあるでしょう。家人とは、いったいどのような人を指すのでしょうか。家人の正しい読み方や意味、似ている言葉について解説します。

家人」は、近年、ほとんど使われていない言葉ですが、まれに年配の人との会話や、時代劇などで見聞きすることがあるでしょう。家人とは、いったいどのような人を指すのでしょうか。家人の正しい読み方や意味、似ている言葉について解説します。

「家人」の意味や読み方

「家人」には、「かじん」と「けにん」の二つの読み方があります。それぞれ意味が異なるため、口に出すときは注意が必要です。読み方別に正しい意味を見ていきましょう。

家で一緒に暮らす人のこと

家人を「かじん」と読む場合は、「家で一緒に暮らす人」を指し、夫や子どもはもちろん、同居している両親や義父母なども家人に該当します。

もし、住み込みのお手伝いさんを雇っているなら、その人も家人です。

ワンちゃんも、家人?

昔は、夫に対しては使用できなかった

家人は、今でこそ、同居する家族全員に対して使える言葉ですが、昔はそうではありませんでした。現在のように、男女平等が当たり前の世の中になる前まで、家人は「一家の主(あるじ)以外の人」を指していました。

当時、一家の主と言えば、男性と決まっています。そのため、夫が妻を「家人」ということはあっても、逆のケースは考えられなかったのです。

現在では、「男性が一家の主」という考え方も、すでに過去のものでしょう。従って、妻が夫を家人と呼んでもまったく問題ありません。

読み方次第で、差別につながる?

「けにん」は、江戸時代以前の、身分制度があった時代の読み方です。

古代の日本では、卑しい身分とされていた「賤民(せんみん)」の一つに「家人(けにん)」は含まれていました。

家人は、「貴族や豪族の私有物」とされる身分だったため、平安時代以降は、貴族に仕える家臣や従者を指すようになります。その後は、明治時代ごろまで、「家」に仕える奉公人を指す言葉として広く使われていました。

いずれにしても、「けにん」は「身分の低さ」を感じさせる言葉です。「かじん」と言うべき場で、間違えて「けにん」と言ってしまうと、差別発言と受け取られる可能性があるので注意しましょう。

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「御家人」との違いとは?

鎌倉時代と江戸時代には、家人の他に「御家人(ごけにん)」と呼ばれる人々が登場します。御家人とは、どのような人を指すのでしょうか。それぞれの時代別に、詳しく見ていきましょう。

将軍と主従関係を結んだ武士のこと

御家人が初めて歴史に登場するのは、日本で最初の武家政権である「鎌倉幕府」が誕生したときです。

幕府の頂点である将軍と主従関係を結んだ武士のことを、家人に「御」の字を付けて「御家人」と呼びました。

将軍と御家人の間には、「御恩(ごおん)と奉公」の約束が交わされます。

将軍は「御恩」として御家人に領地を与えたり、領主としての権利を保証したりしました。その代わり、御家人は将軍の御用を務め、いざというときには将軍を守るために戦う義務があったのです。

将軍に会える旗本以外の人

時代が下り、江戸時代の御家人は、徳川家直属の家臣を指します。

戦国時代に、徳川家康の下で功績をあげた重臣は「大名」となりましたが、幕府ができて間もないころは、大名も含め徳川家のすべての家臣を御家人と呼んでいました。

大名以外の家臣は、後に「旗本(はたもと)」と「御家人」の身分に分けられます。

旗本と御家人の大きな違いは、「将軍に会えるかどうか」でした。旗本は「御目見(おめみえ)以上」と呼ばれ、将軍に直接会うことや、将軍が出席する儀式への参列が許されていました。

黒田家住宅(静岡県菊川市)。国重要文化財。黒田家は徳川家旗本で、この地域の代官だった。18世紀中ごろの建築といわれる、この長屋門の規模から、2千石の格式とみなされる。

 

しかし御家人は「御目見以下」とされ、どれほど手柄を立てたとしても、将軍には会えませんでした。

このように、家臣の身分を、主人に会えるかどうかで分ける仕組みは、幕府以外の大名家にもありました。多くの武士は、顔を知らない主人に、忠誠を誓い、働いていたのです。

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「家人」の言い換え表現

「家人」はその成り立ちから、不用意に使うと、誤解を招く可能性がある言葉です。人との会話やメール、手紙などでは家人を使わず、他の言葉に言い換えてもいいでしょう。

家人の言い換えにふさわしい表現を、二つ紹介します。

「家族」

同じ家に住む人を指す場合、最も身近で分かりやすい言葉が「家族」です。

ただし家族は、「同じ家に住む人々」を意味しており、夫婦と子ども1人の場合は、3人全員を指します。

「私の家族が」と言えば、相手は、あなたの家族全員の話だと考えるでしょう。夫だけ、あるいは子どもだけを指すときは、本人の名前や、「夫」「息子」のように表現しましょう。

「パートナー」

会話の中で夫や妻を登場させる際に「パートナー」という呼び方もあります。近年は、同じ家に暮らしていても、必ずしも戸籍上の夫婦ではないケースも増えてきています。

友人に、うっかり「あなたのご主人は」などと言って、結婚していないことが分かり、気まずくなることもありえます。パートナーなら、結婚しているかどうかはもちろん、性別さえも関係ないため、誰に対しても使えるでしょう。

「家人」は使い方に注意して

家人は、もともと、卑しい身分の人や家来を表す言葉です。家の人を指すようになってからも、どちらかといえば、家の主人が妻やお手伝いさんを呼ぶときに使われていました。

意味をよく知っている人が聞けば、「家人」と呼ぶ人に対して、「偉そう」「家の人が可哀想」などと思うかもしれません。家人を使う機会はあまりないとはいえ、もし使う場合には、十分に注意しましょう。

子どもに、家人の意味を聞かれた場合は、正しく教え、誤った使い方をしないように伝えておくと安心です。

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構成・文/HugKum編集部

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