のびのび子育ては「放任」と紙一重?ルールやマナーを守れる子に育てるには【平山許江先生の子育て相談】

真剣に子育てをする親だからこそ、失敗はしてほしくない、危険な目に合ってほしくないと思う気持ちが強まり、口から出る言葉は「ダメ!」「やめなさい!」ばかり……。もっとのびのびおおらかに子どもを育てたいのに。そんな悩みを平山許江 先生に伺いました。

 

Q:子供を、のびのび育てるってどういうこと?

A.のびのびと放任の違いを理解しましょう

人の暮らしには、必ずルールがあります。また、その国の文化があるから、例えば日本では、トイレで用を足す時はドアを閉めなさいとか、ご飯はお箸で食べるものとか、マナーが求められます。人と一緒に暮らすということは、そういうルールやマナーという「制約」のなかで生きること。その前提を取り払って子供の好き勝手にさせたら、「のびのび」ではなく、放任とか野放し、迷惑な子育てになってしまいます。

無理なく自然にルールやマナーを守れる子に

と言っても「制約」にがんじがらめになるのとは違います。ルールやマナーさえ守れば、後は自由ですから、それを教えるのが「しつけ」です。そして子供が、無理なく自然にルールやマナーを守れるようにしつけることが、のびのび育つカギに。人が見ているからとか、こうやるとママに叱られるから守る、というのでは、「のびのび」とはいえません。

子供は気持ちい感覚的にことは覚える

そのためにはまず、「きちんと並んでいれば、ちゃんと順番が来るよ」「くちゃくちゃしないで食べたほうが、気持ちがいいね」などと、ルールやマナーを守ったら、いいことがあるんだ、気持ちいいんだ、と子供が感覚的にわかるような教え方をするといいでしょう。

さらに身につけさせてほしいのは「アクセルを失わずにブレーキをかける」方法です。「アクセル」とは「○○したい!」という意欲。「ブレーキ」とは、そのやる気をコントロールする力です。

 

のびのび育てながらルールやマナーを教えるためには

アクセルとブレーキを上手に使い分ける

幼児はもともと、アクセル全開です。「やりたい!」と思ったら加減なしにやりたいし、「食べたい!」となったら、今すぐ食べたい。そのアクセルはとても大事です。でも世の中には「制約」がある。だから、ブレーキをかけながらやる方法を、覚えさせる必要があるのです。

具体的なやり方は?

では、どうするか。例えば子供が積み木を投げた時、「積み木はダメ。公園でボール投げしようね」と、ダメと注意するだけで終わらせず、よりよい方法を教えます。すぐにご飯を食べようとしたら、「手を洗ってからね」と教えます。

また子どもは、自分もやりたいけれど、他の子もやりたいという場面によく直面します。でもそれは、世の中の厳しさをしみじみ学ぶチャンスです。「やりたいよねえ」と共感してから「あの子が使っているね。でも少し待つと終わるかもしれないよ」「貸してって言ってみる?」など、ブレーキのヒントを与えましょう。

つまり意欲を大事にしつつ、人と暮らす方法を教えるのが、アクセルとブレーキの意味。子供は3歳頃から、「手を洗えば食べられるんだ」「少し待てば使えるんだ」と、自分でブレーキをかけるとよい結果がついてくるとわかってきます。

 

のびのび育っている子ってどんな子?

今の自分を肯定できる子

のびのび育っている子というのは、物事に真剣に、全力を出して取り組んで、できた時に「できたぁ」と素直に喜べる子。要するに、今の自分を肯定的に認められる子だと思います。

失敗してもめげない力

また、失敗しても「明日またやろう」とあっけらかんと言ったり、小さい子なら「このはさみじゃダメだ」と、道具のせいにしてしまう子もそう。それも坂道を頑張って登ろうとする、アクセル全開のたくましい姿(生きる力)だからです。

失敗しても上手に忘れ、「もっともっと」と上を目指す。それって言葉を変えれば「子供らしい子供」なんですね。

ブレーキのかけすぎで、アクセルを失くしてしまわないように

現代のお母さんは、わが子が人に迷惑をかけないようにと必要以上に気にして、すぐに「ダメでしょ」「やめなさい」と言い、子供に我慢させる、諦めさせることが多いように思います。親がブレーキばかりかけている子どもは、4歳頃からブレーキのほうが強くなり、いちいち「○○していい?」と許可を求めるような子になったりします。子どもから本来のアクセルがなくなったら、寂しいですね。

 

 

平山許江 (ひらやま もとえ)先生 

保育楽者

東京学芸大大学院への入学などをはさみ、幼稚園に20年勤務。大学教授を歴任し、現在、青木教育研究所所員。日々、保育の楽しさを探究中。著書に『子育てはどたばたがよろしい』(世界文化社)

 

イラスト/松木祐子 出典/めばえ

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