おうち遊びで「非認知能力」が伸びる?教育専門家・竹内エリカ先生が提案する0歳・1歳・2歳あそびかた

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テレワークや外出の自粛などで、親子で過ごす時間が増えたこの頃。子どもと一緒に遊ぶアイデアが尽きてしまった、どんな遊びをすればよいかわからない、というママ・パパも多いのではないでしょうか?
教育専門家の竹内エリカ先生に、子どもの力を伸ばす遊び方についてお話を聞きました。

「非認知能力」は好奇心から始まる

「子どもにとって遊びは重要ですが、『遊ばせなきゃ』と大人が意気込んでも、子どもの興味を刺激しなければ意味がありません。子ども自身が自由に楽しむこと=遊びなのです」(竹内先生・以下同)

しかも遊びを通して、これからの時代に必要な「生きる力」として注目されている非認知能力を伸ばすことができるといいます。

非認知能力というのは物事を達成するときや社会生活で重要になる力のことで、その基になる力は大きく7つに分けられ、育つ順番があります。

人が何かを達成するときは必ず好奇心から入ります。『楽しそう』という感覚がまずあり、楽しそうだからやってみると、やる気が育つのです

やっているうちに『どうやったらうまくできるかな?』と考えるようになり、思考力がついてきます。

そこから先は、意欲です。自分が楽しいと工夫しているうちに、もっと自分流にアレンジしたいと思うようになる、これが意欲につながります。

意欲の次は、難しいことに挑戦しようとする自律性です。頑張る力、努力とか忍耐力と関係するものです。

そして、頑張った後に出てくるのが、やさしさです。頑張って達成すると「これできたよ!」「教えてあげようか?」などと人に教えたくなったりします。また「ママパパ、手伝って。自分だけじゃできないんだ」と助けを求めるなど、人と関わる能力である協調性が育ちます。

ここまで育ってくるといろんなことが自信となって、物事を達成できる力となるわけですね。勉強にしてもスポーツにしても、この段階をすべて経験していると、どんなことに取り組んでもやり抜く自信につながります」

子どもの力を伸ばす簡単な遊びのアイデアが1冊に

このような非認知能力を伸ばす遊びを紹介している竹内先生の著書『0〜2歳あそびかた事典(日本文芸社)には、普段の生活の中でできる簡単な遊びのアイデアがいっぱいです。

「コロナで生活様式が変わり、外出しづらくなり『子どもとどうやって遊んだらいいの?』『将来的な影響が出るのでは?』というパパママたちの悩みをよく聞きました。家の中でできる遊びを紹介したいと思って作った本です。

こういう時期だからこそ『家で伸びる能力』に注目しました。親子の関わりを通して非認知能力を伸ばす遊びはたくさんあります。大切なのは遊びを通して、子どもをよく観察することです。

細かいものに夢中になったり、ずっと体を動かしていたり、子どものタイプはそれぞれ違います。遊びを通して子どもが好きなものを発見し、何に興味があるのかを見つけるきっかけになればと思います。

子どもが興味を持ったことを伸ばしてあげると、さらにその能力が伸びて、いずれ学校に行ったときにも勉強で集中できたり、考察力や思考力がついたりしていきます。マイナス面だけを見るのではなく、今だからこそできる関わりを大事にしてほしいですね」

遊びでその子の能力が見えてきます

「好奇心を育てる遊びを中心に、五感に関わる遊びを紹介します。音に反応する、見えるものに反応する、さわられると反応するなど様々な子どもの反応を見ながら、好きな遊び方を見つけましょう。

例えば、

・おもちゃを転がしてみる子は実験欲の強い、いわゆる行動派のタイプ。
・おもちゃを振ってみて音を聞く子は、聴覚優位といってピアノ等の楽器をやると伸びやすい子。
・おもちゃを開けてみる子は、巧緻性といって指先が器用で勉強もよくできるタイプです。
パズルやブロック、豆を運ぶ遊びなどで、より伸びていきます。

遊びを通して興味を持つ事柄から、その子の能力が見えてきます。遊びながら『うちの子には別のやり方が合うかも?』と思ったら、子どもが楽しめるように内容を変えていって構いません。

子どもが興味を示さない遊びは無理にせず、時間をおいて試してみるといいでしょう。年齢はあくまでめやすなので、他の年齢の子でもアレンジして楽しんでみてください」

では著書の中から、具体的な遊びをご紹介します。

月齢・年齢別 おうちでできる&道具が不要な遊び

4〜5か月ごろ 自信が育つ!「おなかでゆらゆらラッコ」

遊び方
大人のおなかの上に子どもを腹ばいで寝かせ、左右に優しく揺らします。
子どもが顔を上げようとするので、「気持ちいいね」などと声をかけてあげましょう。
背中をマッサージしたり頬をツンツンしたり、スキップシップをとるのもおすすめ。

0歳児のスキンシップやアタッチメントは自信の基を育てます。親子はくっついているのが理想的で、体温を感じながら遊ぶアタッチメントが重要です。

寝返りができるようになる前の子どもは、体の側面の『体側』の筋肉が未発達。その筋肉を動かしてあげましょう。おなかにのせた状態で『グラグラするよ〜』と横揺れすると、子どもなりにバランスを取ろうとします。すると体側の筋肉が発達し、寝返りを促すこともできます。

『おっとっと……』と言いながら揺らしたり、落ちそうになったり。楽しいと思う好奇心が大切なので、『あらー大変!』『落ちちゃう〜』などの楽しそうな声かけをしてあげるといいですね。」

6〜8か月ごろ 好奇心が育つ!「お口とお手てでパパパ、アワワ」

遊び方
「パパパ」などの喃語(なんご)が出てきたら、パパママも口に手を当て「アワワワ〜」。子どもの口も同じようにさわって「アワワワ〜」。

「喃語を話し出すときに、声のおもしろさを遊びで伝えると聴く力が発達します。大人が声を出しながら口をさわることによって『こんな音が出るんだな』『いろんな変化があるんだな』と意識するようになります。

ボディシェマ(身体意識)というのですが、赤ちゃんは『自分の口がここにある』ということをまだ知りません。『お口とお手てでパパパ〜』と赤ちゃんの口をさわってあげると、『ここが口だ、ここから声が出るんだ』と初めて気づくのです。子どもにとっては未知のことなので表情を見ながら進めてみましょう。

子どもが真似をしたらすごいです。真似するのはモデリングという能力ですが、ママの口をさわったり自分の口をさわったりしたら、『この子賢い!』と思っていいですよ」

1歳〜1歳半ごろ やる気が育つ! 「くまさん歩きではいはい競争」

遊び方
「くまさん歩きで競争しよう!」と誘い、高ばいで追いかけっこをします。てのひらと足先を床につけ、雑巾がけのような体勢で進みます。

ぜひさせたい運動遊びのひとつが、はいはいや高ばい。近頃の子どもは、はいはいが下手で胸筋と腕の力が育っていないため、走って転んでも手がつけない子が増えています。

『こんなことできる?』と親がポーズを見せて『真似できるかな?』『競争してみようか』と一緒に遊びましょう。ママが体力的に大変だったらパパの出番ですね。

1歳くらいなら親の背中にのせて『落ちないでね』とか、2〜3歳なら親のおなかに子どもがしがみつくコアラ抱っこをしても。さらに大きくなったら子どもの足を親が持ち、手押し車をしても同じ能力が育ちます。

基本的に移動がある動きはやる気を育てます。やる気は体と連動しているので、歩く・競争するなど動きのある行為が効果的なのです」

1歳7か月〜1歳11か月ごろ 思考力が育つ! 「頭・肩・ひざ・ポン」

遊び方
「頭・肩・ひざ・ポン」と言いながらその部位をさわります。「ポン」では手を叩きましょう。最初は大人が大げさに見本を見せてあげるといいですよ。

自分の体を意識するボディシェマ(身体意識)が身につく遊びです。赤ちゃんは目・鼻・口の部位を理解した後に、頭・肩・ひざなどの部位がわかるようになるといわれています。いろんな部位を覚えられるよう、「肩・ひざ」など声に出しながらさわりましょう。

赤ちゃんは生まれたときから、泣き方や歩き方に『身体リズム』を持っています。それを外のリズムに合わせる遊びは、社交性や協調性を伸ばすといわれています。大人が歌い、それに子どもが合わせて動くといいでしょう。

『頭はどこ?』『肩は?』『ひざは?』とゲーム感覚で声かけを。声を聞いて考えてから体を動かすので、子どもの思考力も育ちます。『頭・肩・おなか』というように、さわる場所を変えるのもおすすめです」

2歳〜2歳5か月ごろ 協調性が育つ!「わくわく♪ フリーダンス」

遊び方
ダンスは心身の発達にもつながる遊びです。振り付けを指示せず、自由に踊らせてみて。音楽を流したり歌ったりするほか、太鼓をトントン叩く、手拍子するのもおすすめ。大人も一緒に盛り上げてください。

音楽に合わせて体を動かすことは、人やものに合わせることで協調性が身につきます。『ママとくるくる回ろうね』と同じ間隔を保って動くことは『空間認知』という協調性の能力のひとつ。ダンスそのものが協調性と関係しています。

好きな音楽をかけて、手拍子や声かけなどをしながら『ジャンプして』『手をブラブラ〜』と体を動かしましょう。子どもが楽しそうに自分で踊りだしたら成功です。親は太鼓をたたいたりして『もっと早くー』などと声かけしても。

子どもは自分の心の中にあることを外に出すと情緒が安定します。おしゃべりが得意な子はしゃべることで安定を保ち、暴れん坊の子は身体欲求が強く、体を動かすことで自分のエネルギーを外に出し、表現欲求を満たしています。

一方、静かであまり動かず、しゃべらない子はストレスを溜めやすいのです。ダンスが苦手なら粘土やお絵かきでも表現欲求を満たせるので、おとなしい子には特にさせてあげるといいでしょう」

おうちでできる遊びを楽しんで

子どもの笑顔や成長を引き出し、しかも非認知的な能力まで身につけることができる遊び、どれも簡単にできそうですね。

竹内先生のお話から、遊びの中で子どもの反応を見る親の観察力がとても重要だということもわかりました。アレンジしておうち遊びのきっかけにしてみてください。

 

記事監修

一般財団法人日本キッズコーチング協会理事長、幼児教育者
竹内エリカ先生

お茶の水女子大学大学院人文科学研究科修士課程修了。20 年にわたって子どもの心理、教育、育成について研究し、これまで約 20,000 人、子どもから大学生までを指導してきた。あそび学を専門とし保育・幼児教育関係者への講演活動や執筆、ラジオパーソナリティーなども務める。

 

 

『0〜2歳 あそびかた事典:いっぱい笑う すくすく育つ』(日本文芸社)
著者/竹内エリカ イラスト/ヒビユウ

 

文・構成/村重真紀 撮影/田中麻以

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