木村拓哉✕長澤まさみの『マスカレード・ナイト』に見る異業種バディの面白さ

木村拓哉主演、東野圭吾原作「マスカレード」シリーズの映画化第2弾『マスカレード・ナイト』が公開。木村さん演じる刑事と長澤まさみ演じるホテルマンの異色バディが、再び難関な殺人事件に挑みます。

木村拓哉主演、東野圭吾原作の映画化第2弾『マスカレード・ナイト』が9月17日(金)より公開されました。2019年に公開された1作目の『マスカレード・ホテル』は、興行収入46.4億円という大ヒットを記録しただけに、本作への期待値もきっと高いのでは。安心してください!キャストやスタッフ陣が目指す“前作超え”の壁はばっちりクリアしていると思います。

舞台は本シリーズで欠かすことができない「ホテル・コルテシア東京」。ある殺人事件の犯人が、ここで開催される大晦日のカウントダウン仮装パーティー「マスカレード・ナイト」に現れる、という匿名の密告状が届いたことで、刑事の新田浩介(木村拓哉)は再びホテルのフロントクラークを装い、潜入捜査を開始。前回頼りにしていた山岸尚美(長澤まさみ)は今やコンシェルジュに昇格し、客からの無理難題にも応えていました。

それにしても、パーティーの招待客500人は、全員が疑うべき存在です。刑事の臭覚をきかせ、次々と客に接触していく新田と、お客様最優先の山岸とがぶつかりあいながらも、犯人を突き止めようとしていきます!

ホテルの客を演じるのが、田中みな実、石黒賢、沢村一樹、勝村政信、木村佳乃、凰稀かなめ、麻生久美子、高岡早紀、博多華丸と今回も豪華な顔ぶれですし、それぞれのキャラクターも強烈で、木村さん、長澤さんとのアンサンブル演技にもご注目ください。

職業もののバディムービーの面白さにプラスαのメッセージ

©2021東野圭吾/集英社・映画「マスカレード・ナイト」製作委員会

「HERO」の検察官や、「GOOD LUCK!!」のパイロットから、「ビューティフルライフ」の美容師まで、様々な職業の役柄に挑み、毎回“その道のプロ感”を発揮してきた木村さん。今シリーズでは初の刑事役を務めましたが、設定としてはホテルに潜入捜査をするので、正確にはホテルマンを装った刑事役です。そのさじ加減が今回も絶妙ですし、なんといっても原作者の東野さんが木村さんをあてがきして書いた新田浩介役なので、またもや当たり役となりました。

また、異色バディを組む長澤さんのホテルマンぶりも完璧です。前作の時からきちんと講習を受けて、完璧な所作をマスターしていましたが、今回はコンシェルジュに昇格したことで、より一層品格が加わりつつ、ホテルの困った珍客のオーダーにもスマートに応えていく姿に惚れ惚れします。

先日の完成披露試写会では、木村さんと長澤さんがお互いに「最高です」と称え合ったのも記憶に新しいところです。

©2021東野圭吾/集英社・映画「マスカレード・ナイト」製作委員会

長澤さんは木村さんについて「数々の作品でいろんな役を演じられて、たくさんのものを生み出してきてる本当にすごい方なのに、常に素直に受け入れる心を持っています。大人になると素直になることっが難しかったりするけど、そこをスポンジのように柔らかく柔軟に吸収していってる木村さんを見て、すごいなと思います」と心からリスペクトしていました。

木村さんも長澤さんについて「一緒に作業をしてて楽しいですし、ホテル・コルテシア東京の制服でセットのなかにおられる時は美しいです。お芝居では、一度も読み合わせをしてないのに、非常にセッションが気持ち良く進む感じです。前作から2年という月日は経ってましたが、一瞬にして、山岸さんと新田というキャラクターに戻れた気がします」と称えていましたが、まさに2人の信頼関係が役柄にも活かされています。

本シリーズが興味深いのは、異業種のプロフェッショナルが、お互いの職務のせめぎ合いをしていくなかで、1つのミッションに挑むという構図です。個人的には、ある人物が語る「ルールの中にいると、ルールを守ることが目的となってしまうけど、本当はそうではない」という感じの台詞がとても腑に落ちました。最大の目的は「犯人を見つけ出し、宿泊客の安全を確保する」というもので、それを忘れていない新田たちこそまさにプロであり、その落とし所が物語に深みを与えた気がします。

ウィズコロナにおけるエンターテイメントの必要性や役割を考えてみたい

©2021東野圭吾/集英社・映画「マスカレード・ナイト」製作委員会

いまだコロナ禍で、言うまでもなく大打撃を受けているエンターテイメント業界。本作はそんな中で撮影を敢行し、無事完成させただけではなく、9月7日にはTOKYO DOME CITY HALLにて有観客で『マスカレード・ナイト』完成披露試写会も開催しました。もちろん徹底した感染予防対策をしたうえでですが、キャストやスタッフ陣は、相当気をつけて臨んだことは言うまでもありません。

しかも劇中で繰り広げられるのは、500人もの参加者がいるパーティーのシーン。エキストラの方を含め、全員が細心の注意を払っていたと思いますが、そのかいあって、目を見張るようなゴージャスなシーンに仕上がっています。また、完成披露試写会でも、観客は一切声を挙げず、割れんばかりの拍手を贈っていた姿が印象的でした。

©2021東野圭吾/集英社・映画「マスカレード・ナイト」製作委員会

木村さんはイベントで「本当にコロナ禍にもかかわらず、たくさんの出演者の方々にご協力いただきました。一人一人がきちんと自己管理を行なった上で、現場でも看護師さんにご同行いただいて、あのシーンを撮ることができました。今、撮影当時を思い返しても、非常に感謝しております」と語っていましたが、改めてみなさんの取り組む姿勢には心を打たれました。

そんななかで完成した『マスカレード・ナイト』は、関わった全員の情熱と心意気が詰まった娯楽作品となりましたが、諦めずにいろいろな面を工夫して面白い作品を作るということで、改めてコロナ禍におけるものづくりの指標にもなったような気がします。

思えば私たちの日々のウィズコロナ生活もそうで、やはり1人1人が感染対策について気を緩めてはいけないけど、9月から学校生活もスタートしたなかで、いつまでも下を向いてはおられず、安心安全を常に意識しつつ、前へ進むべきなんだろうなとも思いました。

『マスカレード・ナイト』は、極上のミステリーで、心躍る娯楽映画です。本作を観れば、こういう時代だからこそ、エンターテイメントの活力が心を元気にしてくれることを、きっと実感していただけるはず。そういう意味でも、ぜひ家族で観て、みんなで謎解きにチャレンジしていただき、笑顔になっていただきたいと心から思っています。

『マスカレード・ナイト』は9月17日(金)より全国公開中
監督:鈴木雅之 原作:東野圭吾「マスカレード・ナイト」(集英社文庫刊)
出演:木村拓哉、長澤まさみ、小日向文世、梶原善、泉澤祐希木、東根作寿英、石川恋、中村アン、田中みな実、石黒賢、沢村一樹、勝村政信、木村佳乃、凰稀かなめ、 麻生久美子、 高岡早紀、博多華丸、鶴見辰吾、篠井英介、石橋凌、渡部篤郎…ほか 
公式HP:masquerade-night.jp/

文/山崎伸子

©2021東野圭吾/集英社・映画「マスカレード・ナイト」製作委員会

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