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2021年発表の全国疫学調査では、子どもの「お口ぽかん」は3割。歯並びにも影響
子どもの口が無意識に開いている「お口ぽかん」の全国大規模疫学調査を行ったきっかけは、歯科診療で子どもたちを診ていて、お口がぽかんと無意識に開いている子を多く見かけることでした。研究メンバーからも同じ意見が聞かれました。
「お口をぽかんと開けているだけなのに病気なの?」と思う方もいらっしゃるかも知れませんが、「お口ぽかん」は正式には「口唇閉鎖不全症」という病名で、適切に対応しないと、集中力の低下や歯並びなどに影響が出ることもあります。
「お口ぽかん」の全国疫学調査は、全国⼩児⻭科開業医会(JSPP)の協⼒を得て、全国66の小児歯科を専門に診療している歯科医院を、定期的に受診している3~12歳の3399人の子どもを対象に行いました。調査期間は2014年8月1日~10月31日です。
その結果、子どもの「お口ぽかん」の有病率は30.7%でした。想像以上に多くて驚きました。
「お口ぽかん」は地域差がなく、全国的に見られる
当初、研究グループでは「お口ぽかんの割合は地域差があるのでは?」「都市部に比較的多いのでは?」など仮説を立てていました。しかし、調査の結果では、全国的にどの地区にも約30%くらいの割合で「お口ぽかん」が見られることがわかりました。また、最も割合が少なかったのは関東で28.6%、最も割合が多かったのは九州・沖縄で32.4%であり、地域によって大きな差は見られませんでした。
12歳の有病率は40%。子どもの年齢が上がるに従い、有病率も増加
お口ぽかんの割合を年齢別に見ると最も少ないのは3歳で約19%です。年齢が上がるにつれて増え12歳の有病率は約40%。3歳の2倍以上です。
しかし、「うちの子、お口がいつも無意識に開いている」と気づいたり、気にするママやパパはあまり多くありません。これは、指しゃぶりは歯並びに影響することが知られているので、親や周囲の人も注意して見ますが、お口ぽかんの問題点はあまり知られていないためではないかと考えます。
主な原因は5つ。思い当たったら要注意
「お口ぽかん」の主な原因は次の5つです。
1.「お口ぽかん」の状態が、日常的なクセになっている
2.鼻炎などによる鼻づまり
3.ぜんそくなどの慢性的な呼吸器疾患
4.口の機能が十分に発達していない(口腔機能発達不全症)
5.歯並びやかみ合わせが悪い
集中力の低下、咀嚼や、発音、呼吸に影響
お口が無意識に開いていると見た目の問題だけでなく、集中力が低下するので生活面や学習面に支障が出やすくなります。
また、疲れやすくなったり、歯並びやかみ合わせが悪くなることもあります。口腔機能発達不全症が原因の場合は、咀嚼や発音、呼吸などにも影響が出ます。お口ぽかんの子は、姿勢が悪い子も多いです。
自然には治りにくい「お口ぽかん」。気になるときは受診を
「お口ぽかん」は、自然治癒は難しいので、気になるときは医療機関を受診しましょう。
鼻炎などによる鼻づまりや呼吸器疾患が原因の場合は、かかりつけの小児科や耳鼻咽喉科を受診してください。諸症状が改善するとお口が閉じるようになる可能性があります。
「お口ぽかん」などの口腔機能発達不全症や、悪い歯並びを疑うときは歯科専門医へ
「お口ぽかん」などの口腔機能発達不全症が疑われるときは、歯科医に相談してください。
唇を閉じる筋力が弱いときは、専用器具を使って、口輪筋を中心とした表情筋を鍛えるトレーニングなどを行います。咀嚼や舌の使い方に問題があるときは、専用のデンタルガムを噛んで、咀嚼筋や舌筋を鍛える訓練をすることもあります。
口腔機能発達不全症の治療は、2018年から保険適用に
口腔機能発達不全症は、専門的な治療や指導が必要ですが、2018年から保険適用で治療できるようになりました。気になるママ・パパは、日本小児歯科学会のHP「専門医がいる施設の検索」でリサーチしてください。「お口ぽかん」は、すぐに治る疾患ではないため半年以上通院することもありますし、家庭でのトレーニングも必要です。
予防には、ぶくぶくうがい、風船やシャボン玉を膨らませたりする遊びも有効です
バースデーバースデーケーキのロウソクが吹き消せない子も
最近は、口の機能が十分に発達していないために、バースデーケーキのロウソクを吹き消すことができない子もいます。
家庭でできる「お口ぽかん」の予防には、食事をする時は口を閉じてモグモグとよく口を動かし、クチャクチャと音を立てずに食べる習慣をつけるといいでしょう。また、早食いだったり、逆に食べ物を噛み切れずに、ずっと口の中でモゴモゴしている場合は注意しましょう。
これはマナーの問題だけでなく、口腔機能の発達につながります。
また、ぶくぶくうがいもおすすめです。口で風船やシャボン玉を膨らませるなどの、口を使った遊びも積極的に行いましょう。
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記事監修
取材・構成/麻生珠恵 図版提供/齊藤一誠先生