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梅雨は天気予報が当たりにくい!?
実は梅雨の時期の天気の予想は難しく、気象予報士泣かせ。みなさんも「今日は雨の予想だったのに降らないなぁ」とか「予報がころころ変わっているなぁ」とか感じていらっしゃる方も多いかもしれません。
春や秋は予想の的中率が高い
気象庁では、降水の有無の予想の精度として的中率を発表しています。的中率は地域によって違いがあるものの、全国的に春や秋は高めで、梅雨から夏にかけて低くなっています。
この的中率の違いの理由は、雨をもたらす雲の大きさや動きによるものです。春や秋に雨をもたらす低気圧の雨雲はとても大きく1000キロ単位。東から西に雲のかたまりが動いていくので、多少雨の降る時間がずれても「雨が全く降らなかった」ということはあまりありません。
気象予報士泣かせの梅雨前線の雲
一方、梅雨の時期に雨をもたらすのは東西に細長く伸びる梅雨前線です。梅雨前線の雨雲の南北の幅は100キロ程度とかなり狭く、この細長い雨雲が南北にウロウロ動きます。南から北に移動したり、その場にとどまったり、北から南に動いたり、梅雨前線の細かい動きの予想が難しいというわけです。気象庁のスーパーコンピューターも、低気圧の大きなかたまりが東から西へ移動することについての予想はとても精度がいいのですが、南北の細かい動きの予想は不得意です。
さらに、この細長い雨雲の外側は晴れのエリアが広がっていることも。梅雨前線が予想と違う動きをすると、雨雲が全くかからなかったというだけでなく「雨の予想だったのになぜか晴れた」ということにもなってしまうのです。
1週間の予定を立てる参考に信頼度を活用
「買い物やお出かけの予定を立てたいのにすぐに天気予報が変わってしまう…」と困っている方も多いかもしれません。ご説明したように梅雨はなかなか予想が難しい時期ではあるのですが、「信頼度」を見れば1週間の予定が立てやすくなるかもしれません。
天気予報の信頼度とは
気象庁から発表されている週間予報に「信頼度」があるのをご存知でしょうか。3日目以降の降水の有無の予報について「予報が適中しやすい」ことと「予報が変わりにくい」ことを表す情報で、A、B、Cの3段階で表します。
信頼度Aのときは、明日に対する天気予報と同程度の予報精度で、予報が変わることはあまりないという意味になります。一方、信頼度Cのときは、雨が降るかどうか微妙なとき、もしくは、翌日に予報が変わる可能性がやや高いことを意味しています。つまり信頼度Cがついている時は、日々最新の天気予報で確認した方がいいということになります。また、同じ雨マークや晴れマークのでも、信頼度Aの予想の方が「信じていい」ということになります。
降水確率何%で傘を持っていく?
降水確率とは
降水確率とは、「指定された時間帯の間に1ミリ以上の降水がある確率」と定義されています。つまり、「雨が降るか降らないか」のみについて確率を示すものなので、降る雨の強さや、雨が長く降るのか一時的に降るのかなどの時間についての情報はないということです。ちなみに1ミリの雨の目安はしとしと降る弱い雨のこと。1ミリ未満の傘をささないでいいくらいの地面が湿るような小雨は確率には含まれていません。
傘を持って行く降水確率の目安は?
降水確率0%や10%のときには傘は持っていきませんよね。では何%以上だと傘を持ち歩いた方がいいのでしょうか。正解はないのですが、参考になる考え方に「コスト・ロスモデル」というものがあります。
コスト・ロスモデルとは
コスト・ロスモデルとは、損失を防ぐために対策を施した場合にかかる費用(コスト)と、何も対策を施さなかった場合に出る損失(ロス)をあらかじめ把握しておくことで、最適な対応をとることができるというもの。この場合は傘を持ち歩く労力(コスト)と傘がない時に雨に降られた場合の損失(ロス)の割合を考えます。
例えば1日傘を持ち歩くコストを300円とします。一方雨に降られた時のロス(クリーニング代や新しい傘を買う費用など)を1,000円とします。このコストをロスで割った割合が、降水確率よりも小さければ対策を取ります。この場合は降水確率30%以上の時は傘を持っていった方がいいということになります。
自分にとっての傘を持ち歩くコストとロスを考えて、降水確率を参考にしてみてもいいかもしれません。
天気予報の基礎知識 「一時」「ときどき」ってどう違う?
天気予報で出てくる用語。よく耳にするし、なんとなくわかっている、という方も多いかもしれませんが、しっかりその意味を理解しているでしょうか。
天気予報の「一時」とは一時的ではない!?
「一時雨」というとパラッと降ってすぐに止んでしまうイメージかもしれませんが、気象庁の基準では「予報する期間の4分の1未満、連続して起こる」と定められています。
例えば「明日の天気は曇り一時雨」という場合、明日24時間のうちの4分の1、つまり長ければ6時間近くずっと雨が降っているかもしれないということになります。
「時々」とは
「時々」というのは「2分の1未満、断続的に続く」こと。「明日の天気は曇り時々雨」という場合、例えば雨が降って、昼間に止んだあとまた夕方に雨が降って、その雨の時間の合計が12時間未満ということになります。場合によっては降ったのは断続的だったけれども合計時間は1時間というように、「一時雨」よりも短い時間になることもあります。
ちなみに「一時」「時々」は時間を表すものなので、雨の強さなどはわかりません。
天気マークにだまされないで
時間がない朝などは天気予報のマークだけをパッと見て「今日は雨マークがないから傘はいらないな」と思ってしまいがちですが、これは要注意です。「所により雨」という予報は雨のマークが出ないのです。
「所により」の予報に気を付けて
「所により」というのは「現象が地域的に散在し、その発現域の合計面積が対象予報区域全体の50%未満」と定義されています。つまり「曇り所により雨」の予報では、マークは曇りしか出ないものの、対象エリアの半分より狭い地域では雨になる予想だということ。マークだけ見て判断するのではなく、テレビの予報解説の言葉を聞いたり、予報の詳細を確認したりしてくださいね。
梅雨の時期は特に天気予報の活用を
天気予報を正しく理解することで、もしかしたら「天気予報が当たった」と感じられることが増えるかもしれません。梅雨の後半には大雨も起こりやすい時期になります。ぜひ毎日天気予報をしっかり見て、毎日の生活に役立てていただければと思います。
文・構成/酒井千佳
京都大学 工学部建築学科卒業。
北陸放送アナウンサー、テレビ大阪アナウンサーを経て2012年よりフリーキャスターに。
NHK「おはよう日本」、フジテレビ「Live news it」、読売テレビ「ミヤネ屋」などで気象キャスターを務める。
現在は株式会社トウキト代表として陶芸の普及に努めているほか、2歳からの空の教室「そらり」を主宰、子どもの防災教育に携わっている。