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読書感想文のメインは、あらすじではありません
「読書感想文」というと、「登場人物とあらすじをしっかり書かなきゃ!」と、とらえるお子さんが多く、物語のあらすじに文章量を割きがちです。しかし実は、読書感想文のメインは、「本を読んで思ったことや考えたこと」なのです。
お子さんに「この本どうだった?」と感想を求めると、多くのお子さんは「おもしろかった」「楽しかった」や「つまんなかった」と答えます。これでは、読書感想文は書きにくいです。
もっと登場人物になりきったり、自分事としてとらえたりして、具体的な感想を持つことが大切です。
この記事では、お子さんの感想を引き出すコツを伝授します。
そのためにはまず、心が大きく動くような本を選ぶことが必要になります。
子どもの心が動く、読書感想文が書ける本を選ぼう
読書感想文を書くには、本選びが大きなキーポイントになります。1,2年生でも読書感想文を書きやすい本の選び方を見ていきましょう。
起承転結のはっきりした絵本や物語がおすすめ
まずは、絵本や物語です。お子さんにとってストーリーが分かりやすくて、起承転結が明確なものがおすすめ。“読書”というと文章の多い単行本をイメージされる方も多いですが、読み慣れた絵本からセレクトしても良いのです。
登場人物と自分を重ねやすいもの、自分の体験を思い出せるもの
読書感想文を書くためには、登場人物の誰かと自分を重ねながら読める本、自分の実体験を思い起こさせる本がおすすめです。
「自分だったら~~って言うだろうな」「ぼくが1年生のときも友達とけんかしちゃったな」「私も今度こんなことがあったら○○みたいに勇気を出してみよう」と思えると、読書感想文から実生活に活かされるきっかけになります。
物語を読み慣れていない子は、興味のある分野に関連するものを
物語を読み慣れていないお子さんも多くいますよね。1年生ならひらがなの学習を終えて少しした頃ですから、まだすらすら読めなくても大丈夫ですよ。また、物語よりも、図鑑や迷路などを好む子も多いです。
そんなお子さんには、興味のある分野に関連する絵本を選んであげましょう。例えば、虫が好きな子には虫が主人公の絵本、スポーツが好きな子にはスポーツに奮闘する子が主人公の物語などが良いでしょう。
本はどこで手に入れたらいい?
筆者が教員をしていた際には、「読書感想文のためにせっかく本を購入したのに、子どもが全然読まなかった」という声もよくうかがいいました。
特に、普段本を読み慣れていないお子さんは、自分がどんな本を好むのかわからないことが多いです。表紙だけを見て「これがいい!」と購入したけれど、いざ開いてみると2ページ目にも進まなかった、なんてこともあります。
本を手に入れる方法も複数あります。購入する、学校の図書室で借りる、地域の図書館で借りる、元々持っている本から選ぶなどです。お子さんがどんな本を好むかわからない場合には、公共図書館などで複数冊借りてから選ぶのがおすすめです。
子どもが共感する1・2年生向けおすすめ本 4選
「けんた・うさぎ」中川 李枝子
「ぐりとぐら」の筆者である中川 李枝子さんの作品。うさぎの男の子とお母さんの日常が描かれた短編集です。子どもなら一度はやってみたいと思ったことのあるようないたずらや失敗があり、子どもも親も楽しみながら読めます。
「歯がぬけた」中川ひろたか
1・2年生というと、ちょうど乳歯が抜けて大人の歯が生えてくるころ。自分のことと重ね合わせながら読みやすい1冊です。絵本のイラストが表情豊かでキャッチ—なので、登場人物の気持ちを理解しやすいのも特徴です。
「1ねん1くみ1ばんサイコー!」後藤 竜二
タイトルを見ただけで、「ぼくのクラスだ!」と言いたくなる1冊。「自分のクラスの○○くんみたいだなあ」と身近なことに感じられ、物語に入り込んだような気持ちで読み進めることができます。
挿絵もたっぷりですが、単行本タイプで文章量もありますので、読書が好きな1年生におすすめ。
「なきむしにかんぱい!」かんぱいシリーズ 宮川 ひろ
けんか・嘘・泣き虫など、子どもならではの葛藤や悩みをテーマにしたシリーズ。悩むこともあるけれど、それが成長につながっていることを感じられる1冊です。主人公の心の動きが細やかで、想像力を働かせながら読むことができます。普段からよく本を読む2年生や3年生におすすめです。
親はインタビュアーになって、子どもの感想をアウトプットさせる
低学年のお子さんは、いきなり作文用紙を目の前にしてもどうしたらいいかわからないものです。
学校で事前の指導があればそれに沿って書き進めていきますが、何も指導がない場合には、親がかなりテコ入れしなければなりません。そこで、親ができる3つのサポートをご紹介します。
自分で読むことが難しい子には、読み聞かせをしてから自分読みさせる
自分で読むことに慣れていないお子さんは、1文字ずつじっくり読んだり、挿絵だけ見てページをめくったりしてしまうことがあります。
それでは、お話の内容理解には結び付きにくいです。そんなときは、お家の方が読み聞かせをしてあげましょう。「読書感想文」ですが、読み聞かせをしても良いのです。一度聞いて、慣れてから自分で読ませると、すっと内容が理解できるお子さんも多いですよ。
まずは話し言葉で、子どもの考えをアウトプットさせる
考えたことをいきなり文章に起こすのは至難の業です。
まずは、お子さんとおうちの方で、本についておしゃべりをしながら、お子さんの考えをアウトプットさせていきましょう。
子どもにとっては、書き言葉よりも話し言葉の方が圧倒的に表現しやすいもの。お子さんには自由にしゃべってもらい、お家の方はお子さんがしゃべったことを付箋などにメモしておきましょう。
“おしゃべり”と言っても、お子さんによって大きな差があります。大人が口を挟むヒマもないくらいしゃべる子なら、自由に話させると良いでしょう。
「面白かった」「別に」「まあまあだった」など、本の内容について具体的な言葉が出てこない場合もあります。
そんなときには、大人が質問をしてお子さんの感想を引き出してあげましょう。
お子さんの具体的な感想を引き出す質問とは?
感想を聞く時には、お子さんが具体的に答えやすい質問がおすすめです。質問のキーワードと、お子さんの解答を付箋などにメモしておくと、その後文章化しやすいです。
「どんな場面がおもしろかった?」
「びっくりしたのはどこ?」
「登場人物の中で誰が一番好き?それはどうして?」
「自分が○○だったらどうする?」
「自分にも同じような出来事はあった?」
「このお話の続きがあるとしたら、どうなると思う?」
どうやって文章にするの?
低学年だと、まだ文章を書くことには慣れていない時期です。話し言葉から書き言葉にすることは難易度の高い作業ですので、お家の方のサポートが欲しいところです。
まずは、お子さんの話した感想をもとに、「どの順番で書くか」を決めます。読書感想文の一般的な流れは、以下の通りです。
・書き出し(その本を選んだ理由やきっかけ)
・あらすじ(登場人物、大まかなストーリーの紹介)
・自分が考えたこと(ここがメイン!自分の体験や感じたこと)
・まとめ(これから○○していきたい)
お子さんの感想をメモした付箋を並び替えて、書く順番を決めましょう。
次に、文章を書いていきます。メモから書き言葉にする作業は、なかなか難易度が高いものです。お子さんと一緒に1文ずつ文を考えていくと、お子さんは安心して書くことができます。
お家の方が「わたしが」「びっくりしたのは、」と文節に区切って声に出し、お子さんはそれを聞きとって書いていくと良いでしょう。聞き取って書くことが難しそうなら、お家の方がお手本となる文を書いてあげて、お子さんはそれを書き写すという方法もあります。
読書感想文には、本を楽しむ気持ちが一番!
「感想文を仕上げなきゃ!」という気持ちが強くなりがちですが、最も大切なのは本を楽しむこと。
デジタルネイティブ世代な子どもたちですが、「本っておもしろいじゃん!」と思えるような経験にしてあげたいですね。
また、本を通して、親子の関わりを深める機会にもなります。「うちの子はこんな考え方をしているんだ」「こんな風に伝えると分かりやすいのね」と、改めてお子さんを知るきっかけにできると良いですね。
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文・構成/yurinako