9月1日は子どもの自殺者が多い。元教員が語る、夏休み終わり「子どものSOSサイン」を見逃さない方法

「9月1日は1年間で1番子供の自殺が多い」という報道が数年前にされました。夏休みが終わり、新学期が始まることに、ストレスを抱えたり、憂鬱な気分になったりする子どもがいるのは事実です。

この記事では元小学校教員が、お子さんのSOSサインと対処法についてお伝えします。

新学期直前・直後は、子どもたちに変化が見られる

夏休み終わりに気持ちの変化がある

夏休みが終わりに近づくと、終わっていない宿題に焦る子、「もっと休みが続けばいいのに…」とのんびりする子、「そろそろ生活リズムを戻さなきゃ」と気を引き締める子など、お子さんなりに様子の変化が見られることが多いですよね。

 なかには、「また学校が始まるのか…、行きたくないな」と感じるお子さんもいるのです。大人でも、ゴールデンウィーク明けに五月病になったり、職場の異動や転職で環境が変わり軽いうつ的な症状が出たりすることがありますよね。子どもにとって夏休みが終わるのは大きな環境の変化ですから、そのような気持ちになるのも分かります。

 学校では始業式の日は、すぐ出席確認をしています

実は、先生たち学校関係者は、91日をとても注意深く見ています。
それは、「9月1日は子どもの自殺者が多い」と言われているからです。

 内閣府が以前の「自殺対策白書」で、「91日は、1年の中でも18歳以下の自殺者数が突出して多くなる日。その割合は、なんと他の日の2.6倍である」というデータを示したことがきっかけと言われています。

 それ以来、学校では、「始業式の日は、子どもが登校したらすぐ出席確認をして、管理職(校長先生など)に報告すること」とされています。

夏休みが終わる直前・直後に多い「子どもの自殺」

ここ数年ではコロナ禍もあって、夏休み期間が地域によって異なっていることもあり、91日だけではなく、夏休みが終わる前後に注意が必要と言われています。

 このデータは、小・中・高校生の月別自殺者数を示したものです。自殺者の数は、小学生が少なく、中高生に多い傾向があります。

出典:「児童生徒の自殺対策について」令和4年2月24日(木) 文部科学省

https://www.mhlw.go.jp/content/12201000/000900898.pdf

夏休みの終わりでストレスを感じる3つの原因とは?

明確な言葉や態度に示していなくても、夏休みが終わることに大きなストレスを抱えるお子さんは多くいます。

では、なぜ夏休みが終わると大きなストレスになるのでしょうか。その理由を探ってみましょう。

 

成績や友だち関係に関する悩み

夏休み前の学校生活でいじめにあっていたり、孤立したりしていたりすると、「また一人ぼっちになったらどうしよう」「あんな辛い思い、もうしたくない」と感じ、学校に行くことに前向きになれません。

 また、年間を通しての中高生の自殺で最も多い理由は、学業不振や受験のことなど、成績に関することです。
学校が始まると、成績による序列や受験へのプレッシャーから逃れられなくなると感じるのかもしれません。

「気にしすぎ」と言わないで子どもの話を真剣に聞いてあげて

上記のように成績や友だち関係で悩んでいたとき、親からも「それくらいなんてことないわよ」「あなたが気にしすぎてるだけじゃないの?」「あなたの勉強が足りないから成績が伸びないんでしょ」と言われ、「結局私のことなんて誰も分かってくれないんだ…」と感じる子どももいます。

 反対に、子どもが辛い思いを抱えているとき、親が子どもの話を真剣に聞いてあげることで子どもの心が安定することが多いのも事実です。
「僕の気持ちをわかろうとしてくれた」「私のことを考えてくれてる」「話して良かった」という気持ちが、心の支えになるのです。

1年生に多い「お家が大好き!ママパパと離れたくない!」

初めての夏休みを体験した小学1年生に多いパターンです。入学してから一生懸命“小学生”をしてきた1学期を終えての夏休み。家で過ごす時間、家族との時間を思いっきり満喫したので、緊張感のある学校生活に戻りたくなくなってしまうのです。

「今日は○○が楽しみだね」「大丈夫だよ」と声をかけるくらいで「いってきます!」と登校できる子もいますが、新学期が始まった後も、入学直後のように「学校まで着いてきて!」「ママやパパとバイバイしたくない!」という子もいるでしょう。
そんなときに「1学期は一人で行けたんだから大丈夫でしょ!」と無理やり送り出してしまうと、「怒られた…」「ぼくは嫌われているのかな…」と感じる子もいるのです。
時間や手間がかかりますが、お子さんが強く求めているときには、入学したころのように学校付近まで付き添ってあげると、心の安定に近づくでしょう。

子どもの心を守るために、家族ができること

見逃さないで。子どものSOSサイン

新学期の登校にストレスを感じているお子さんは、何らかのサインを発していることが多いです。
そんなサインにはどんなものがあるのでしょうか。

 ・夏休み中、地域の祭りや公共施設など、学校の友だちに会いそうな場所を避けたがる

・友だちと過ごしているとき、電話しているとき、無理しているような表情をしている

・新学期の準備を避けようとする

・腹痛、頭痛、吐き気など原因不明の体調不良がある

親は積極的に声をかけよう

ぱっと見はいつも通りに元気に見えても、上記のようなサインが見られたり、ふとしたときに「なんかいつもと違うな…」と感じたりしたら、親から積極的に声をかけましょう。
「大丈夫?何かあった?」「いつでも話聞くからね」と声をかけることで、お子さんが悩みを話してくれることもあります。

 また、親に心配をかけたくないという思いで、悩んでいることを見せないようにする子もいます。
それでも「自分で解決できないときは抱え込まずに頼っていいんだよ」「私たちはあなたの味方だからね」と伝えましょう。悩みを話してくれなかったとしても、「私のこと大切に思ってくれているんだな」ということは伝わるはずです。

無理強いはさせないで

大人にとっては小さい悩みに見えても、成長している途中である子どもにとっては人生の全てともいえる大きな悩みかもしれません。お子さんの気持ちに共感し、受け止めながら話を聞いてあげましょう。

 お子さんがヘルプを出しているのなら無理はさせず、お子さんの心身の安全を第一に考えます。必要に応じて、医療機関や相談窓口などの専門機関に相談しましょう。

文部科学省では、「こどものSOSの相談窓口」を設けています。電話だけでなく、SNSでの相談もあります。各都道府県・自治体にも相談窓口がありますよ。

こどものSOSの相談窓口

新学期前後は、お子さんの変化に注目を!

夏休みを終えると、1年の中で最も長い2学期が始まります。

「やっと友だちに会える!」「みんなといると安心する」「給食食べたいな」とポジティブなお子さんがたくさんいる一方で、「あんまり行きたくないな」と登校に積極的に慣れないお子さんがいることを知っておきましょう。

新学期前後はいつも以上に、お子さんの変化に注目して見守っていきたいですね。

他にも、お子さんの個性やお子さんの置かれた状況によって、様々なサインがあります。
さらに詳しく知りたい方は、こちらもご覧ください。
※参照記事 厚生労働省
「こころもメンテしよう ~ご家族・教職員の皆さんへ~」

 

文・構成/yurinako

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