子どものいびきや歯ぎしりは何が原因?治療が必要?専門医が解説

就寝時の子どもの様子に気になることはありませんか? 起こる原因や、病院受診の目安を小児科医に教えてもらいました。

子どもが就寝中にするいびきや歯ぎしりは大丈夫?

大人の症状としてのイメージが強い”いびき”や”、ぎりぎりと音を立てる”歯ぎしり”を子どもが就寝中にしていたら、心配になりますよね。このまま様子を見ていいのでしょうか。

もしかしてなにかの病気のサイン?

それらが起こる原因や、病院受診の目安を、首都圏を中心に16拠点を運営する「キャップスクリニック」の柏の葉院の院長・塚越 隆司先生に教えてもらいました。

お話を伺ったのは

塚越隆司先生|医療法人社団ナイズ キャップスクリニック柏の葉 院長
立教大学卒業後、高校教諭として教育に携わる。僻地の医師不足を痛感したことを機に東海大学医学部に編入し、小児医療に従事。首都圏を中心に16拠点を運営するキャップスクリニックに勤務し、2019年8月からはキャップスクリニック柏の葉の院長を務める。

子どものいびきの原因は

歯ぎしりは歯や骨格に影響があるのでは?そもそも熟睡できていないのではないか?など、心配している方も多いのではないでしょうか。

早速、原因は何なのか、伺ってみました。

Q. 子どものいびきは、何が原因ですか?

塚越先生:いびきは『睡眠時無呼吸症候群』に代表されるような、睡眠呼吸障害のひとつです。

『睡眠時無呼吸症候群』とは

小児では2歳から6歳に『睡眠時無呼吸症候群』の発症ピークがあり、体型や体質、頭や顔の発達に伴って、思春期に2回目のピークがあるそうなので、思春期に差し掛かってからも注意が必要です。

原因①

小児は体格が小さく、上気道(鼻から咽頭を通り、喉頭まで)の断面積が小さいのに対し、口蓋扁桃やアデノイド(咽頭扁桃)などのリンパ組織が大きいために上気道を狭くなることがあり、それがいびきの原因に。

原因②

その他、筋肉の発達が未熟だったり、肥満によって脂肪組織が増えたりすれば上気道が狭くなりますし、アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎などの炎症や、脳性麻痺や染色体異常などの基礎疾患がある場合も含め、複数の要因が影響を与えています。

子どものいびきによる影響や治療は

子どものいびきは、どんな悪影響を及ぼすのか、どんなときは病院を受診すべきかを伺いました。

Q. いびきによる影響はありますか?

塚越先生:睡眠時の無呼吸や低酸素を引き起こす状態になると、不眠おねしょ日中の眠気注意力低下、多動、問題行動など様々な症状が生じる可能性が。

成長発達不全や学習障害、高血圧や心機能低下などが合併する可能性にも注意すべきです。

Q. 治療が必要なときは、どんな場合でしょうか?

塚越先生:夜間や日中の症状に加え、病院で『終夜ポリソムノグラフィー(夜間睡眠時の低酸素や脳波などを評価する検査)』で判定をします。その上で慎重に評価し、治療方法を選択します。

治療が必要かどうか見極めるポイント

塚越先生:親が治療が必要かどうかを見極めるのは難しいので、気になる症状がある場合には、耳鼻咽喉科や小児科などに相談してみましょう。

Q. どんな治療をするの?

塚越先生:症状の重い『睡眠呼吸障害』と診断され、ほかに健康面の問題がない場合は『アデノイド口蓋扁桃摘出術』という外科的な治療が第一選択になります。

肥満などの要因が強い場合は、睡眠中にマスクをつけて呼吸をサポートする治療が選択されることも。肥満に対しては減量を行うことも選択肢ですが、小児の場合、過度な減量は発育に支障を来す場合があるので、注意しながら進めます。

アレルギー性鼻炎などが一因と考えられる場合には点鼻薬や内服薬が有効なケースや、歯列矯正装置を用いて上顎のアーチを広げ、鼻腔の狭窄を改善する治療などもあるそう。

子どもの歯ぎしりの原因は

続いて、歯ぎしりについて。筆者の10歳の息子も、以前よく歯ぎしりをしていました。こちらも原因や影響が気になります。

Q. なぜ、歯ぎしりをするの?

塚越先生:なぜ寝ている間に歯ぎしりが生じてしまうか、現在でもはっきりとした原因は分かっていません

睡眠中の歯ぎしりは、咀嚼筋が異常に緊張し、上下の歯を無意識にこすり合わせたり、食いしばったり、カチカチと噛み合わせたりする動作です。

子どもの歯ぎしりによる影響は?治療は小児科or歯科?

我が子の様子を見ていると、実際に歯が削れているような気もします……。どのような影響があるのか、また、小児科と歯科ではどちらを受診すべきかも質問してみました。

Q. 歯ぎしりすることによる影響はありますか?

塚越先生:眠りが浅い段階のノンレム睡眠中に起こることが多く、中枢神経の活動や自律神経活動に影響されます。ストレス心理学的要因睡眠時無呼吸症候群の息詰まり、胃食道逆流症の胃酸逆流との関連が示唆されています。

歯ぎしりによって、歯が摩耗したり、折れたり、歯科治療で行った詰め物や差し歯などの破損に加え、顎関節症、頭痛、耳鳴りなどが生じることも。可能であればやめさせたほうが良いですが、歯ぎしりの原因がはっきりしていない部分もあるため、ご家庭の対応だけで完全にやめさせるのは難しいかもしれません。

Q. 治療が必要なのはどんなケースですか?

塚越先生:歯の摩耗や顎関節症、頭痛など、歯ぎしりによると考えられる症状が出ている場合には治療が必要になります。
決まった形の根治療法はないため、歯ぎしりによって生じる問題から身体を保護する対症療法が中心となります。まずは歯科を受診するのが良いでしょう。

Q. どんな治療をするの?

塚越先生:歯や顎関節への負荷を軽減する治療として、『スプリント療法』というマウスピースを装着する治療があります。

また、ストレスを軽減し、睡眠の質を改善するような認知行動療法や、短期的に抗不安薬や筋緊張緩和薬などを用いる薬物療法、側頭筋に弱い電気刺激を与えるバイオフィードバック療法などがあります。
しかし、未だ十分な有効性は確立されておらず、まずは歯や顎関節への負担を減らす治療が基本です。

心配な場合は、まずは病院で受診を!

いびきをするのには小児ならではの理由もあるようですが、不眠やおねしょ、日中の眠気や注意力低下など、影響が大きいことがわかり、驚きました。

また、歯ぎしりはなぜ生じるか、理由ははっきりしていないそうですが、顎関節症、頭痛、耳鳴りなどの症状が出ることもあるようで心配です。

就寝中の子どもの様子で心配な点があれば、まずはいびきなら耳鼻咽喉科や小児科、歯ぎしりなら歯科を受診することをおすすめ。そこで適切な診断を受け、その子にあった治療法を進められれば安心ですね。

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取材・文・構成/長南真理恵 ※子どもの写真はイメージです

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