アーサー王物語とは
アーサー王物語の名前を聞いた覚えがあっても、詳しい内容までは知らない人は多いでしょう。物語の特徴と、誕生の経緯を紹介します。
多くの作家・読者に愛された物語
アーサー王物語は「アーサー王」と「円卓の騎士」にまつわる、さまざまな伝説の総称です。アーサー王のモデルは、5~6世紀にかけてブリテン(現在のイギリス)に実在した英雄といわれています。6世紀の終わり頃から、英雄アーサーは偉大な王へと姿を変え、さまざまな人物の手で語り継がれていきました。
物語の中で、アーサー王の側近として登場するのが「円卓の騎士」です。王が用意した円卓に座れることは「選ばれたエリート」の証でした。
魔法使いや妖精、モンスターなどファンタジー要素もふんだんに盛り込まれたアーサー王の伝説は、後世の作家にも大きな影響を与えます。多くの人気作家がアーサー王物語を題材にした作品を残し、読者の心をつかみました。
主要な登場人物
個性的な人物がたくさん登場するのも、アーサー王物語の魅力です。ストーリーを理解するために欠かせない、主要人物を紹介します。
●アーサー王:岩に刺さった剣を抜き、ブリテン王に即位。円卓の騎士とともに周辺国を制圧する
●マーリン:変装と予言を得意とする魔法使い。幼いアーサー王を養育し、相談役となる
●グィネヴィア:アーサー王の妃。王の親友ランスロットと不倫する
●ヴィヴィアン:アーサー王に聖剣を渡す妖精
●モルガン:アーサー王の異父姉。王との間に子をもうける
●ランスロット(円卓の騎士):一騎当千の強さを誇る騎士。王妃グィネヴィアの不倫相手
●ケイ(円卓の騎士):アーサー王の義理の兄。さまざまな異能力を持つ
●ガウェイン(円卓の騎士):アーサー王の甥。日中は3倍の力を発揮するといわれる
●モードレッド(円卓の騎士):アーサー王とモルガンの子。後に父と戦う
アーサー王物語のあらすじ
アーサー王物語は時代や作者によって細かい部分が異なるものの、話の流れは共通しています。王の誕生・円卓の騎士の結成・王国の崩壊の三つに分けて、あらすじを見ていきましょう。
アーサー王の誕生からブリテン統一まで
アーサーは、ブリテン王「ユーサー・ペンドラコン」と人妻イグレーヌの間にできた不義の子です。生まれてすぐマーリンに預けられたため、自分が王子だと知らずに成長します。
やがてユーサーが亡くなると、騎士たちの間で後継者争いが起こります。マーリンは騎士たちに剣が刺さった大きな岩を見せ、「この剣を引き抜いた者が次の王だ」と告げました。
王位を狙う騎士たちがこぞって挑戦するものの、誰も剣を引き抜けません。そんなある日、偶然やってきたアーサーが、あっさりと剣を抜いてしまいます。
このときマーリンは、アーサーに自身の出生の秘密を打ち明けます。自分が王子だと知ったアーサーは、父の跡を継いでブリテン王となりました。
アーサー王の結婚と円卓の騎士の結成
大人になったアーサーは、美しい女性グィネヴィアに恋をします。予知能力のあるマーリンは、「不幸になるからこの女性はやめたほうがいい」とアーサーに忠告します。しかし、彼は聞き入れずにグィネヴィアを妃に迎えました。
グィネヴィアは嫁入り道具として、大きな円卓を持参します。アーサーは優れた騎士を集めて円卓に座らせ、ともに戦おうと結束を呼びかけました。
こうして「円卓の騎士」が誕生し、物語はランスロットやガウェインなど有名な騎士のエピソードへと続いていきます。
ランスロットの裏切りを契機とした王国の崩壊
アーサー王と円卓の騎士は周辺の敵を攻略し、国を発展させます。ところが、アーサーはある日、もっとも信頼していた騎士・ランスロットの裏切りを知ることになりました。
なんとランスロットは、アーサーの妻・グィネヴィアと不倫関係にあったのです。怒ったアーサーは、グィネヴィアを火あぶりの刑にかけようとします。
ランスロットは刑の直前にグィネヴィアを救い出し、国外へ逃亡していきました。ランスロット討伐のため、自ら出征したアーサーの元に、今度はモードレッドが反乱を起こしたとの知らせが届きます。
留守を預かっていたモードレッドは、アーサーが戦死したと嘘をつき、自分が王になったのです。アーサーは国へ引き返し、モードレッドと壮絶な戦いを繰り広げます。
なんとかモードレッドを倒したアーサーでしたが、自分も重傷を負ってしまいました。傷をいやすため、アーサーは妖精の国アヴァロンへ向かいます。王と多くの騎士を失った国は崩壊し、物語も幕を閉じます。
アーサー王物語を読むなら?
アーサー王物語をもっと深く知りたい人は、本を読んでみましょう。入門書としておすすめの本を3冊紹介します。
ジェイムズ・ノウルズ「アーサー王物語」
円卓の騎士のエピソードも含め、物語の全体像をざっくりと知りたい人には、ジェイムズ・ノウルズの「アーサー王物語」がおすすめです。
主要なストーリーが1巻にコンパクトにまとまっていて、飽きずに読めます。現代人には理解しにくい中世ヨーロッパの世界観も、美しい挿絵が見事に補完しています。
対象年齢が小学校高学年以上となっており、子どもと一緒に読めるのもポイントです。
ローズマリ・サトクリフ 「アーサー王シリーズ」
こちらはイギリスの歴史小説家ローズマリ・サトクリフによる、アーサー王物語のシリーズ作品です。カーネギー賞(優れた児童書に与えられる文学賞)作家でもあるサトクリフが、アーサー王の運命や王国の栄光、円卓の騎士のエピソードを、神秘的に描いています。
マーリンをはじめとする周辺人物の描写も魅力的で、どんどん引き込まれていきます。「アーサー王と円卓の騎士」「アーサー王と聖杯の物語」「アーサー王最後の戦い」の全3巻からなり、しっかりと読み込みたい人におすすめです。
小学館世界J文学館(大型本)
1冊で「アーサー王物語」をはじめとする125作品の電子書籍が読める「スペースをとらない」画期的な児童文学全集です。世界名作はほとんどを新訳で収載、現代児童文学、日本やアジアの古典、SF、詩まで含む幅広いセレクトに加え、日本ではじめて読める作品までが網羅されています。
物語世界をしっかり堪能してみて
アーサー王物語に登場する人物は、それぞれ個性的でときには弱い部分もさらけだします。エリートとされる円卓の騎士たちでさえ、不倫や裏切りに走るほどです。
人間味あふれるキャラクターと、ドラマでも見ているかのような衝撃的なストーリーが、長く人々の心をつかんでいるのかもしれません。
中世ヨーロッパで語り継がれたファンタジーの世界を、この機会にじっくりと味わってみてはいかがでしょうか。
あなたにはこちらもおすすめ
構成・文/HugKum編集部