「花曇り」とはどんな空模様? 季節はいつ? 使い方や類語・関連語もチェック

花曇りはどことなく風情を感じる言葉ですが、具体的にどのような空模様なのかを知らない人も多いでしょう。「花」が何の花を指すのかも、気になるポイントです。花曇りが見られる季節や天気の特徴、主な使い方を解説します。

花曇りとは

「花曇り(はなぐもり)」は、いつの時期に使われる言葉なのでしょうか。花曇りと呼ばれるときの、空模様を見ていきましょう。

桜の季節の曇り空を指す言葉

花曇りとは、桜が開花する3月末から4月中旬にかけて見られる曇り空のことです。この時期は晴天が長続きせず、雲の広がる日が多く見られます。

なかでも薄い雲が空全体を覆い、わずかに日差しをさえぎる程度の明るい曇り空を、花曇りと呼びます。花曇りの日は雲を透かしてぼんやりと光が感じられるため、厚い雲に覆われたときのような、暗くどんよりとした雰囲気はありません。

花曇りはどんな場面で使う?

花曇りはニュースや時候のあいさつ、俳句の季語などによく使われる言葉です。例文を交えながら、主な使い方を紹介します。

主な使い方を例文で紹介

花曇りは気象用語ではありませんが、天気予報の解説で「今日はあいにくの花曇りです」のように使われることがあります。青空の下で桜を見物したい人にとっては、まさに「あいにく」な天気といえるでしょう。

そのほか、季節を表す言葉として、次のように手紙やビジネスメールのあいさつ文にもよく登場します。

●手紙の結びのあいさつ:「花曇りの季節、まだ肌寒い日が続きますが、お身体にはご慈愛ください」
●ビジネスメールの冒頭:「花曇りの昨今ですが、益々ご健勝のほどお喜び申し上げます」

「花曇りの街はいつもより風情がある」「花曇りの午後は、なぜか眠くなります」など、街や人の様子を伝えるときにも使える便利な言葉です。

俳句の季語としても使われる

花曇りは、俳句の「季語(きご)」でもあります。季語とは俳句の約束事の一つで、春夏秋冬及び新年の、五つの季節を連想させる言葉です。俳句を作るときは、五七五の中に必ず季語を入れることになっています。桜の咲く季節を表す「花曇り」は春の季語です。

例えば、正岡子規の有名な俳句「柿くへば 鐘が鳴るなり 法隆寺」では、「柿」が季語として使われています。柿は秋の果物ですから、秋のワンシーンを表現した句だということがイメージできるのです。

「花曇り」を使った有名な俳句

花曇りを季語に使った俳句は数多くあります。特に有名な俳句と作者を見てみましょう。

●「花ぐもり 朧(おぼろ)につづく ゆふべかな」:与謝蕪村(よさぶそん)
●「花曇 尾の上の鐘の 響かな」:夏目漱石(なつめそうせき)
●「もろともに うれひに酌むや 花ぐもり」: 飯田蛇笏(いいだだこつ)

与謝蕪村は江戸時代中期の俳人で、画家としても知られています。夏目漱石は明治時代の文豪で、東京帝国大学の予備課程で同期の正岡子規と出会い、俳人としても活動しました。

飯田蛇笏は大正から昭和にかけて活躍した俳人です。故郷の山梨を拠点とした蛇笏は、山国の自然や暮らしぶりを表現した作品を多く残しました。

春に関する花曇りの類語・関連語

花曇りのほかにも、春に関する言葉はいくつかあります。花曇りに近い言葉・関連する言葉を紹介します。

花曇りの別称「養花天」

「養花天(ようかてん)」は、花曇りと同じ意味を持つ季語です。春の薄曇りが、なぜ「花を養う天気」といわれるのでしょうか。

春の天気は変わりやすく、日差しが強く暑い日もあれば、急に冷え込む日もあります。いずれも、桜が花を咲かせるには厳しい天候といえるでしょう。

一方、薄い雲がかかる花曇りの天気は、桜の花を長持ちさせてくれます。このため、花曇りの別称「養花天」がうまれたといわれています。

急な冷え込み「花冷え」

「花冷え」とは、桜の花が咲き始めるほどの温暖な時期に突然冷え込みが強まり、冬に逆戻りしたように感じる様子を表す言葉です。

この時期の日本の上空では、冬の冷たい空気と春の暖かい空気がせめぎあっています。このため、暖かいと思っていたのに、突然気温が下がって驚くケースはよくあります。

春は冬に比べて薄着で出かけることが多く、花冷えのせいで風邪をひくおそれもあり注意が必要です。花見に出かけるときには、念のため寒さ対策も万全にしておくとよいでしょう。

 

春の訪れを示す「鳥雲に入る」

「鳥雲に入る(とりくもにいる)」は、春になって北方へ帰るために飛び立った渡り鳥の姿が、雲間に見えなくなる様子を指す言葉です。花曇りと同様に俳句の春の訪れを表す季語として使われ、「鳥雲に」と略されることもあります。

似た言葉に、「鳥曇(とりぐもり)」という春の季語もあります。「鳥雲に入る」や「鳥曇」を使った有名な俳句は以下の通りです。

●鳥雲に 入りて松見る 渚かな:白雄(しらお・江戸時代中期の俳人)
●ゆく春に 佐渡や越後の 鳥曇り:許六(きょりく・江戸時代前期~中期の俳人)

季節に関する美しい表現を学ぼう

花曇りは明るい曇り空を表すだけでなく、桜の花が咲く季節を象徴する言葉として、古くから使われてきました。四季の変化がはっきりしている日本には、ほかにも季節に関する美しい表現がたくさんあります。

この機会に、印象に残る季節表現や俳句の季語を子どもと一緒に探してみると、よい勉強になるでしょう。

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構成・文/HugKum編集部

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