国産の乳児用液体ミルクが販売スタート!海外では当たり前!粉ミルクと違うメリットは

今年3月上旬に江崎グリコが日本で初めての乳児用液体ミルク「アイクレオ 赤ちゃんミルク」を販売スタート。続いて4月末には、明治も「ほほえみ らくらくミルク」を発売すると発表しました。「液体ミルク」と「粉ミルク」は何が違うのでしょうか? どうやって飲ませたらいいのでしょうか?

海外では浸透している液体ミルク。待望の国内販売がスタート!

この春、日本で初めて製造、販売されることになった「液体ミルク」。私たち日本人にとっては馴染みのない商品ですが、実は欧米では当たり前のように使われているもの。とくにフィンランドでは9割を超える割合で「液体ミルク」が使われているそうです。

イギリス在住のママに取材したところ、ミルクメーカーのほとんどが「粉ミルク」と「液体ミルク」の両方を製造販売していて、スーパーや薬局などのミルク売り場にはほぼ両方が販売されており、「液体ミルク」はすっかり生活の中に定着しているそうです。

イギリスのスーパーの棚には「液体ミルク」がずらり

震災を機に日本でも「液体ミルク」の製造・販売を許可

赤ちゃんにとって、母乳は最良の栄養ですが、母乳が足りなかったり、病気や仕事などの事情があるなどで、母乳をあげられないこともあります。ミルクはそんな時に母乳と同等の栄養を赤ちゃんに与えられるもの。乳児の発育に必要な栄養条件を満たしていることが認められ、国で許可されたミルクには、「特別用途食品」のマークが表示されています。実は、日本では「液体ミルク」に対する法律がなかったため、諸外国に比べて商品化が遅れていました。しかし、2011年の東日本大震災、2016年の熊本地震で、海外から救援物資として「液体ミルク」が寄贈されたことをきっかけに、その利点が注目され、日本でも販売許可を求める声が高まり、昨年夏に製造・販売が許可されたという経緯があります。

特別用途食品のマーク。パッケージにこのマークがあるかを確認しよう

「液体ミルク」のメリットは?どう使い分ける?

お湯で溶いて調乳する必要がなく、常温で授乳できる

これまで販売されていた「粉ミルク」は、粉状やキューブタイプのもので、70度以上のお湯で溶かして人肌に冷ましてから飲ませます。いっぽう「液体ミルク」は、調乳の手間がなく、あたため不要でそのまま授乳できます。海外の「液体ミルク」は、哺乳びんに似たボトルに液体ミルクが入っていて、飲み口のニプル部分をつけるだけで飲ませられるものが多いのですが、今回、日本で販売された2社の「液体ミルク」は、いずれも哺乳びんに移して飲ませるタイプ。栄養組成は調乳後の「粉ミルク」と同じです。

海外在住ママに聞く「液体ミルク」を使うメリット

お湯なしで飲ませられる「液体ミルク」は。災害時の備蓄用に使うものだと思われがちですが、日常で使うことのメリットもあります。海外在住のママにどんな時に「液体ミルク」を使っているかを聞くと、こんなシーンがあげられました。

・お出かけの時に使う。粉ミルクやお湯を持ち歩く必要がなくなる。

・パパや人に預ける時に、調乳の手間がないからお願いしやすい。

・日中は粉ミルク、夜は液体ミルク。夜中に起きだして調乳する必要がなくラク。

・離乳食を作る時に便利。お湯で溶く必要がなくすぐ使える。

家では「粉ミルク」、外出先では「液体ミルク」と使い分け

この使い分け方は、まさにひと昔前の「布おむつ」と「紙おむつ」のそれに一致します。布に比べてコスト面で割高だった「紙おむつ」。当時のママたちは、日中、家にいる時には「布おむつ」を使うけれど、お出かけの時や夜間には「紙おむつ」にして使い分けるケースが多かったものです。「紙おむつ」の便利さがすっかり浸透した現在は、「紙おむつ」だけで過ごすご家庭がほとんど。「布おむつ」を見たこともないママも多いでしょう。

日本で販売された液体ミルクの種類

江崎グリコ アイクレオ 赤ちゃんミルク

江崎グリコ アイクレオ 赤ちゃんミルク

明治ほほえみ らくらくミルク

明治 明治ほほえみ らくらくミルク

 

今回、江崎グリコが販売する液体ミルクは紙パック入り125mlで200円、明治の缶入りミルクが240mlで215円(いずれも税別、メーカー希望小売価格)です。単純にコスト面でだけを考えると「液体ミルク」は「粉ミルク」の3〜4倍の価格。しかも、あけたら飲みきらないといけないので、月齢によっては1本を飲みきれない可能性があります。逆に、2本開けないと足りないことも考えられ、1回の授乳にかかるコストは、かなり高い印象。家では「粉ミルク」、外出先では「液体ミルク」というように使い分けるのが賢い使い方となるでしょう。

混合授乳ならば、かえって「液体ミルク」が得になることも

しかし、人によっては「液体ミルク」の方がお得だとの声も。オーストラリア在住で母乳と混合で育てているママによると「基本は母乳をあげて、足りない分だけミルクをあげるので、ミルクをそんなに消費しません。粉ミルクの缶をあけても賞味期限内に全部使い切ることができず捨てるパターンが。その点、液体ミルクは1回分で使い切りなので、ミルクが無駄になりません」とのこと。ミルクを使う頻度によって、どちらを使うのがいいのか、考えてみてもよさそうです。

あたためて飲ませてもいいの?使い時の注意点

基本は常温で。人肌にあたためて飲ませるのもOK

ところで、もうひとつ気になるのが「液体ミルクは常温で飲ませる」という点。常温保存ができるのは便利でいいですが、飲ませる時も常温でいいの?は気になるところ。ふだん人肌にしたミルクを飲んでいた赤ちゃんが、冷たいミルクを嫌がることや、飲んでおなかを壊さないのかも心配です。しかし、その点も海外在住の日本人ママに聞いてみると「常温で飲んでも赤ちゃんは大丈夫」とのこと。もし、寒い季節で冷たさが気になるようなら「パックごと湯煎で温めたり、しばらく手で持って温めるなどして、人肌にしてあげることも」あるそう(温め方の注意は各メーカーの説明書をご確認ください)。あたためてあげても問題ないということがわかるだけでも安心しますね。

開封したらすぐ飲む。飲み残しは捨てる

前述しましたが、液体ミルクは開封したら、すぐに使用し、飲み残しは与えないというのが注意点。常温保存が可能ですが、直射日光、火の近く、夏場の車中などを避けて保存しましょう。保存期間は商品によって違います。今回発売された2社でいうと、江崎グリコの紙パック入りミルクは約6か月、明治の缶入りミルクは約1年間です。各商品の賞味期限を確認し、万一、色や匂い、味に異常がある場合は使用しないでください。また、乳アレルギーのあるお子さんは特にですが、かかりつけ医に相談してから使いましょう。乳アレルギー対応の液体ミルクの販売も今後に期待したいです。

災害用に備蓄するときには、使い捨て哺乳瓶も一緒に

今回発売された2商品は、いずれも哺乳びんに移して飲ませるタイプでしたので、哺乳びんの消毒はこれまで同様に必要です。防災グッズとして準備する際には滅菌済みの使い捨て哺乳瓶などと一緒に用意することをおすすめします。そうしないと、ミルクはあっても赤ちゃんに飲ませれられない心配があります。

現在、「液体ミルク」発売を発表したのは、2社だけですが、今後、国内の液体ミルクの種類も増えていくかもしれません。海外のようにニプルが直接つけられるタイプなら、より使い勝手もよくなりそうだなと思いますが、どんな商品が開発されているのか。各メーカーの今後の動きにも注目です。

構成/江頭恵子

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