道具で発達を応援するネットのお店tobiracoの店主が、発達障害の子の「困り感」を解決する道具をご紹介します。
姿勢がグニャッとするのは、ヤル気がないわけではありません。
発達凸凹の子の中では、体幹の弱い子は珍しくありません。「背筋をピンと伸ばしなさい」は、体幹の弱い子にとって苦痛以外の何ものでもありません。ダラッとしたり、グニャッとしたり、脚を投げ出したりして座っていたとしても、ヤル気がなくてそうしている訳ではないんです。背筋を伸ばして座ることが難しいだけなんです。この点を学校の先生にもご理解して頂きたいところ。
「ザフ システム スクール」は、体幹が弱くてもラクな姿勢で座れるよう設計されたシート付きの椅子です。写真の子どもは、5分と座っていることができずに、すぐに椅子から離れて落ち着きがありませんでした。ところが椅子を「ザフ システム スクール」に変えたところ、座って宿題を最後までできたと喜んでいたそうです。この撮影のときも、写真のような姿勢で何の苦痛もなく読書をすることができました。
「背中をピンと伸ばして座る」を強要しない。姿勢をラクに保てる椅子を
体幹が特別弱くなくても、そもそも背中をピンとさせて長時間座る姿勢は、骨盤に無理をさせているんです。座ったとき骨盤は、斜め後ろに傾くのが自然。
「ザフ システム スクール」は、座面の中央がわずかに盛り上がり(矢印の部分)、シートが斜め後ろに傾く骨盤を支える設計です。お尻がせり出すこともありません。
「背筋を伸ばして座る」姿勢は、立ったときと同じように骨盤を無理に立てる状態をキープするということなのです。斜めに傾こうとする骨盤を、筋肉の力で引っ張り上げる。これが背中をピンとさせて座っている状態。体幹の弱い子、筋肉の力のない子にとっては、負担が大き過ぎます、というか無理です。
ザフ システム スクール
素材 シート:ポリエステル100%(ナノ撥水素材—水圧で汚れが落ちる強力撥水力) インナークッション:ウレタンフォーム パッド:ウレタンフォーム、アルミパイプ 椅子フレーム:鋼管(粉体塗装)、繊維板・合板
サイズ シート:370×750mm 体幹パッド:高さ180×奥行170mm 外転防止パッド:高さ180×奥行170mm 椅子フレーム Sサイズ:幅360×奥行360×座面高260〜340 mm 適応身長:105〜135cm Lサイズ:幅360×奥行360×座面高300〜460 mm 適応身長:120〜180cm
価格 基本セット:32,000円 外転防止パッド(両脚サイドのパッド)付:39,000円(ともに税・配送料別) 発売元・問い合わせ先 (株)tobiraco
多動気味の子には、お尻のせり出しや椅子のガタガタ防止の工夫を
学校の椅子って、なんであんなにツルツルなんでしょうね。座面と背もたれの角度は90度。そこに45分間も、同じ姿勢で座っているのは大変です。じっとしているのが苦手な多動気味の子なら尚更です。
座面に座布団を敷いても座布団ごと、だんだんとお尻が前にせり出して、姿勢が崩れていきます。
座布団の裏に滑り止めを接着
写真のようなメッシュ滑り止めシートはホームセンターや手芸店などで販売されています。座布団のサイズに合わせてカットして、貼り合わせたり、縫い合わせたりするだけで滑りにくい座布団になります。
学校で使う場合は、ゴムのシートを使っていることが他の子に分からないように、目立たない色での裏面貼り付けがおすすめです。シリコンの滑り出し防止シートもありますが、効果はともかく目立ち過ぎて子どもは嫌がると思いますよ。それとお値段高めです。
写真は参考商品。ホームセンターなどで販売されている滑り止めシートを座布団のサイズに合わせて切って接着剤で貼り合わせています。
椅子のガタガタ解消!見た目もかわいい
椅子に座っても、じっとしていられない子がいます。決して、そうしようとしているのではなく体が自然と動いてしまうんです。それによって椅子がガタガタと揺れ、その音と揺れが気になって、さらにガタガタ。椅子にばかり気を取られてしまうと、勉強に集中できませんよね。
ガタガタ防止には、椅子の脚の固定を。写真の「豆いすボール」は、赤ちゃんの椅子用ですが、一般の椅子でも使えます。よく、学校ではテニスボールを使ったりしていますが、あれはすぐにボロボロになってしまいます。豆いすボールはデザインも可愛いのでおすすめです。
豆いすボール(4個セット)
素材 発泡ゴム サイズ 直径65mm 穴径20mm 価格1,000円(税別)
発売元・問い合わせ 株式会社カーボーイ http://www.car-boy.co.jp/ tel.0475-55-7820
座ると、そわそわ、むずむず。重さで安心できる“ひざかけ”
コタツに入ると脚が消えたように感じるというASD(自閉スペクトラム症)の女性を何人か知っています。視界から消えたものは、自分の体であっても「ない」と感じてしまうのだとか。自分の体のイメージ(ボディーイメージ)をうまく掴かめないため、このように感じてしまうようです。ボディーイメージがないと、自分とモノとの距離感が掴かめずにモノにぶつかったり、階段から足を踏み外したりしてしまいます。
環境が許されないなら、せめて、その子にとってラクに座れる工夫をしてあげたい
椅子に長時間座っていると、下半身がそわそわ、むずむずして落ち着かないというのも、やはりASDの人(子)に多いようです。脚が視界から消えるのと関係があるのかないのか、よく分かりません。でも、そわそわ、むずむずは重いものを載せると落ち着き、安心できるそうです。脚全体を覆うようなものだと、なお安心できると、当事者の女性に聞きました。
「3キロの安心ひざかけ」は、座ると落ち着かなくなるという、子どものためのひざかけです。大人でも使えるたっぷりサイズ。電車、劇場、歯医者さんなど病院でも使えるように畳んで持ち運べます。
一定の時間、同じ姿勢で座るのが苦痛の発達凸凹の子たちは、まだまだ理解されてはいないように思います。じっと座っているのが大変なら、寝転んでいてもいいと思うのですが、それを許してくれる学校はほとんどないでしょうね。それなら、せめてその子にとってラクに座っていられる工夫を。
3キロの安心ひざかけ
<ひざかけ>素材 コットン100% 中材(ペレット):ポリプロピレン100% サイズ:49×81cm 厚さ:最大2cm 重さ:約3kg 家庭で洗濯できます。乾燥機は不可。日本製
<手提げ>素材 本体:コットン100% 持ち手:ポリプロピレン サイズ 袋部分:縦23×幅46×奥行き最大14cm 持ち手:縦24×幅3cm 家庭で洗濯できます。日本製
価格 13,888円(税別) 発売元・問い合わせ先 (株)tobiraco
発達障害の「困った」、道具であっさり解決しましょう。
次回も素敵な道具たちをご紹介します。
『発達障害の子のためのすごい道具』(安部博志・著 tobiraco・編集)小学館
トビラコ店主
元子育て雑誌編集者。編集者時代に出会った特別支援学校の先生と現場で効果のあった教材を商品化。「tobiraco」というネットショップで販売。ヒット商品は「きいて はなして はなして きいて トーキングゲーム」「見る目をかえる 自分をはげますかえるカード」。「療育アロマ」も快走中。