池上彰さんに聞いた!なぜ戦争はなくならないの?どうしたら平和は守れるの?

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フリージャーナリストの池上彰さんは、難しいニュースをわかりやすく伝える解説で、幅広い世代に人気です。新刊『池上彰のこれからの小学生に必要な教養』では、小学生に知っておいてもらいたい5つの分野をレクチャー。今回は「歴史」分野から「戦争」について教えていただきます。8月15日は終戦記念日。お子さんと戦争と平和について考えるきっかけにしてください。

人間の歴史は戦争と深く関わっています

国ができると自分たちの領土を守ろうとする争いが起きるようになりました

歴史を学ぶと、必ず触れられるのが「戦争」です。2022年2月に勃発したロシアとウクライナの戦争は、世界を巻き込みながらいまだ続いています。戦争は人々の気持ちや国の形を変えたり、世の中の新たなしくみを生んだりしている。人間の歴史は戦争の歴史でもある、と私は戦争について考えます。

石器時代からあった「戦争」

 では、いったい何年前から戦争は起こっているのでしょう? その歴史は1万2000年以上前の石器時代さかのぼります戦争によるものだと思われる遺骨が発見されているのです。過去の戦争を研究すれば未来の戦争を防ぐ方法が見つかるかもしれない、戦争の歴史から何を学ぶかが大切だと私は思います

 正しい戦争ってあるの?

戦争はなぜ起きるのか? それは「自分たちの国を守る」という気持ちが根底にあるからですそして戦争に踏み切るのは誰か? それは、その国のリーダーしかし実際の戦闘にリーダーは参加しません。戦うのは兵士たちです。戦争とは所詮人と人との殺し合い」。自分が殺されないために相手を殺すこと、それが兵士たちの役割なんです。

 誰だって人を殺すのはいやなものです。だからリーダーたちは、「自分たちが勝てば世界もっとよくなる」「みんなが幸せになれる」「祖国のために戦って死ぬのは美しいことだ」と美しい言葉を並べ戦争を正当化し、兵士たちの気持ちを奮い立たせます。

「人を殺す」ことは「自分を殺す」こと

 人を撃ち殺しちゃった!私が!私と関係のない人を殺しただ!この人のこと全く何も知らないのに、殺しちゃった」──第二次世界大戦で初めて人を殺したソビエト(今のロシア)の女性兵士の言葉す。

兵士たちの多くは敵を殺し、味方殺されているうちに、人を殺すことをなんとも思わなくなり、人間としての感情が失われます。「人を殺す」ことは「自分を殺す」こと──戦争の現実とはそういうものです正しい戦争なんてないのです。

 やってもいい戦争ってあるの?

さて、民間人の死者を多数出した第二次世界大戦その反省から1945年「国際連合(国連生まれました。設立の根拠となる条約「国連憲章戦争を禁じています。

しかし、なぜ、いまなお戦争が世界各地で起こっているのでしょう? それは戦争を正当化できる方法があるからです。

ロシアとウクライナの戦争は自国を守る「自衛の戦い」

 ほかの国から攻められたときに自国を守る自衛の戦い。これに関して、国連では否定されていません。そして現在起きているロシアとウクライナの戦争も、この「自衛」が口実なっていす。

 2022年2月24日、ロシアがウクライナ攻め込んだことから勃発した今回の戦争。攻撃されたウクライナは国を守るために、つまり自衛のために戦っています。一方、ロシアもこの戦いを「自衛」の一つだと訴えています。攻め込んだ地域の歴史を紐解くと、これまで何度も紛争が起こっおり、そこに住んで助けを求めているロシア国籍の人々を守るために戦っていると主張しているのです。

 そして、ロシアは今回の戦いを「戦争」ではなく、「軍事行動」だと言いますつまり「戦争は国際社会では禁じられていると知っているからです。禁止されている戦争が、実際には世界各地で続いているのはこうしたからくりがあるからなのです。

 どうしたら戦争をなくすことができるの?

今の日本の平和は戦争の歴史の上に成り立っている

現在、日本は平和な国です。しかし歴史的に見るとたくさんの戦争を経験してきた国です。

 750年前には元(今のモンゴル)が攻め込んできたり、飛鳥時代や豊臣秀吉の時代には朝鮮半島に軍隊を送ったりもしています。江戸時代末期の薩英戦争、明治時代の日清・日露戦争、そして昭和の日中戦争、太平洋戦争……1945年の第二次世界大戦の敗戦から78年。

今の日本の平和は戦争の歴史の上に成り立っているです

 日本には二度と戦争をしないという「日本国憲法」第9条があります。ただ、ウクライナと戦争中のロシア、ここ数年ミサイルを多数放っている北朝鮮、そして台湾との統一を目指中国など、隣接する国々ではいろいろな動きが出ています。

 どうすれば平和を守れるのか? 憲法9条を変えて戦争できる国れば平和は保てるのか? 

一人ひとりが自分ごととして考えられることが大事だと思います。

『池上彰のこれからの小学生に必要な教養』(主婦の友社)

小学生に知ってほしい「教養」を5つの分野(お金・政治・歴史・SDGs・ネット)に分けて紹介されています。見開きごとに素朴な疑問をピックアップ。イラストによるやさしい図解とともに、池上さんが解説してくれます。

教えてくれたのは

池上 彰さん|フリージャーナリスト
1950年長野生まれ。1973年にNHK入局。1994年から「週刊こどもニュース」のお父さん役を務め、お茶の間で人気に。2005年よりフリージャーナリストとして活動。児童書の監修も多く、著書は累計750万部を超えている

構成/tsurumaki イラスト/TOA(『池上彰のこれからの小学生に必要な教養』より)

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