「クロマニョン人」の特徴とは。今の人類とあまり変わらないって本当?【人類の進化の歴史を学ぼう】

「クロマニョン人」は、現代の人類とも深い関係を持っています。進化の歴史について興味があるなら、詳しく知っておいて損はありません。発見された経緯や現代の地球で暮らす人々とのつながりについて、理解を深めましょう。
<上画像:クロマニョン人が使用していたとされる石器コレクション(フランス・トゥールーズ)Didier Descouens , Wikimedia Commons>

クロマニョン人って何?

クロマニョン人は人類の進化を学んでいるときに、よく登場する名前です。言葉の意味や発見された時期、地域などを確認していきましょう。

フランスで発見された化石原生人類

クロマニョン人は、1868年にフランス南西部クロマニョンの岩陰遺跡での鉄道工事中に発見された化石原生人類です。工事の作業員が偶然、洞穴の中で人骨の化石を5体見つけ、その地名にちなんで名づけられました。

人骨以外に壁画や道具なども見つかっており、高度な文明を築いていたことが分かっています。彼らが暮らしていた時期には諸説あり、4万~1万年前ごろとされています。

クロマニョン人が属するのは「ホモ・サピエンス」です。ホモ・サピエンスとは、現在地球上に住んでいる私たちとその祖先を指す「現生人類(新人)」の学名です。

クロマニョン人の特徴

クロマニョン人の頭骨図 Wikimedia Commons(PD)

クロマニョン人の見た目や生活は、現代人に近いことが分かっています。具体的に、どのような特徴があるのか見ていきましょう。

大柄な骨格

クロマニョン人は、現代人とほぼ変わらない見た目だったとされます。脳の容量も現代人とほぼ同じで、現在の人類の直系の子孫だと考えられています。

発掘された男性の頭骨から推定された身長は、約180cmと大柄です。筋骨がよく発達し、かなり体格がよかったことが明らかになっています。

歯は小さく、顎はあまり突出していません。額の後退や目の上の隆起などは見られず、旧人類とは違った容貌をしていることが特徴です。

芸術に親しむ

クロマニョン人は色彩豊かな壁画や、繊細な彫刻を作っていました。彼らが残した作品は、ヨーロッパ各地で見つかっています。

中でも、フランスのモンティニャックに現存し、世界遺産に登録されている「ラスコーの壁画」が有名です。ラスコー洞窟では、躍動感あふれる動物たちの彩色画が多数発見されています。

ラスコーの洞窟の壁画

彼らは動物の骨・牙・角などを利用して、動物の姿を模した彫刻作品も作っていました。バイソンが体を舐める動きや、繊細な毛並みの1本1本を再現したものも見つかっていて、高度な観察眼と手先の器用さを持っていたことが分かります。

また、身近な道具類からも、芸術性の高さがうかがえます。狩猟道具である投槍器などにも動物を彫刻し、装飾にこだわっていました。

狩猟採集と文化的な生活

クロマニョン人の食事は、主に狩猟採集によって賄われていました。農耕が始まるのはまだ先のことで、トナカイやバイソン、ウマなどの動物を狩って生活していたと考えられています。

ただ食べるためだけでなく、狩猟した動物たちの骨やトナカイの角、貝殻などを利用したアクセサリーや道具も作っていました。骨製の針を使って裁縫などもしていたとされ、文化的な生活を送っていたことが分かります。

クロマニョン人以前の人類とは?

人類の進化をたどるには、クロマニョン人が誕生する以前の人類について理解を深めておく必要があります。クロマニョン人を含むホモ・サピエンスよりも前に生きたとされる人類を見ていきましょう。

サヘラントロプス・チャデンシス

サヘラントロプス・チャデンシスは約700万年前に出現し、現存する中では最も古い人類ではないかとされます。アフリカのチャド共和国で頭骨が発見され、化石は「トゥーマイ」の愛称で知られています。

サヘラントロプス・チャデンシスの頭蓋骨化石「トゥーマイ」 Didier Descouens , Wikimedia Commons

過去に人類最古といわれていたのは、400万年前の地層で発見された「アウストラロピテクス・アファレンシス」です。類人猿とヒト両方の特徴を持っており、2本足で直立歩行していました。

類人猿とはオランウータンやチンパンジーのことです。アウストラロピテクスは「南の猿」という意味で、アフリカから多数の化石が見つかっています。

アウストラロピテクス・アファレンシス「ルーシー」の骨格[メキシコシティ国立考古学博物館]Wikimedia Commons(PD)

ジャワ原人

ジャワ原人はインドネシアのジャワ島にある、ソロ川の近くで発見されました。原人は猿人よりも新しく、旧人類よりも古い人類のことです。

現代人の直系の祖先というわけではなく、独自の進化をした末に絶滅したことが分かっています。

ジャワ原人の頭蓋骨の復元 Immanuel Giel, Wikimedia Commons(PD)

「ホモ・エレクトス」の中の、ジャワ島に至ったグループがジャワ原人です。ホモ・エレクトスとは、アフリカ・ヨーロッパ・アジアなどで暮らしていた原人を指し、北京で見つかったものは「北京原人」と呼ばれています。

現代人と似た姿ですが、顔つきは類人猿の特徴が見られ、集団で生活し定住地を持っていました。現代人と同じように、火を使って生活していたことが分かっています。

ネアンデルタール人

ネアンデルタール人はドイツのネアンデル谷で発見され、地名にちなんで名づけられました。学名は「ホモ・ネアンデルターレンシス」です。

ネアンデルタール人の頭骨 Luna04, Wikimedia Commons

目のくぼみの上が隆起し、頭蓋骨の形が平たいなどの原始的な特徴を持ちます。脳の容量は現代人と比較しても大きめであり、背は約160cmとそれほど高くないものの、がっしりとした体格をしていました。

約4万年前に寒さで絶滅したと考えられており、ホモ・サピエンスと同じ時代に存在しています。現生人類は、ネアンデルタール人の遺伝子を受け継いでいることが判明しています。

現代人に似たクロマニョン人に興味を持とう

クロマニョン人は、私たちと同じホモ・サピエンスに属する人類です。現代のヨーロッパで暮らす人々と非常に似た風貌をしており、彼らの祖先の一部だとされています。

優れた芸術性を持ち、装飾品などにこだわっていることからも、複雑な思考力を持っていたことが明らかです。ヨーロッパだけでなく世界中に広がっていき、進化をしていきました。

今後も遺伝子の研究が進めば、過去の人類についてもっとさまざまなことが明らかになるかもしれません。

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構成・文/HugKum編集部

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