葛餅とは
奈良県吉野地域の伝統的な食べ物「葛餅」。葛粉、水、砂糖を鍋で沸かし、粘りと透明感が出たところで火を止め、粗熱をとったものが「葛餅」です。
場所・エリア
葛餅の伝承地域といわれているのは、奈良県の吉野地域である宇陀市や吉野町です。
いつ、どんなときに食べる?
葛餅は、なめらかな口当たりと透明感があることから、涼感を誘います。そのことから夏に多く食べられるお菓子です。
歴史
葛の活用は、古来は漢方薬(葛根湯)や米麦の代用として使われていました。江戸時代中期以降になってから、葛粉を葛餅として食すようになり、関西を中心にお餅の原料として葛を使うことが広まりました。
なお、葛は古代から身近にある植物で、『万葉集』にも詠まれています。
由来、言い伝え
葛餅に使われる「葛」という名前の由来は、奈良県の吉野地方に住んでいた山の民から。この山の民は「国栖人(くずびと)」と呼ばれ、葛から葛粉をつくって売っていたことから「くず」の名がつけられたといわれています。
葛餅の特徴
葛餅の味わいや食感、栄養価などの特徴を解説していきましょう。
特徴1:涼やかな見た目に、ぷるん、もっちりとした食感
葛餅の特徴は、その涼やかな見た目です。透き通るような透明感で美しさがあります。また、口にふくんだときのぷるんとした食感、もっちりとした弾力も魅力です。
特徴2:伝統的な製法「吉野ざらし」が吉野本葛をつくる
奈良県の吉野地域やその周辺でつくられる葛餅には、吉野本葛が使われています。この吉野本葛は、伝統的な製法「吉野ざらし」で作られます。
吉野ざらしとは、葛の根をすり潰し、水で葛でんぷんをもみ出して、何度も水にさらす工程のことです。これをすることで、真っ白な吉野本葛がつくられます。
特徴3:「吉野本葛」を使った葛餅は貴重なお菓子
葛餅に使われる葛には、「吉野本葛」や「吉野葛」があります。両者の違いは、葛でんぷんの使用量です。
吉野本葛は葛の根から採取した葛でんぷん100%のものを指します。また、吉野地方とその周辺地域で製造または加工した葛でんぷんを「吉野本葛」としています。一方、吉野葛は、葛でんぷんの使用が50%超のものです。
現在では、葛の根を採取する職人の担い手が減少傾向にあり、生産量が減っています。よって、吉野本葛を使った葛餅は貴重なお菓子となります。
特徴4:ほかのもち菓子と比較して、低カロリー
葛餅の原料は、葛粉と糖類のみです。カロリーはおよそ100kcal以下で、豆大福やおはぎ、きなこもちなどに比べても低く、ダイエット中でもおすすめのおやつです。また、腹持ちもいいので、小腹が空いたときに食べれば満足感があります。
特徴5:さまざまな効果が期待できるといわれるイソフラボンが豊富
葛餅に使われる吉野本葛は、クズというマメ科の植物から採った澱粉のことです。この吉野本葛には、マメ科植物特有の「イソフラボン」が豊富に含まれています。イソフラボンは、血中コレステロールの低下や、骨粗鬆症予防、更年期障害の軽減などの効果があるといわれています。
また、イソフラボンが腸内細菌で分解されると「エクオール」という物質に変わります。エクオールは、アンチエイジングに役立つといわれる物質です。そんなことから、葛餅は健康や美容のサポートが期待できそうです。
葛餅の食べ方
ここでは、おいしい葛餅の食べ方をご紹介していきます。
食べ方1:きな粉、抹茶、黒蜜とともに
葛餅の一般的な食べ方は、きな粉や黒蜜、抹茶をかけて食べる方法です。どれかひとつをかけて食べてもいいですし、きな粉と黒蜜、抹茶と黒蜜など、組み合わせてかけてもおいしいです。
食べ方2:汁物やスープに
葛餅は意外にも塩系のおかずにもぴったり。そのため、お味噌汁やすまし汁といった汁物や、スープに入れて食べるのもおすすめです。もちろん、鍋に入れてもおいしいです。とろみともちもちの中間くらいの食感が楽しめます。
食べ方3:ミルクティーをかけて
わらび餅に、ミルクティーやコーヒー牛乳をかけて食べるアレンジもおすすめ。タピオカミルクティーのようなおいしさを堪能できるでしょう。
食べ方4:あんこといっしょに
葛餅にあんこをつけて食べるのもおいしい食べ方。上品な和菓子を食べているような味わいを堪能できます。ぜんざいに入れて、白玉の代わりにするのもおすすめです。
食べ方5:しっかり冷やして
葛餅は、しっかり冷やして食べるのがおすすめです。冷やすことで、もちもちとした歯切れのいい食感が楽しめます。また、口にふくんだときにひんやりとするので、暑い時期のおやつに最適です。
葛餅の作り方
葛餅はお家でも手軽につくることができます。できれば、吉野葛を用意して作るのがおすすめですが、手に入らないようなら葛粉で代用することも可能です。
材料
A
吉野葛 80g
水 400ml
砂糖 小さじ4
黒蜜、きな粉、抹茶 適量
作り方
【1】鍋にAを入れ、混ぜてしっかり溶かす。強火にかけ、全体が透明になるまで混ぜる。
【2】小さめの器に【1】を流し入れる。
【3】【2】を流水で冷ます。
【4】器から取り出し、お皿に盛り付ける。食べるときには黒蜜、きな粉、抹茶をかけて食べる。
葛餅のおすすめ
ここでは葛餅のおすすめを5つピックアップしてご紹介します。気になるものをお取り寄せして食べてみてくださいね。
奈良・吉野 吉田屋 葛商品詰め合わせ
創業百有余年の老舗「吉田屋」。こちらのお店の葛餅、葛きり、柚子くず餅の詰め合せです。葛きりは、つるりとしてのどごし爽やか。柚子くず餅は、鹿児島県産の柚子を使い、柚子の風味がふわ~と広がる逸品です。きな粉、黒蜜が付いています。
天極堂 葛もち 10個入
自社製造の吉野本葛「古稀(こき)」で作ったこだわりの葛もちです。国産原料と江戸時代より受け継がれる製法が用いられています。涼やかな透明感ともっちりとした弾力が特徴です。
よしのや 吉野の葛餅 3箱セット(1箱330g) 黒みつ・きな粉付き
先祖代々の地、吉野山にて古くより食していた葛餅。上質な本葛を秘伝の技でじっくりと練り上げています。艶とコシが魅力です。
吉野のこだわりくず餅 抹茶 10個 詰め合わせ
奈良県吉野の葛製造メーカーが造った本葛と、国産抹茶100%を使った抹茶の生くず餅。一口食べれば、すがすがしい抹茶の香りが広がります。冷蔵庫で2時間程冷やしてから、お好みで添付のきな粉や黒蜜をかけて召し上がれ。
亀久堂本舗 吉野本葛 くず餅 サイダー味
創業より50余年間、昔ながらの寒晒製法を守り作られた上質な吉野本葛を使った、生タイプのくず餅です。美しい水色の見た目に、さわやかなサイダーの味わい。箱を開けると、歯科や大仏の絵が飛び出すギミックも楽しい!
古くから食べられている「葛餅」
「葛餅」は、江戸時代中期以降から食べられいる奈良県の伝承菓子。涼やかな見た目に、ぷるん、もっちりとした食感が特徴となっています。
また、伝統的な製法「吉野ざらし」で作られる吉野本葛を使った「葛餅」は、とても貴重です。さまざまな健康効果も期待できる「葛餅」。家族みんなで食べてみてはいかがでしょうか。
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文・構成/HugKum編集部