「算数の言葉」がわからない子どもが増加中!日常で算数力を育む方法を大迫ちあき先生が解説【算数力がアップする声かけ術】

毎日の生活の中で出てくる「算数の言葉」をご存じでしょうか。大きい、小さい、長い、短い、など、日常生活で無意識のうちに使う機会も多いと思います。でも、実はこの「算数の言葉」には見落としがちな言葉がほかにもたくさんあるようです。数や図形センスを身に付けるためにどんな声かけや関わり方をすればいいのか、幼児さんすう総合研究所代表の大迫ちあき先生に教えてもらいました

算数の言葉ってどういう言葉のこと?

 みなさんは「算数の言葉」と聞いてどのような言葉をイメージしますか? 数を数えることや、「大きい・小さい」など大きさに関する言葉が思い浮かぶのではないでしょうか。このほか「高い・低い」といった高さを表す言葉、「軽い・重い」といった重さを表す言葉、「浅い・深い」といった容量を表す言葉などいろいろな算数の言葉を無意識のうちに使っています。

積木遊びは算数の言葉の宝庫。

一例をあげると、積木遊びは「高い・低い」「同じ形」「こんな形ができた」など図形感覚が身に付く算数言葉の宝庫です。「算数」という言葉を使わずに算数に関するワードを探す機会になるでしょう。

数、図形、量、割合など生活の中には算数の言葉がたくさん

算数の言葉を使うことについて、大迫先生はこのようにアドバイスをしています。

すでにこうした言葉を使っている方も多いと思いますが、ちょっとした意識を持つことで子どもの算数体験はさらに深まります。例えば先の言葉(「大きい・小さい」「高い・低い」「軽い・重い」「浅い・深い」など)は『量』の感覚がつく言葉で、小学校算数の世界ではcm(センチメートル)やg(グラム)など『単位』につながっていきます。こうした言葉が会話に出たときに『大体10㎝だね』『ずっしり重いけど何グラムくらいなんだろうね』『測ってみようか』など、単位を考えたり一緒に測ったりすると自然と算数体験は広がりますね。そのときどきで何が算数につながるのかを考えて、一つ入れ込むことから始めてみてはいかがでしょうか

子どもの好きなことの中に「算数の言葉」を入れていく

もしこのような算数の言葉がなかなか思い浮かばない場合は、子どもが夢中になっていること、好きで取り組んでいることに算数の言葉を入れる手法がおすすめです。

例えばお料理が好きな女の子だったら、お料理の中に「今日はじゃがいも3個使おう」「水を2カップ入れて」「醤油は大さじ3杯、お砂糖は小さじ2杯入れてね」など、好きなことの中に算数の言葉を意識して入れていくのです。サッカーが好きなら「優勝するまでにあと何回勝たなければいけないかな?」「勝つためにはどんな攻め方をするといい?」「フォーメーションはどんな位置でやるの?」とか、野球が好きなら打率や投げるコース、飛距離など、何でも算数に例えて勝つための策を考えることができますよね

【「好き」に算数を取り込んでみよう(例:野球)】

野球は打率、ピッチャーの送球コース、ヒットやホームランの飛距離、打つときのフォームなど、算数的な視点を使うチャンス。

戦術まで練れたらおもしろさも倍増!

「好き」「夢中」は学びのすべてを伸ばす

算数の言葉は「親が経験で知っている算数で十分」と大迫先生は話します。

算数の言葉は親が知っている範囲で大丈夫です。何かの単元に直接つながるかどうかより、親の中にしみこんでいる算数の世界や好きなことに入っている算数を思い浮かべるといいと思います。好きなことだとわからなければ本を持ってきてでも考えようとするし、夢中になってやると、集中力もつく。やっぱり好きなことを考えるときって得られるものが違うと思うのです。勉強させようとするとするから勉強したくないのであって、好きなことならなんでも得ようとする。そこに学びを入れ込んでいけばいいのであって、机の上でドリルを解くことが成績の近道ではないのです。好きなことに学びの要素を入れるほうが本当の意味で賢くなる気がしますね。

意識から落ちそうな算数の言葉「重ねる」「折る」「あふれる」

毎日の暮らしのなかに「算数の言葉」を入れることも方法の一つ。ここで大迫先生が気になるのが「最近、算数に関係のある重要な言葉がわからない子どもが多い」ということなのだそう。

ある子どもはサンドイッチを作るのに「パンの上にハムを重ねて」と親が伝えたところ、何をすればいいかわからない、ということがあったそうです。「パンの上に乗せるんだよ」と伝えると、自分から見てパンの上と思うところにハムを置いてしまう。「重ねる」ことがどういうことをすることなのかわからないわけです。「重ねる」は図形につながる算数の言葉。合同の意味を理解するなど図形領域では重要なワードの一つです。
「パンの上に乗せるんだよ」と言われて、写真のようになってしまうことも
大人にとって当たり前の言葉でも「重ねる」は子どもにとって、経験してないと分からない言葉。

ほか、『折る』『半分』といった言葉も子どもの経験値を上げておきたいポイント。洗濯物をたたむときは『半分に折るんだよ。そうしたらもう一度半分に折ってからしまおう』と伝えたり『タオルをしまうのは棚の一番上だよ』『右から3番目で下から2段目だよ』と位置を伝えたりすると、より体験と算数の言葉がつながっていくそう!

スーパーの買い物は算数の言葉がいっぱい!

「スーパーは算数の言葉の宝庫なのでぜひ一緒に買い物に行ってほしい」と大迫先生は話します。

特売で20%引きの商品を見たときに「20%引きって何だろうね」「もとの値段はいくらって書いてある?」「こんなに安くなってるんだ」など、このような会話は全て算数につながります。いつもより高い・安いなども含めて言葉を交わすことで、算数の土台となる力がどんどんつくことを知っておいてほしいと思います

【忙しくてもできる!おすすめの会話例】

忙しい毎日なのでスーパーでの買い物を一緒にできないこともありますよね。

「今日はお肉が特売で2割引きだったよ」「大根が1本300円もした」「消費税って知ってる?」などいろいろと話題に上げてみましょう!

親が正しい算数の言葉を使っていくことも大事

ここまで生活の中で算数の言葉を使うことについてお伝えしてきました。一つだけ注意があるとしたら「子どもが算数の言葉を習得する上で、親が正しい言葉を使うことが最も大事」ということです。

こそあど言葉に注意!指示語はなるべく減らそう

親はどうしても指示語が多くなりますよね。「それ、あそこに置いといて」「そっちじゃなくてこっち」「これをしたら次あれやっといて」など。あまり張り詰めないことも大事ですが、少しは気を付けるといいと思います。親が正しい日本語や言葉を使えば子どもも正しい言葉を覚えるし、親が指示語が多ければ子どもの語彙は減ってしまいます。ぜひ子どもの言葉を豊かにするという意味でも指示語はなるべく少なく、具体的な言葉で正しい日本語を使ってほしいですね
大迫ちあき先生の書籍『幼児期のさんすう体験×親子で楽しい! 算数ができる子になる遊びワーク』(朝日新聞出版)。

日常生活の算数の言葉を意識してみて!

意識してみると、普段から算数力がアップできる機会が実はたくさんあることがわかりましたね!まずは子どもの好きなことに算数の言葉を交ぜてみてはいかがでしょうか。

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文・構成/HugKum編集部

記事監修

大迫ちあき先生|幼児さんすう総合研究所代表
日本数学検定協会認定数学コーチャー、同協会幼児さんすうエグゼクティブインストラクター。大手個別指導塾で中学受験算数の担当講師等を経て、東京・恵比寿で未就学児対象の「幼児さんすうスクールSPICA®」を開講。母親向きのお母様へのセミナー、イベント、ワークショップでも活動している。著書に『幼児期のさんすう体験×親子で楽しい! さんすうができる子になる遊びワーク』(朝日新聞出版)など。日本数学検定協会認定幼児さんすうシニアインストラクターによるオンラインセミナー「子どもが算数を積極的に楽しめる声掛け&しかけのコツ」(math channel)のスーパーバイザーも務める。

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