「呉越同舟」とは?
まずは、『呉越同舟』の読み方と意味をご紹介いたします。
読み方と意味
この言葉は、『呉越同舟』と書いて「ごえつどうしゅう」と読みます。「仲の悪い者同士や敵と味方が同じ場所・境遇にいること、共通の目標で協力すること」を意味します。
語源は「同じ舟」に乗り合わせた「呉」と「越」の人
この言葉は、中国の「呉」と「越」という国が由来となっています。
中国の兵法書の『孫子』には、中国の春秋時代の列国であった「呉」と「越」は敵対関係にありながらも、同じ舟に乗り合わせて暴風に見舞われれば、呉人と越人もともに協力し合って助け合うだろう、という趣旨の記述があります。この記述が、後に『呉越同舟』の語源となりました。
「呉」と「越」が「同じ舟」に乗り合わせた光景をイメージすれば、もう意味を忘れることもありませんね。
使い方を例文でチェック!
ここでは、『呉越同舟』の使い方をお伝えしていきます。具体的な例文とともに、チェックしておきましょう。
1:ふだんは対立しているリーダーとサブリーダーだが、試合となれば【呉越同舟】でお互いに協力し合い、助け合う。
こちらは、部活やスポーツのチームを例とした文章です。このように、普段は対立している人たちが協力し合う様子を『呉越同舟』と言うことができます。
2:与野党が【呉越同舟】の協議を行った。
『呉越同舟』は、対立する個人だけでなく、企業や組織の単位でも使うことができます。対立する党が同じ場に居合わせる状況を言い表す際など、政治の話題で用いられやすい言葉でもあります。
3:ここはひとまず【呉越同舟】で協力し合いましょう。
対立している相手に、協力を促す際の文章例です。書き言葉として使われることが多いイメージがある言葉ですが、このような会話で用いても問題ありません。
類語や言い換え表現は?
では、『呉越同舟』と同じ意味を持つ言葉にはどのようなものがあるのでしょうか。ここでは、『呉越同舟』の類語や言い換え表現をご紹介します。
1:同舟相救う(どうしゅうあいすくう)
『同舟相救う』は、「同じ舟に乗り合わせた者同士は、たとえ普段は仲が悪くても、危険にさらされれば互いに助け合うこと」を意味します。『呉越同舟』と同じように使える言葉です。
2:楚越同舟(そえつどうしゅう)
『楚越同舟』は『呉越同舟』の「呉」が「楚」という国の名前に置き換えられた言葉です。楚も越と対立していたため、『呉越同舟』と同じ意味として用いることができます。
3:共同戦線(きょうどうせんせん)
『共同戦線』とは、「共通の目的のために、2つ以上の団体が協力体制をつくること」を意味する言葉です。『呉越同舟』とは異なり、敵対関係同士に限らないことや、主に個人同士ではなく団体同士の協力体制を指す点に注意。
対義語は?
『呉越同舟』とは反対の意味を持つ言葉にはどのようなものがあるのでしょうか? 明確な対義語は存在しないため、反対に近い意味と思われる言葉をご紹介します。
1:同床異夢(どうしょういむ)
『同床異夢』とは、「同じ仲間であっても考え方や目的が異なること」を同じ寝床で寝ていても各々異なる夢を見ることに喩えた言葉です。「普段は対立している者たちが同じ場所・同じ境遇で協力し合うこと」を指す『呉越同舟』とは反対に近い言葉と言えるのではないでしょうか。
2:方底円蓋(ほうていえんがい)
『方底円蓋』は、 四角い底の器には丸い蓋が合わないことから、「物事が食い違って、合わないこと」をたとえた四字熟語です。仲間同士にもかかわらず、意見が合わない際などにも使うことができるので、『呉越同舟』の反対に近い言葉としてぜひ覚えておきましょう。
英語表現は?
最後に、『呉越同舟』を英語で述べたい際に使える表現をご紹介します。
1:strange bedfellows
“strange bedfellows”は「奇妙な仲間」と直訳できる英語表現です。
“The game made strange bedfellows.(その試合は意外な人同士の結びつきを生んだ)”といった使い方ができ、『呉越同舟』のようなニュアンスで用いることができます。
ただし、あくまでも「意外な・奇妙な組み合わせ」であり、『呉越同舟』のような明確に「敵対した関係」の意味はない点に注意しましょう。
2:Woes unite enemies
“Woes unite enemies”は、「災いは敵同士を結託させる」と直訳できる言葉です。“woe”は「災い」、“enemy”は「敵」の意。『呉越同舟』と同様の状況を言い表す際に使うことができます。
物語としてイメージしやすい語源。あわせて覚えておくと◎
今回は、『呉越同舟』の意味や語源、使い方、関連語をご紹介してきました。
『呉越同舟』は、物語としてイメージしやすい語源を持つ言葉でしたね。語源をしっかり把握しておけば、意味や使い方を間違えることもなくなるはず! ぜひ、あわせて覚えておきましょう。
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文・構成/羽吹理美