小学校を退学になった時「きみは本当はいい子なんだよ」と何度も言ってくれた恩師がいなかったら、私は今のようになってはいなかったーー黒柳徹子さんの自叙伝『窓際のトットちゃん』が初の映画化【12月8日公開】

「徹子の部屋」でもお馴染みの司会者、エッセイスト、ユニセフ親善大使などあらゆる顔を持つ黒柳徹子さん。自身の幼少期を描いた原作「窓ぎわのトットちゃん」は、1981年に出版され20以上の言語で出版されるなど世界累計発行部数2500万部を突破する世界的ベストセラー作品。

今から約80年前となる第二次世界大戦が終わる少し前の激動の時代を過ごした小学生トットちゃん(黒柳徹子)の、生涯とても大切な場所となる“トモエ学園”での日常、成長が情緒豊かに描かれていきます。

黒柳さんがずっと断り続けてきたという映画化が遂に実現！

「窓ぎわのトットちゃん」は、子どもの頃に読んだことがあるお母さんお父さんも多いのではないでしょうか？

刊行からすでに40年以上が経ちますが、幾度となく相談があったという映画化を黒柳さんはずっと断り続けてきたそう。その理由について、黒柳さんは「いわゆる実写で作っていただくと、どうしても私がイメージしているトモエ学園やお友だちの姿にはならないんじゃないかと思い、ずっとお断りしてきたんです」と言い、「でも今回『アニメならどうでしょうか？』とご提案をいだだき、アニメであれば幻想的な雰囲気にもなって、自分のイメージに近いものになるのかもしれないなと思いました」と、映画化承諾の経緯を振り返ります。

こうして実現し、原作の温かな雰囲気はそのままに色彩豊かな情景で丁寧に紡がれていく本作は、世界各地で戦争が起きている今だからこそさらに胸に響く素晴らしい作品に仕上がっています。

主人公のトットちゃんの声を演じるのは、現在なんと7歳の大野りりあなちゃん。けっして容易くはないトットちゃんの声を見事に体現した表現力にはびっくり！

またトットちゃんを優しく導くトモエ学園の校長先生・小林先生の声を演じるのは、日本を代表する名優の役所広司さん。さらにトットちゃんのパパを小栗旬さん、トットちゃんのママを杏さん、そしてトットちゃんの担任の先生を滝沢カレンさんが演じるなど豪華キャスト陣がそれぞれのキャラクターを声で彩り、本作に深みを与えているのも大きな見どころのひとつです。

35年ぶりに＜トモエ学園＞跡地に黒柳さんが再訪！

そして先日、黒柳さんが実に35年ぶりに当時実際に通っていた自由が丘のトモエ学園跡地を訪れ、記念碑除幕式を行いました。

落ち着きがないことを理由に、小学校を退学になってしまったトットちゃんが新しく通うことになったのがこのトモエ学園。「君は、ほんとうは、いい子なんだよ。」と初めて会ったその日にトットちゃんに優しく語りかけた恩師である小林先生の独自の教育方針のもと、さまざまな個性を持つ子どもたちが自由な環境の中で豊かな学びを得て、しっかりと自分を持ち自立していく姿は劇中でもとても印象的。電車の車内が教室になっていたりと『こんな学校があったらいいな』と思わずにはいられない、とても素敵な学校ですが、除幕式を行った黒柳さんも当時に想いを馳せつつ、「小林先生はこの場所に木がいっぱいあって、プールもあって、電車の教室もあって、こどもたちの夢がつまったような理想的な学校を作ってくれました。

ここに改めて石碑を建ててくださった皆さんに本当に感謝致します」とコメント。

トモエ学園の存在について、黒柳さんは「私の人生を作ってくれた場所。この学校に通えていなければ、私は今のようにはなっていなかったので、本当にこの学校があって良かったなと思います」と自身の礎となっていることを明かし、「非常に残念なことは戦争があって私は疎開せねばならなくなって、トモエ学園も焼けてしまったことです。小林先生は学園が燃えているのを道路から見ながら、息子さんの巴さんに『今度はどんな学校を作ろうか』と話していたという記録があって、先生は本当にすごいなと思いました」と吐露。

「きみは本当はいい子なんだよ」黒柳さんを導いた恩師の小林校長先生

「きみは本当はいい子なんだよ」と1日に何回も言ってくださったという小林先生。黒柳さんは「その度に私は『はい！いい子です！』と返していましたが、大人になって考えてみたら『本当は』とついているんですよね（笑）。もしかしたら他の方からは違った印象があったのかもしれませんが、小林先生はいつもそう言ってくださって。とってもありがたかったです。すごく頭のいい子もいれば、小児麻痺の子や身長が伸びなかった子もいましたが、みんな区別をせずに本当に気にしていなくて、何があっても結束が強い友達ばかりでした」と当時を振り返ります。

 次第に戦争の足音が聞こえはじめる、トットちゃんの日常。ラジオから開戦の情報がアナウンスされると、お母さんが突如トットちゃんに「これからはママではなく、お母さまと呼びなさい」と、アメリカのスパイだと思われないようにトットちゃんに強く言うシーンが非常に印象的です。

友達、家族、先生との大切な絆、ささやかな日常の幸せ、そしてすべてを奪ってしまう戦争の恐ろしさ…。そして、人は出会う人間、環境によって大きく変わるのだということを、この作品が強い説得感を持って教えてくれます。

本作を鑑賞した黒柳さんは「当日のことが思い出されただけではなく、世の中のこと、学校のこと、そういったものが私の記憶と同じように描かれていて、お友だちも、本当に当時の友だちのようでした。そういったこともあって、本当に観終わった時に涙が出ました」と告白しました。

きっと観終わった後には、我が子をギュッと抱きしめたくなるはず！ぜひご家族一緒にスクリーンで観ていただきたい、温かな冬の一作です。

文/富塚沙羅