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20代からシニア世代まで、本音と建前のオンパレードに共感
会社ではAIのごとく淡々と仕事をこなす地味なOL、でも夜になれば、ド派手メイクのベリーダンサー「Sali」に大変身するという「セクシー田中さん」(毎週日曜22:30~日本テレビ系で放送)。田中さん(木南晴夏)や朱里(生見愛瑠)たちが織りなすラブストーリーがいよいよ佳境に入ってきました。
このドラマでは、アラフォーの田中さんや20代の朱里だけではなく、男性陣においても30代の笙野(毎熊克哉)や小西(前田公輝)、20代の進吾(川村壱馬)などの本音と建前を、リアルな台詞回しでダイレクトに届けてくれました。第8話で感心したのは、シニア世代である笙野の母・悦子(市毛良枝)が抱えていた積年の想いもドストレートに語られた点です。
昭和生まれの専業主婦として、家族に尽くすことだけを生きがいにしてきた悦子。そんな彼女が田中さんとの出会いを経て、もう少し自分のことを大切にしてみようと思った瞬間が描かれました。
きっと誰しもが日々いろんな悩みや葛藤を胸にしまい込んで生きていると思いますが、人からもらった何気ない言葉がその人を解放したり、希望の光を与えたりするんだなと実感。特に、コロナ禍を経て人間関係を以前よりもおざなりにしがちな今、外へ出て、誰かと交流することはとても大事だなと、このドラマを観て心から思うようになりました。
第9話では、恋愛パートでの大きな分岐点が描かれそうですが、まずは第8話を振り返っていきましょう。
リピートされた名台詞「1つ1つは些細でも、たくさん集めれば生きる理由になる」
田中さんと笙野の初デートは、せっかくいい雰囲気になったにも関わらず、またもや笙野が酒に飲まれ、靭帯損傷というケガを負ってしまうというトホホな事態に。でも、田中さんは、四十肩の時に助けてもらったお礼にと、今度は自分が手料理を持って笙野の家に足しげく通うことになったから、結果オーライでしょう。
ところが、そこにいきなり笙野の母・悦子(市毛良枝)が突然やって来て、田中さんを家政婦と勘違いしてしまいます。田中さんはショックを受けつつも「私のビジュアルの安心感」がそうさせたのだと、最近浮足立っていた自分を少し戒めたよう。
ところが、田中さんと接してみて、悦子の中で“田中さん株”は急高騰です!田中さんが作ってくれたリゾットを口にした悦子はその美味しさに「おしゃれな味がする」とはしゃぎつつ「誰かに作ってもらったごはんを食べるのが久しぶりで」と思わず感涙。悦子が胸に秘めていたものが一瞬、湧き出た瞬間でしたが、後半でこのやりとりがかなり効いてきます。
また、かつて笙野が恋人を初めて実家に連れていった時のエピソードも伏線になっていました。悦子は昭和気質の亭主関白な夫の下、日々“家政婦”のような生活をしているという描写がありましたが、この回では改めて、悦子が自分の人生を振り返ることに。
一方、田中さんが慣れないメイクで笙野とのデートに出掛けたことを知った朱里は、田中さんを華麗に変身させるべくハッスル。プチプラメイクで田中さんに挑みましたが、ここは残念な結果に終わりました。でも、リベンジを誓った朱里は、小西の協力も得て、田中さんに似合うメイクを研究していき、諦めかけていた田中さんにこう言います。「1つ1つは些細でも、たくさん集めると生きる理由になります」と。すなわち、小さな幸せを積み重ねていくことが生きる活力になるという意味合いです。
この朱里が放った名台詞は、田中さんと出会って背筋を伸ばし、自分自身を変えてきた彼女だからこそ言えたんだと思いました。そしてこの言葉に背中を押された田中さんが、今度は、心が沈んだまま上京してきた悦子に同じ言葉を投げかけ、悦子の心に明るい光を差すことに。そういった言葉のバトンをわたしていく希望のリレーが素晴らしかったです。
その後、悦子は息子に、長年抱えてきた夫へのストレスを告白。死ぬ前に、夫に対して恨みをぶつけそうになるかもしれないという、きれいごとは一切ない、かなりヘビーな言葉を放ち、視聴者をドキリとさせました。でも悦子はそのあとで、息子を産んで育てあげたことだけは、心から幸せに思っていると、自身の人生を肯定したんです。そんな母の言葉を受け、笙野は親のありがたみを感じつつも、いろんなことを考えたことでしょう。
翌朝、悦子に笑顔が戻ったことに安堵した視聴者も多かったのでは? そして、悦子は田中さんとデパートに行った際に買った青いスカーフを巻いていましたが、ここではコーディネートにおいても、彼女の人生においても、明るい“差し色”が入ったなと実感。とても清々しい気持ちになれました。
第9話では笙野がお見合い!揺れ動く田中さんに本命・三好からアプローチが!?
せっかく笙野の母に気に入られた田中さんですが、なんとこれまでにないほどの「強敵現る!」となった第9回。笙野は、悦子に勧められた女性・ふみか(朝倉あき)とお見合いすることになりました。そこで、ふみかの体調や母のことを思いやる姿、家庭への価値観に好感を持たれた笙野は、なんとふみかと結婚を前提にお付き合いすることに! その話を小西から聞いた田中さんは、やはり動揺を隠せません。
そんな中、クリスマスイベントで一緒にステージに立つ約束をしたにも関わらず顔を見せない笙野を待って、ひたすら練習を続ける田中さん。そんな姿を見かねた三好(安田顕)から、「笙野くんの代わりに俺が出ちゃダメかな?」と誘われます。どうする、田中さん!?
一方の朱里は老人ホームのメイクボランティアに参加し、さらにメイクの仕事にやりがいを感じてきました。そして、徐々に距離を縮めていた小西からは「付き合って」とついに告白されます。どうする、朱里!? 併走してきた2つのラブストーリーが大きく動く第9回もお見逃しなく。
文/山崎伸子
「セクシー田中さん」毎週日曜夜10時30分 日本テレビ系列で放送中!
公式サイト:https://www.ntv.co.jp/tanakasan/
見逃し配信は日テレTADA、Tverなどでご覧ください。
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