奥平大兼✕鈴鹿央士がW主演を務める「eスポーツ」映画
世界中の若者たちの間で盛り上がってきていて、日本でも近い将来ファン人口が1千万人を超えると見込まれている「eスポーツ」。
eスポーツとはコンピューターゲーム、ビデオゲームを使って対戦するスポーツ競技のことで、IOC(国際オリンピック委員会)主催の世界大会が開かれるほどメジャーな競技となってきました。そんなeスポーツを題材にした青春映画『PLAY! ~勝つとか負けるとかは、どーでもよくて~』が公開中です。
本作でW主演を務めたのは、ドラマ「最高の教師 1年後、私は生徒に■された」(23)や主演映画『君は放課後インソムニア』(23)で確かな演技力を見せる奥平大兼と、ドラマ「silent」で注目され、現在放送中の「闇バイト家族」でも主演を務める鈴鹿央士という今、最も勢いを感じる若手スター2人です。
ここで描かれるのは、全国高校eスポーツ大会への全国大会出場を目指して奮闘する若者たちの生き生きとした青春ストーリー。舞台は四国の徳島で、性格も生活環境も異なり、同じ学校に通いながら一度も交わることがなかった3人がにわかeスポーツチームを結成します。これがなんと実話ベースで、観終わったあと、爽やかな感動に包まれます。
凸凹トリオ“かませ犬”の成長を心から応援したくなる
舞台は徳島県の小さな港町。阿波高専に通う情報科2年の郡司翔太(奥平大兼)は、金髪にピアスというやんちゃな外見ながらも心優しい少年で、家庭環境に問題を抱えつつ、幼い弟たちの面倒をよく見る優しい兄でもありました。
電気科3年の田中達郎(鈴鹿央士)は、手首のケガでバスケットボールを断念して以降、鬱屈した思いを抱えています。成績は優秀ですが、他人と群れることもなく、ただオンラインゲームに没頭する毎日を淡々と過ごしていました。そんな彼がある日、自分が日本上位ランカーとして名を連ねる競技種目「ロケットリーグ」で、全国高校eスポーツ大会が開催されることを知ります。
エントリー資格は、同じ高校の生徒と3人でチームを組むこと。達郎は早速、四六時中、ネット動画やアニメに没入しているクラスメイトの小西亘(小倉史也)を誘い、半ば強引にメンバー入りをさせます。
続いて、達郎が校内に貼ったメンバー募集のポスターに目を留めた翔太が、「勝つとか負けるとかは、どーでもよくて」というキャッチコピーに惹かれ、達郎にメッセージを送ったことでなんとメンバー入り!この凸凹トリオが、“かませ犬”を意味する「アンダードッグス」というチームを結成し、大奮闘していくことに。
メガホンをとったのは、ロッテルダム映画祭グランプリ受賞作『まぶだち』(01)や、日本アカデミー賞 優秀脚本賞『ロボコン』(03)、『のぼる小寺さん』(20)などで知られる古厩智之監督。若手俳優のポテンシャルを最大限に引き出す青春映画の演出に定評がある古厩監督ですが、本作でもその手腕が遺憾なく発揮されています。
まずは、翔太たち3人がプレイする「ロケットリーグ」にご注目。カーレースゲームとサッカーを融合させたゲームですが、プレイヤーはジャンプや飛行ができる車“バトルカー”を操作し、相手チームのゴールにボールを叩き込むというものです。その面白さがきちんと伝わるので、観客も自身が観戦しているような臨場感を味わえるところが、古厩演出の真骨頂かと。
また、普通なら絶対に交わりそうにない中学生3人が、このゲームに熱狂しつつ、お互いの良さを認め合い、やがて三位一体にプレイができるスキルを身に着けていくという流れがとても丁寧に描かれています。紆余曲折がありつつも、同じ方向を見つめ、頑張っていく3人には、観る方も心からエールを贈りたくなるはず。
「勝つとか負けるとかは、どーでもよくて」の先に見えた価値観とは?
タイトルにもある「勝つとか負けるとかは、どーでもよくて」をどう捉えるか? これはいい意味で、きっと映画を観る前と観たあとでは、その捉え方が少し変わるような気がしています。
日々競争社会である日本では、子どもたちですらヒリヒリした勝ち負けに消耗することが多いように思います。でも、勝負を投げ出すわけにはいきません。「勝負における勝ち負けだけがすべてではない」というのは、昔から囁かれた常套句でもありますが、そこを本作では、決して押し付けがましくない形で、素敵な価値観を見せてくれます。
また、多様性が叫ばれるこの時代において、自分にはない他人の個性を認めることの大切さを実感していますが、本作のテーマもそこにあるのではないかと。本来なら友だちになれそうにない3人が、かけがえのない友情を築いていけたのは、ちゃんと逃げることなく、それぞれの内面に向き合えたから。そこは大人の視点から見ても、大いに学ぶものがありました。
実話ベースだからこそ、とてもナチュラルに吹き出す彼らの感情の揺らぎがダイレクトに伝わってくる本作。Hugkum世代の親は、過ぎ去った10代の頃を懐かしみ、また、現在ティーンエイジャーで青春真っ只中である子どもたちも、大いに感情移入できるはず。まさに親子で観ていただきたいイチオシ映画となっています。
文/山崎伸子
監督:古厩智之
出演:奥平大兼、鈴鹿央士、山下リオ、小倉史也、花瀬琴音、和田聰宏、古舘佑太郎、三浦誠己…ほか
公式HP:https://happinet-phantom.com/play/
©2023 映画『PLAY! ~勝つとか負けるとかは、どーでもよくて~』製作委員会