福井の郷土料理「へしこ」は、鯖を米糠で漬ける和製アンチョビ!? 美味しい食べ方、活用アレンジでやみつきに!

「へしこ」は、農林水産省選定の「農山漁村の郷土料理百選」にも選ばれた福井県の郷土料理です。もとは保存食として作られたものですが、今ではお土産としても広く知られています。本記事では、そんな「へしこ」とは、どんな料理なのか、作り方や食べ方、アレンジレシピなどを紹介していきます。

「へしこ」とは?

「へしこ」とは、鯖などの魚を塩漬けにしたあと、さらに米糠(こめぬか)で漬け込み、1年以上熟成、発酵させたもの。若狭地方などで食べられている伝統料理です。

「へしこ」は厳しい冬を乗り切る保存食

福井県若狭地方の冬は、寒さが厳しく、雪に閉ざされることが多くあります。厳しい冬を乗り切るための保存食として、「へしこ」は各家庭で作られてきました。今では、福井県を代表するご当地グルメとして、お土産店や飲食店でも多く販売されています。

なぜ「へしこ」という名前になったの?

なぜ「へしこ」という名前になったのかというと、それには諸説ありますが、「へしこ」の製造工程から由来するといわれています。

「へしこ」には、鯖などの魚を樽で漬け込む工程があり、その際、若狭地方では、樽に魚を無理やり押し込みながら入れることを、「圧し込む(へしこむ)」といい、そこから「へしこ」と呼ばれるようになったといわれています。

また、そのほかには、魚を塩漬けして出てくる水分のことを「干潮(ひしお)」といい、それがなまって「へしこ」になった、という説もあるようです。

「へしこ」はどんな味?

「へしこ」は塩漬けしてあるため、しっかりとした塩味を感じます。そのまま食べると、「塩辛い」と感じることもあるでしょう。

また発酵食品である「へしこ」は、独特な香りと深い味わいが特徴で、「海のチーズ」ともいわれています。しかし一口食べるとクセになるといわれていて、お酒の肴やご飯のお供にもぴったりなんです。

「へしこ」はどうやって作られる?

その昔、「へしこ」は、冬を越すための貴重なタンパク源として重宝されていました。その歴史は古く、江戸時代の中期には、すでに作られていたそうです。

そんな保存食である「へしこ」は、鯖などの魚を塩漬けして、さらに米糠に漬けて作られるものですが、もう少し詳しく作り方を見ていきましょう。

どの時期に作られることが多い?

一般的に、「へしこ」には鯖が多く使われ、鯖のへしこを作るタイミングは、鯖が一番脂がのっているといわれている、秋が多いそうです。また、鯖のほかに、イワシやフグ、イカやハタハタなどが使われることもあります。

「へしこ」はどうやって作られる?

1.塩で漬ける

とれたての新鮮な魚を捌いて、内臓を取り出し、塩をふって、重石をのせて塩漬けにします。

2.米糠で漬け込む

魚から水分が出てきたら、その水分と一緒に米糠をまぶし、漬け込みます。

地域や販売店によって、醤油や酒、鷹の爪、または独自のブレンドしたタレを入れて漬け込むこともあり、さまざまな作り方が見られます。

3.1年以上熟成・発酵させる

米糠で漬け込んだ魚は、そのまま1年以上常温で寝かせて、熟成・発酵させます。熟成期間が長いほど、塩辛さがなくなり、マイルドな味わいになるそうです。

「へしこ」の食べ方は? 米糠は? 下処理は必要?

料理によっては、「へしこ」についている米糠を残す場合もありますが、炙って食べたり、アレンジして食べる場合は、米糠をとって、食べやすい大きさに切ります。下処理方法を見ていきましょう。

「へしこ」の下処理方法

1.「へしこ」のついている米糠をとりのぞく

「へしこ」は手である程度、米糠をとりのぞいたら、流水で洗ってOKです(米糠はそのまま食べることもできるのでお好みで)。

2.頭を切り落とす

包丁で頭を切り落とし、背開きにして、半分にきります。

3.薄皮を剥ぐ

キッチンペーパーなどで水気を切ったら、鯖の頭側から薄皮を剥がします。手で身を抑えながら、ゆっくりめくっていきます。

4.「へしこ」をカットする

骨が気になる場合は、骨をとり除き、お好みで食べやすい大きさに切りって食べます。

食べきれない「へしこ」は、米糠をとらずに保存すると長持ちする

一気に食べきれない「へしこ」は、米糠を落とさずに、食べやすい大きさにカットし、保存容器に入れて冷蔵保存します。

また冷凍保存する場合は、切った「へしこ」を一枚ずつラップで包み、さらに保存袋に入れて冷凍するとより日持ちします。

美味しい「へしこ」の食べ方は?

へしこは加熱なしでそのまま食べることができますが、さまざまな料理に使うこともできるんです。美味しい「へしこ」の食べ方を紹介してきます。

新鮮なものはそのまま

「へしこ」は、加熱なしでそのまま食べられます。「へしこ」の米糠を落として、2~3ミリの薄さに切り、同じように薄くスライスした大根に挟んで食べると、大根の甘みと、「へしこ」の塩味がマッチしてとても美味しいです。

初心者はお茶漬けがおすすめ

「へしこを食べたことない」という方は、お茶漬けにすると食べやすいでしょう。炙った「へしこ」を、ご飯の上にのせて、出汁やお茶をかけて食べると、魚の旨味を余すことなく楽しめます。また塩味がマイルドになって食べやすくなり、ご飯が進むでしょう。

チャーハンやおにぎり、パスタの具にも相性バッチリ

塩味が強い「へしこ」は、チャーハンの味付けのアクセントにもなり、おにぎりの具材にもおすすめです。また、「へしこ」はアンチョビの代用品としても使うことができ、パスタやピザなどにも相性がいいといわれています。

おすすめ「へしこフレーク」の作り方

おすすめの食べ方である、お茶漬けやおにぎり、パスタの具に大活躍する、「へしこフレーク」の作り方を紹介します。

作り方

1.フライパンに切った「へしこ」を並べます。

2.弱火で加熱し、箸などで身を崩しながら炒めます。

3.「へしこ」の身がほぐれ、水分が飛んだら完成です。

若狭地方の郷土料理「へしこ」は旨味が凝縮した保存食だった

福井県若狭地方の郷土料理「へしこ」は、厳しい冬を乗り切る保存食として作られたものでした。食品を長期保存する知恵がたくさん詰まっていて、しかも旨味が凝縮されていて美味しいんです。

そんな「へしこ」は、さまざまな料理にも使うことが可能です。「へしこ」が手に入ったら、そのまま炙って食べたり、いろんな料理にアレンジしてみてはいかがでしょうか。

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構成・文・写真(一部を除く)/松田慶子(京都メディアライン)

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