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不器用だけど小賢しいのが魅力!世界中で愛される『ねこのガーフィールド』
世界中で長年愛される作品に、ガーフィールド役で出演が決まったときの感想はいかがでしたか?
山里亮太さん(以下山里さん):もうプレッシャーというのもおこがましいというか、僕がやっていいのかなっていう感じでしたね。
でもまだその段階ではできるのかどうか、はっきりわからなかったんです。僕の声を本国のプロデューサーに送ってみてOKだったらっていう感じだったので、それならまずは送ってみて、委ねてみようかなと思いました。あとは先方が決めたことで、僕の責任じゃないし(笑)
MEGUMIさんはどんなイメージで声入れをされましたか?
MEGUMIさん:私がやるジンクスは過去に自分を傷つけるような体験もあり、女性としていろんなことがあったからこうなったといった内面の部分をすごく大事にしたいなと思いました。実際の声は、叫んだり逆に小さくしたりして、抑揚が激しい方がキャラクターがチャーミングにうつるのではないかと思い、その辺を意識しました。
それぞれが演じるキャラクターの魅力を教えてください。
山里さん:ガーフィールドは小ズルさと不器用さが同居している感じです。周囲との距離の詰め方は不器用なんですけど、それ以外は小賢しい。そこが生き物くさい感じがあっていいなと思いました。
MEGUMIさん:ジンクスは後先考えないで「わー!」って突っ走っていく感じ。いろんなことに気づいてるんだけど、「いくしかない!」みたいな直感で生きてるネコっていうのが可愛いらしいなと思います。ヴィック(ガーフィールドの父親ねこ)に復讐してるんだけど、やっいてることが“ミルクをあげない!”みたいな可愛いところもあるし、勢いで行動するみたいなところも共感しましたね。
親ならではの感覚をこれから自分も覚えていくのかなって(山里さん)
ストーリーにある「親子の絆」についてはどうでしょうか?
山里さん:ヴィックはそんなところも見ているんだ? というくらい常に目線が自分の子ども(ガーフィールド)に向いているからこそ、見えてるものがあるんです。それは一瞬であってもちゃんと記憶に残っていて、子どもに対して手を差し伸べたいとか助けたいときに、その記憶の引き出しがパッと開いて、自分を切り捨てることができる。そんな親ならではの感覚って、これから自分も覚えていくのかなって思いましたし、そういったことに気づけるようになったなと思いました。
今はその親ならではの感覚、多少ありますか?
山里さん:まだ娘は小さいので、ガーフィールドほどの無茶はしないので(笑)。でも何があっても子どもの優先順位は圧倒的に1位なんだなっていうのはわかる感じがします。
MEGUMIさん:私の息子はもう15歳なんですけど、自分の中で息子は、なんと言うか“弱点”なんですよね。どういうことかと言うと、息子の様子にすごい一喜一憂しちゃうんです。今は海外にいて離れて暮らしていますが、離れてるが故に全部が心配だし、好きが増幅しちゃって、苦しいことがあれば泣いて、良いことがあったら喜んじゃう。
自分のこと以外でこんなに感情が揺さぶられるのはやっぱり子どもしかない。それは世界共通である親が持つ概念だなって、この作品を通して改めて身にしみて思いました。
しかもアニメ版の『ガーフィールド』は、息子が小さい時にほぼ毎朝親子で一緒に観ていたんですよ。だからガーフィールドを見るとあの頃のイメージが思い出されてちょっと泣く、みたいなところもあるくらい私の中では心に刻まれた作品です。あの時は子育てに必死だったけど、今思えばすごい幸せな日々だったなっていうことをこの作品で思い出して、感慨深く思いながら参加させてもらいました。
山ちゃんも言ってましたけど、とにかく親っていうのは何があっても子どもが1番なんだなって、この作品で改めて自覚しました。
それでは、MEGUMIさんにとって今回のオファーはまさに運命ですね。
MEGUMIさん:いやー、本当に嬉しかったですよね。毎朝子どもを起こしてテレビつけると『ガーフィールド』がやってて、子どもはそれを観て私は朝ご飯を作って、そしてそれを一緒に食べる……。そんな様子が鮮明に蘇ってきます。これに参加させていただくのはエモいなあって(笑)
まあ甘やかせるうちは甘やかしていいんじゃないかな、どうせ離れる時がくるから(MEGUMIさん)
ガーフィールドの甘やかされっぶりは、親としてはどう思いますか?
山里さん:自分もあんな風に子育てしてしまいそうで怖いです(笑)。僕もずっと親に甘やかされてきたんですよ。全肯定されて育てられたんです。
僕、昔は肥満児だったんですよ、甘やかされて食べたいもの食べて。ぱつんぱつんに太っていて。子ども用のキングサイズの服を親と買いに行ってたんですけどそれも入らなくなった時、親がデパートの人に何をもって“キング“なのか説明しろって言ったりしたこともありました。だから自分が親としてそうならないようにしないとなって思います。
MEGUMIさん:そんなに甘やかしてないつもりなんですけど、やっぱりやってあげちゃってたなっていうのは正直あります。今は目が届かないからそれでようやく腹をくくって「自分で考えて自分でやって」っていう、“かわいい子には旅をさせろ”って境地にたどり着けたんですけど、最初は本当に寂しくて。もう、公園に立っている男の子見ただけで泣く、ぐらいやっぱり辛かったんですが、これも必要な期間なんだと思って乗り越えました。だからまあ、甘やかせるうちは甘やかしていいんじゃないかな、どうせ離れる時がくるから、とも思いますね。
離れて暮らしてみて、お子さんはどうですか?
MEGUMIさん:何か月に1回の頻度で会うと、どんどん違う人になっていくから今の所こうしたことは彼にとってもすごくいい経験になっているのかなって思います。離れてるからこそたまに会うことで変化が目に見えて分かって、それはそれですごく嬉しいですね。
映画では家族の絆が描かれていますが、中でも父親はどういった形で関わるのが良いと思いますか?
山里さん:本作を見ていて気づいたんですが、 父親側は勝手に“ある”と感じてしまう父と子の距離感って、実際子どもには“ない”っていうことに気づくことですかね。
MEGUMIさん:あら、すごーい大人な発言!
山里さん:今はまだ小さいから距離感とかないですけど、この先自分は距離ができた時と感じた時に、向こうも同じように感じているとは限らない。表現が不器用なだけかもしれない。父親も気持ちの表し方が不器用なだけなのかもしれない……。
感情をきちんと出さないと気づかれないから、ヴィックは何もしないと思われちゃったんですけどね。
娘に言われたらなんでもやっちゃうから、こいつチョロいなって思われてるんじゃないかな(山里さん)
ガーフィールドは父親と生き別れたことからすれ違いが生じてしまいますが、お二人はお子さんとの間にすれ違いができてしまったような経験はありますか?
山里さん:今のところ、娘に対して僕の「No」はないんですよね。言われたらなんでもやっちゃう。こいつチョロいなって思われてるんじゃないかと思います。
例えば娘に絵本の角を「ガン!」ってぶつけられたりするじゃないですか。でも「ごめんね」って言われたら、何も痛くなくなるんですよ!だから娘には無敵だと思われてるかもしれないです。本当はダメだよと注意をしないといけないんですけど、娘の覚えた「ごめんね」、これがむちゃくちゃ破壊力あるんですよね(笑)。みんながみんなごめんねで許される世界じゃないということを、どっかで教えなきゃとは思ってるんですけど、今はかわいすぎてできてないです(笑)。
MEGUMIさん:私は母親である私の方が情報をたくさん持っていて、「絶対これがいいはずだ」と思って、レールを引きまくっちゃったんです。それで息子本人に「めっちゃうざいわ、俺の人生だし」みたいなことを言われて、嚙み合っていないなと感じる時期があったんです。
でも今は離れて暮らして物理的に距離もできたので、息子には息子の感覚があるから、私も言いたいことは100のうちの1ぐらいにしとこうっていう気持ちにやっとなれました。
ただいつか息子に、あれは私のやりたいことを押し付けていたわけでなくて、本当に自分を思ってくれていたんだと気づいてくれたらいいなって思います。「誤解なの、押し付けていたわけでなく、私も一生懸命だったの」みたいなことがいつか理解してもらえたらいいなって思ってるけど、多分無理だろうな(笑)。
でもガーフィールドにも親の気持ちがちゃんと通じましたから!
MEGUMIさん:そうですよね! 期待してます(笑)。
アフレコで大変だったことや、意識したことはありますか?
MEGUMIさん:山ちゃんすごい上手だった! 先に山ちゃんが録っていて、私はそれを聞いて録りました。山ちゃんの明るい突き抜けるような声が、素晴らしいなって。
山里さん:いや緊張しましたよ。それにやたらめったら叫ぶシーンが多かったし、もうドタバタだから。その日の叫ぶシーンはまとめて最後に録りました。そうしないと声が出なくなっちゃうんです。それと歌があったんですよ、これが難しかった。
MEGUMIさん:そう。フランス語なので難しかったです。馴染みのある言語じゃないし、やったことのない口の形とかでめっちゃ難しかったです。しかも私はスケジュールがタイトだったので、叫んだ後フラフラになりながら歌うということもあって。チャレンジングでしたけど楽しかったです。やったことのないことは楽しいですね。
メンタルケアのために、自分が喜ぶ処方箋を持っておくといい(MEGUMIさん)
ガーフィールドはかなりふてぶてしい性格ですが、メンタルを強く持つコツって何かありますか?
MEGUMIさん:メンタルを強く持つっていうのは多分難しいですよね。子どものこととなると特に。例えば子どもの具合が悪くて「この咳が止まらない、大丈夫かな?」とかすごくBADな方に考えがいっちゃったりしますよね。自分は親として正しいのであろうかとか、不安で心が乱れることも多いと思うから、それはそれで良しと思った方がラクになると思うんですよね。
例えば、「なんでこんな風に思ったんだろう、私って親としてダメだな」って真面目になればなるほど自分のことを追い詰めてしまうこともあるから、そんなときは「まあ、しょうがない」って思えると少しラクになったりすると思うんです。だから強くなるというよりは、心配事ができた時、具体的にどうすればいいのかって考える方が、多分いいですよね。
行き詰ったときは、誰か頼れる方に30分でも子どもを見てもらって、一人でゆっくりお風呂に入るとかでもいいし、こうしたら自分が喜べるっていう処方箋みたいなものを自分の中で何個か持っておくのがいいと思います。
山ちゃんは、凹んだ時はどうしてるの?
山里さん:自分を凹ませた人間をどうやって駆逐することができるのかを考えます。後は、凹んだ自分をプラスに持っていくようにするために、凹むきっかけになった嫌なことを言ったりやったりしたやつをこらしめるには、自分がどんな頑張りをしたらいいのかってことを考えて、努力をして進むんです。
そうすることで僕に嫌な思いさせただけの存在から、そのことが自分の燃料に変わるんですよ。最初はネガティブなんだけど、結果すごいポジティブに転換できているのかもしれません。
最後に『ねこのガーフィールド』の魅力はどんなところでしょう。
山里さん:自分をどのキャラクターに置き換えるかで楽しみ方が全然変わってくると思うんです。親の目線だったり、敵の目線だったり、何回も楽しめる作品だと思うのでぜひ劇場に観に行ってください。特にアクションはとても面白くて、すごく意外な戦い方もあるのでそこは楽しみにしてほしいなって思います。あと伏線が結構あるので、その辺も堪能していただければと思います。
MEGUMIさん:私が親子でガーフィールドを観ていたのは、親としても楽しめていたから一緒に観ていました。子ども向けだと親は付き添いで、みたいなこともありますが、『ねこのガーフィールド』は親子で楽しめる稀有な作品の一つだと思います。
お子さんはキャラクターの面白さやアクション、ジェットコースターみたいな展開の物語を楽しめると思いますし、親は親で泣けちゃうくらいの、自分の深いところに刺さるようなストーリーにもなっています。そんなふうに親子で響いてるところが違うかもしれないけれど、親子両方ともにすごく満たされるような家族で楽しめる、なかなか無い作品です。夏の思い出になると思うので、ぜひ親子で観ていただけたらと思います。
ぽっちゃりねこ・ガーフィールドの冒険が始まる!
‟幸せ太り” な毎日を送るねこのガーフィールドは、冷蔵庫の中身を空っぽにするまで大食いして、ほしいものは全部優しい飼い主・ジョンのお金でネットショッピング。そんな平和な毎日にある日突然、生き別れた父さんねこのヴィックが現れたのです。
涙あり、笑いありのニャンダフル・アドベンチャーの始まりです!
映画『ねこのガーフィールド』
8月16日(金)より全国劇場公開
監督:マーク・ディンダル(『チキン・リトル』)
日本語版吹き替えキャスト/山里亮太、MEGUMI、花江夏樹ほか
配給/ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
https://www.garfield-movie.jp/
取材・文/苗代みほ 撮影/黒石あみ(小学館)