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共学が増えるなか、男子校、女子校にもそれぞれのよさがある
――伝統ある中高一貫校は男子校、女子校が多いですが、比較的新しい学校は共学が増えてきました。また、別学から共学になる学校も多くなっていますが、どう選んだらいいでしょうか。
日本の中高の男子校は、イギリスのイートン校を模して生まれたとも言われています。また、女子校は、男子ばかりに教育が偏重していることを受け、女子の教育も必要ということで生まれたようです。明治時代、政府が女子の教育をあまり進められなかったため、キリスト教の各派の宣教師たちが日本の女子教育に乗り出しました。ミッション系の女子校が多いのはそのせいなのだそうです。
ただ、最近は少子化で男子だけ、女子だけの学校運営が厳しいこと、多様性を尊重するという時代の流れに合致する必要があることなどの理由で、共学がとても増えています。男子校、女子校だった学校が共学に変わるケースも多いです。流れは共学、となっているようですね。世の中には男女がいるわけですから、共学のほうが自然ではあります。
別学にも多くのメリットが。子どもにはどちらが合うかを見極めて
別学の場合は、異性の目を気にせず部活や趣味や勉強に思い切り集中できる傾向があるようです。異性を意識して格好付けなくていいんですよね(笑)。僕自身、巣鴨中学校・高等学校の出身で男子校なのですが、男子校でよくなかった、と思った経験はないです。デメリットとしては異性との関わりが少ないというのがありますが、実際はどうでしょう。共学でも男子ばかり、女子ばかりかたまって過ごしている子たちもいますし、別学でも大学に入学してから問題なく異性とすぐ仲良くなれる子もたくさんいますよ。
女子校の場合は、男子がいないので女子のリーダーが生まれやすいというメリットもあるようです。でも別学か共学かは、本人やご家庭の意思でいいと思います。
ひと口に附属校といっても大学への進学率に違いがある
――大学の附属校に行くかどうか、というのは……? 大学がついているほうが安心という親心もあります。
大学受験がないと進学をあまり気にせずのびのびと中高生活を送ることができるのはメリットです。受験に特化した教育ではなく、ひとつの学びを深掘りしながら、じっくり取り組むこともできます。
ただ、一口に「附属」といっても、ほとんどが附属の大学に入れる学校と、大学に入れる割合が少ない学校があります。また、大学があってもあえてその大学に行かずに受験をする生徒が多い学校もあります。それによって受験対策も変わってきますので、進学先のデータをとらえて把握しておきましょう。
附属校から大学に行くのは学部選択が限られますね。その大学にない学部には行けず、他の大学に出たいと思っても、受験に熱心な中高一貫校とはカリキュラムも勉強のスタイルも違って、受験しにくいという学校もあります。入学前に大学についても情報収集しておいたほうがいいですね。
僕は巣鴨高等学校から受験して慶應大学に進学しました。附属校から大学に来た子たちはのびのびしていますし、いい意味で「いい子」「バランス感覚の優れた子」が多くて好感度が高いですよ。メリットとしてとらえるといいですね。
寮のある中高一貫校も視野に。遠方の学校も志望校になる
あと、もうひとつ、学校選びにおいて提案したいのは、「寮のある学校」に注目することです。盲点かもしれませんが、僕はそれもまたよし、と思っています。
――中学から寮に入るのですか? まだ大人になりきれていないのに親から離れるのは心配です。
たしかに心配かもしれませんが、学校が責任を持ってみてくれます。寮生活では、とにかく生活力が身につきます。家ではいくら起こしても起きなかった子も、仲間といっしょなら規則正しい生活になります。勉強時間も決められている場合が多いので、勉強習慣がしっかりつくようですよ。
コミュニケーション力もつきますよね。寮の仲間とは寝食ともにした深い関係になります。関係性はうまくいくこともあればうまくいかないこともありますが、それらを解決する能力も身についていきます。つまり、人間的に大きく成長するんです。
思春期の子どもが寮生活を体験すると親との関係性が好転
――子どもと滅多に会えないとなると、子どもの様子もわかりにくいです。
教育内容などに共感した上でご自宅から飛行機や電車の便のいいところを選べば、しょっちゅう帰ってこられるようです。週末ごとに帰ってくる子もいるようですし、長い休みはずっと自宅で過ごすお子さんも多いですね。
中高時代は思春期と重なり、保護者との関係性が難しくなるケースも多いです。離れていることで親子の関係もちょうどいい距離感となり、むしろ関係性がよくなることも。普段だったらほとんど口をきかない子が、たまにしか家族に会わないので、帰省時は学校でどんなことがあったか、よくしゃべる、という話も聞きます。
デメリットは費用がかかること。何人もお子さんがいたら厳しいですよね。でも、地元にいい学校がない、寮のある学校でとてもいいところを見つけた、というのなら、お子さんと見学に行き、お子さんの意向を聞いてみてもいいのではないでしょうか。
東京や神奈川の中学の受験日は2月以降です。寮のある他県の学校は1月受験、12月受験ができることも多いので、受験日をバラせるのもいいですね。
偏差値だけで学校を決めるのはやめたい
――学校選びといえば、第1志望校だけでなく、第2志望、第3志望の学校選びも必要です。その場合、受験日をバラすほか、偏差値もバラバラにしたほうがいいですよね?
そもそも、僕は学校を偏差値ばかりで選ばないほうがいいというのが持論です。お子さんにとって「相性のいい学校」という視点で選んでいただきたい。中学受験で第1志望に合格する確率は毎年3割くらいです。第2希望の学校に行く可能性も高いのですから、そこも相性がよくないといけませんよね。
塾の先生のおすすめで併願校を決めて、見学したこともないのに受験し、結局行くはめになった、という話を聞きます。それはとても不幸ですよね。幅広い偏差値で探してください。そして、お子さんや親御さんが決めた軸で学校を選びましょう。
さらに言えば、万人にとっていい学校はないんです。僕も「おすすめの学校」「人気の学校」と発信しますが、どの子にとってもいい学校ってないんですよ。また、どんなにいい学校と思って選んでも意外な部分はあるし、逆に第2志望などで「この学校に入学するのか……」と思っても、入学してみたらとても楽しそうにお子さんが通って成長していく場合がほとんどです。
つまり、「いい学校」かどうかは、入学してみないとわからない。だからこそ、我が子が入学した学校、どこだとしても「なかなかいいぞ」と思うこともとても大事です。「置かれた場で咲く」ことの楽しさを、お子さんも親御さんも味わっていただくといいんじゃないでしょうか。