石破総理によるトランプ外交がスタート
米国大統領選挙の結果、共和党のトランプ氏は312人の選挙人を獲得し、民主党候補のハリス氏に勝利しました。石破総理も既にトランプ氏に勝利を祝するメッセージを送り、選挙後に5分ほど電話会談も行ったようです。
トランプ政権の発足は来年1月ですが、石破総理による対トランプ外交は既に始まっており、良好な日米関係を築いていくことが求められます。では、今後の日米関係はどうなっていくのでしょうか。
対中国という意味で、日本は重要なパートナーに
まず、今日の米国にとって最大の外交課題はいかにして中国との競争に勝ち、米国の優位性を守るかです。21世紀以降、中国は飛躍的な経済成長を成し遂げ、今日では世界で唯一米国に対抗できるような国です。
戦後、ソ連との冷戦に勝利し、長きにわたって世界No. 1の国力を維持する米国にとって、自らのポジションを脅かしつつある中国は大きな脅威であり、米国はその優位性を何とかして維持することに躍起になっています。指定席を奪われたくないのです。これはバイデン大統領だろうがトランプ氏だろうが全く変わりません。第2次トランプ政権の対中強硬姿勢が決定的なのも、これが理由です。
そうなれば、米国にとって中国の隣に位置する日本は、対中国という意味で極めて重要なパートナーになります。これはアメリカファーストに徹するトランプ氏にとっても変わらない事実であり、第2次トランプ政権は基本的には日本との関係を大事にしてくるでしょう。
トランプ氏は政権1期目の際、ゴルフが共通の趣味である安倍晋三元総理と親密な関係を作り、安倍・トランプ時代の日米関係は極めて良好であったことから、トランプ氏はその経験を第2次政権でも活かしてくると考えられます。
トランプ氏は個人との関係を大事にする性格で、ゴルフ通ではない石破総理との相性は安倍・トランプ関係ほど良くないと報じられますが、石破総理も日米関係は米国に利益をもたらすなどトランプ氏に上手く対応していくと思われ、石破・トランプ時代の日米関係も基本的には良好なものになるでしょう。
少数与党となった石破政権が抱えるリスクとは
しかし、懸念がないわけではありません。日本では10月に国政選挙が行われましたが、自民党は大きく議席を失い、与党である自公(自民党と公明党)は過半数を下回り、石破政権は少数与党という状況に追い込まれています。
石破政権は政策を実現していくにあたり、常に野党の主張に真摯に対応していかなければならない状況にあり、今後、内政や政局の混乱によって政権運営が難しくなるリスクがあります。トランプ氏と上手く付き合っていくには、政治基盤が安定した政党のリーダーが求められますが、政権交代などが連続すれば、トランプ氏が誰を信頼すればいいか分からないなどとして、日米関係が上手くいかなくなることが懸念されます。
この記事のポイント
①アメリカにとって最大の外交課題は中国との競争に勝ち、優位性を維持すること
②日本は対中国の面で極めて重要なパートナーであり、基本的には日本を大切にする見込み
③10月の選挙で議席を大きく失った与党。今後、政局が混乱することで、日米関係悪化のリスクも
こちらの記事も合わせて読みたい
記事執筆/国際政治先生
国際政治学者として米中対立やグローバスサウスの研究に取り組む。大学で教鞭に立つ一方、民間シンクタンクの外部有識者、学術雑誌の査読委員、中央省庁向けの助言や講演などを行う。