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愛情不足はしていませんが、伝わる形になっていないのかもしれません。「もっともっと」と求めています。
【質問】娘の体調不良は、寂しい思いをさせたせい? (小2と年少女の子のお母さんより)
小2の娘は毎日のように「足が痛い」「おなかが痛い」などと、体のどこかが痛いと訴えてきて、何度も熱をはかったり、手足に湿布を貼ったりしています。実際、月に数回は微熱を出します。学校でもよく保健室に行き、先生に面談で「何かのサインでは?」と言われました。
ふだんから、年少の妹より大きな声で泣くことがあります。宿題などやるべきことがたくさんあると、ギャーギャーと声を出してめんどうくさがるので、わたしもつい大きな声で怒ってしまいます。そのため、娘もよけい怒りっぽくなっているのでしょう。
原因は、わたしの愛情不足によるものではないか、と思っています。娘が幼かった時期にわたしが入退院を繰り返したり、下の子に手がかかることで寂しい思いをさせたりしてきました。最近は学校や習い事に行きたがらなくなり、このまま不登校になるのではないかと心配です。
お子さんの体調不良は「心因(しんいん)反応」。ストレスが体の弱い部分にあらわれるのです
体調不良の原因は、ストレスだと思います。「心因反応」というのですが、苦痛、不安、恐れ、つらさなど、自分では処理しきれないストレスに支配されると、その人の体の弱いところに反応が出てしまうのです。発疹、熱、下痢、便秘など、症状は十人十色です。これは、「ストレスが大きいから、注意しなさいよ」という体からのサインで、大人に
も子どもにも、いろんな程度であらわれるものです。多くの場合、原因は人間関係の中で生じるストレスです。もしかしたら、学校に行きたくない何かがあるのかもしれません。

友人との関係、先生との関係、あるいは何か別のストレスを感じている可能性もあります。けれどこの方は、「わたしの愛情不足が原因ではないか」と書いています。母親である自分に原因があると考えているのです。愛情があるから、愛情が深いから、そう思うのでしょう。
まずは「愛情不足」ということを否定させてください。ただ、あふれる愛情がわが子に届く形になっているかについては、見直してほしいと思います。この方のお子さんがそうだということではないのですが、友だちと親しく交われない子の中には、愛着関係の土台ができていないことが少なくありません。
「愛着」とは、特定の個人に抱く深い情緒的な結びつきで、ごく一部の例外を除けば、まずお母さんとの関係で築かれるものです。愛着のもとになるのは、「自分はこの人から無条件に愛されている」「この先に何があっても、一生愛される」という信頼感です。この愛着関係を基盤にしながら、人は少しずつ他者との関係を築いていきます。きょうだい、親戚、友だち、先生、恋人… …。しかし、親子の愛着関係を幼いうちにしっかりと築くことができなければ、社会における人間関係の成立が難しくなることもあります。
〝母と子の愛着関係の土台をつくり直す〟すべてはそこから始まります
この方は「幼かった時期に入退院を繰り返した」と書いていらっしゃいます。もしも愛着関係がうまくいっていないのではないかと思い当たるなら、それをつくり直す努力をなさってみてください。お子さんの体調不良は、お母さんに原因があるわけではないと思いますが、お母さんとの関係の中で癒やされて、エネルギーを満タンにすることができれば、学校での人間関係に自分から向き合う力がわいてくるのではないでしょうか。
ぜひやってほしいのは、子どもの話を聞いてあげることです。長時間でなくていいし、忙しければ食事のしたくをしながら聞くのでもいいのです。イライラせず、怒らず、穏やかに、うなずいて聞いてください。それだけでお母さんの愛情は確かに伝わります。そんなふうに話を聞いてくれる人は、世界中にお母さんだけなのですから。

お母さんが聞きたい話を聞くのではありませんよ。妹とケンカしたとか、「お母さんはわたしのことなんてどうでもいいんだ!」とか、そんなことも全部聞くのです。もちろん、要求をすべて聞き入れるという意味ではありません。まちがった意見であれば「そうではないと思うよ」と言っていいのです。ただし、穏やかに言うのです。怒ったり、拒絶したりしてはいけません。激しく泣いて訴えているのは、「普通に言ったのでは聞き入れてもらえない」とお子さんが思っているからでしょう。「怒られない」「ちゃんと受け止めてもらえる」と信じられるようになれば、泣かずに言うようになります。
ギャーギャー泣くときは、抱きしめてあげるといいですね。子どもは暴れて振り払おうとしますが、それができないくらい強く抱きしめるのです。「大好きだよ、大事だよ」と言い、「だから○ ○してね」は言わないのです。「足が痛い」と言うならば、痛む部分をやさしくさすってあげてください。
お母さんのそばでやすらいだ気持ちになれば、痛いと言う回数は減ってくるかもしれません。いっぺんにはできないかもしれません。でも、昨日より今日が、今日より明日が、少しでも進歩していればいいのです。ときに後退することがあってもいい。ほんの少しでも、いい方向に進んでいると実感できれば、子どもの目はどんどん輝いていきます。
幼いころのことは、気にする必要などありません。子どもは「いま」だけが大事なのです。どうぞ、いますぐに始めてみてください。
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構成/HugKum編集部
