自己肯定感は褒めたら上がり、叱ると下がるものではない! 真の「子どもの自己肯定感」を育てる親の声かけ、話の聞き方とは?

「自己肯定感」は、豊かな人生の土台になるといわれ、子育てにかかわる文脈でも頻出するキーワードのひとつ。関心をもつ父母が増えつつあるなか、「たくさん褒めればいいの?」「しつけのためでも叱っちゃダメ?」など迷う声も少なくありません。

子どもの自己肯定感を育むために、親は子どもとどのように向き合うべきなのでしょうか? NPO法人親子コミュニケーションラボ代表理事の天野ひかりさんからお話をうかがいました。

実は多くの人が誤解している! 「自己肯定感」の本来の意味とは?

――子育て本やネット記事でも、「自己肯定感」という言葉はよく目にします。ただ、「自己肯定感を育む」とはどういうことなのか、正直よく分からない…という親御さんが多いのではないでしょうか。

天野さん そうですね。最近では、女子高生がSNSで「今日、学校で褒められたから自己肯定感、爆上がり」「怒られて爆下がり」なんて発信しているのを見かけるほどで、その重要性が世の中に浸透しつつあるのはよいことだと思います。

ただ、その反面、本来の自己肯定感の意味が正しく伝わっていないのは、ちょっと惜しいところ。さきほどの女子高生のつぶやきにあるように、自己肯定感は褒められて上がったり、怒られて下がったりするものではないんですよ。

また、親御さんからの相談で「自己肯定感を育てたいけれど、子どもが自信過剰になってしまわないか心配です」とも聞きますが、これもよくある誤解です。

自己肯定感とは、一言で言うと、「私は私だから大丈夫」と思える強い心のこと。長所も短所もひっくるめて、ありのままの自分が好き、自分は愛されていると思える土台のようなものです。ですから、自信満々に見える人というのは、自分の長所ばかりを押し出して、短所を隠そうとしているという点で、むしろ自己肯定感が育っていないのではないかと思います。

自己肯定感は「褒めて上げる」ものではない?

――そうすると、自己肯定感を育むために、子どもをたくさん褒めるというのは間違いなのでしょうか?

天野さん 褒めること自体は間違いだとか、いけないことではありません。ただ、「100点とってすごいね」とか「お手伝いしてくれてえらいね」などと褒めるのは、できたことや役に立ったことに対する評価であり、子どものありのままを認めているわけではないですよね。

「〇〇できるのはよい」というメッセージは、裏を返せば「〇〇できないのはよくない」と同じ意味。褒めることばかりに重きを置くと、子どもが「できないと認められない」と感じたり、親に褒められることを優先したりするようになり、「私は私だから大丈夫」と思える自己肯定感を育むのとは逆方向にいってしまうおそれがあります。

子どもの自己肯定感を育むには、大人の視点でよい、悪いを評価するよりも、子どもの視点に立って子どものありのままの判断を認める言葉がけをするのがまず大事です。

自己肯定感の土台に! 「子どものありのままの判断を認める」声かけとは?

――親から見て好ましい判断を認めることは簡単そうですが、子どもがルールや常識に反することをしたり、しそうだったりするのに、その判断まで認めるのは難しい気がします。

天野さん 「認める」というと放置や放任をイメージして拒否反応を示される方もいますが、そうではないのです。

「子どものありのままの判断を認める」とはどういうことか、具体例を挙げますね。例えば、親子で公園に遊びに行った際、大きな滑り台があって、みんな行列を作って待っているのに、わが子がその行列に横入りして我先に滑ろうとしたとします。どんなふうに言葉をかけますか?

――えっ、それはさすがに「順番抜かししちゃダメ」「ちゃんと並びなさい」って叱ります。だって、よそのお子さんに迷惑をかけているじゃないですか。

天野さん そうですよね。親として子どもにルールを教える必要はあります。でも、頭ごなしに正論を押しつけても、子どもがパニックを起こしたりして効果がないことがほとんどではないでしょうか。

子どもを叱るときにも、まずは子どもの判断を認める言葉がけを先行させることが大切なのです。具体的には、次の3つのステップを踏んでください。

まず、第一に「そっか、滑り台、滑りたかったね」と子どもの気持ちを認めてあげること。ただ、それだけだと非常識な親になってしまうので、第二のステップで、並んでいる子どもたちに「ごめんね。うちの子が今、横入りしようとしちゃったね」と謝るなど、そのとき取るべきお手本としての振る舞いを示します

この2つのステップを踏んだうえで、最後に「みんなも滑りたくて並んでいるから、順番は守ろうね」とルールを教えるのが効果的です。

子どもの行動の背景にある気持ちを想像することの効用とは?

――「子どものありのままの判断を認める」とは、子どもを好き勝手にさせる放任主義とは違って、ちゃんとルールは教えるのですね。

天野さん 子どもにルールを伝えるときには順序が大事なんです。

自己肯定感は「器」、知識やルールは「水」に例えられます。水をたくさん入れたければ、まずは器を大きく育てる必要がありますよね。器を育てる前に「あれはダメ」「こうしなさい」などいろいろなルールを教えこもうとしても、あふれ出るばかりで身に付きません。ルールや知識を教える際は、まずは、子どもの視点に立って、子どもの気持ちをすくい上げる言葉がけが先です。

公園の滑り台のケースでは、たしかに横入りはルール違反ですが、子どもがそうした行動をとってしまったのには、何か事情があるのかもしれません。もしかすると、親の見ていないところで「お前なんかに滑らせてやらない」とまわりの子どもに意地悪されて滑れないことがあったのかもしれない。あるいは、以前は滑り台が怖くて尻込みしていたけれど、今日はママが一緒だから大丈夫…と思い立って、つい行列に突撃してしまったのかもしれない。

ただ横入りという行動だけをとらえて非難するのではなく、その背景にある気持ちに目を向けて「滑りたかったね」と言葉をかけてあげましょう。その一言が、「ああ、お母さん、お父さんは自分のことを分かろうとしてくれているんだな」という安心感を子どもにもたらし、その積み重ねが自己肯定感を育てることにもつながります。

親の声かけしだいで子どもの表情にも変化が…

――子どもにルールを教えるには、「子どもを認める言葉がけをする→親が手本を示す→ルールを説明する」という3ステップを踏むとよい、というのは目からウロコが落ちるようです。とはいえ、ついつい「ダメ!」と口走ってしまいそうです。

天野さん 絶対にこうしなければならないと固くなったり、はじめからうまくやろうと意気込んだりするのではなく、まずは「子どもは今何を考えているんだろう」「何を見ているんだろう」という視点をもつことにトライしてみてください。

子どもの視点に立ったら今までとは別の世界が見えてきて子育てが楽しくなりますし、視野を広げて価値観をたくさんもつことは親自身の成長にもつながります。

それに、子どもを認める言葉がけを実践された方は、みなさん口をそろえておっしゃるんです。「今までガミガミ言ってばかりだったのを、『君は~したかったんだね』と言葉をかけるようにしたら子どもの表情がパッと明るくなった」とか「子どものほうから学校であったことなどをどんどん話してくれるようになった」とか…。

やってよかったと実感できる瞬間は必ず訪れるので、お子さんに関心をもち、どんなふうに感じているのか想像力を働かせてみましょう。

子どもが話してくれないのは「聞き方」に原因があることも

――親の声かけしだいで親子のコミュニケーションにも好影響がもたらされるのですね。そういえば、「うちの子、あまり話してくれなくて…」との悩みを聞くこともありますが…。

天野さん 「子どもが話してくれない」とおっしゃるかたは多いのですが、実は「親が知りたいことを話してくれない」だけで、子どもは何かしら話していることがほとんどなんです。

例えば、子どもが「ミミズがね…」と話し始めたときに、「今そういう話はいいから」と制止したり、「あのね、えーとね」と子どもの話が要領を得ないときに「ちゃんと説明して!」と言ってしまったりすると、子どもはだんだん話す気をなくしてしまいます。

天野さん それから、よくやってしまいがちなのは、子どもの感情よりも事実にフォーカスしすぎてしまうこと。

例えば、子どもが「今日ね、すごくうれしいことがあったんだよ」と話しかけてきたときに、「え、何がうれしかったの?」と質問したとします。「AちゃんもBちゃんもできなかったことが、私だけできたの」と返ってきたら、すかさず「みんなができなくて、あなただけできたことって何?」とたたみかける。この聞き方は、子どもの立場からすると「全然私の話を聞いてくれないから、もういいや」となるおそれがあるんです。

――子どもの話した内容について掘り下げる質問をしていて、ちゃんと聞いているように感じられますが…。

天野さん そうですね。親としては子どもの話に関心をもっているし真剣なんだと思います。でも、子どもは感情を受け止めてもらって初めて理解してもらえた、聞いてもらえたと思うもの。だから、この場合は「それって何のこと?」と気になってもまずは「えー、それはうれしいね!」でいいと思います。

大人だってそうですよね。「今日、職場で若いねって褒められちゃった」と夫に話したときに、「え、相手はどういう立場の人?」とか「何歳ぐらいに見られたの?」など根掘り葉掘り分析モードに入られると、話す気がうせてしまわないでしょうか。「あー、ママは若いよね」と認めてくれればいいのに(笑)。それと一緒ではないかと思います。

子どもが自分から話したくなる親の関わり方とは?

――まずは「うれしい」という気持ちをオウム返しするだけでいいということでしょうか。

天野さん つらい、悲しい、腹が立つ…といったネガティブな感情でもそうです。例えば、子どもが学校から帰ってくるなり「今日、すごく嫌なことがあったの」と訴えて泣きだしたら、親としてはびっくりしますよね。心配でたまらず、「一体何があったの?」「誰かに何かされたの?」といろいろ問い詰めてしまいたくなることでしょう。

でも、この場合も、まずは「学校で嫌なことがあったんだね。それは泣きたくなるね」と子どもの気持ちや状態をそのまま受け止めて、肩を抱いたり背中をさすったり一緒に涙を流したりすればいい。そうすることで、子どもは安心感で満たされ、自分から「実はね…」と話しやすくなります。

――子どものほうから話すまで待つべきで、親から質問するのはダメなのでしょうか?

天野さん 質問するのがダメということはありません。子どもが落ち着いてきたようであれば、「いつ、どこで、誰が、何を、どのように」という4W1Hで事実を尋ねてもよいと思います。通常、質問は5W1Hといわれますが、「なぜ(Why)?」は非難されているように受け止められがちなので避けましょう。例えば、「どうして服が汚れているの?」ではなく、「いつ」「どこで」から入るほうが上手な聞き方です。

それから、子どもの話を聞くときには、あくまで聞き役に徹すること。「それはあなたのほうが悪いんじゃないの?」とジャッジしたり、聞かれてもいないのに「そういうときは~したらいいじゃない」などとアドバイスしたりするのはNGです。

ネガティブな感情を表出するのは、ポジティブな感情よりも気が重いもの。思い切って勇気を出してお母さんに打ち明けたのに受け止めてもらえないと、この先別の問題や、より深刻なトラブルが生じた際、子どもがひとりで抱え込んでしまうおそれがあります。

いざというときに子どもがいつでも親にSOSを求められるような信頼関係を築くためにも、子どもの気持ちを受け止める話の聞き方は非常に重要です。

***

自己肯定感とは、子どもを褒めちぎったり、叱らなかったりすることで培われるものではありません。「自分はここにいてもいいんだ」「ありのままの自分で大丈夫なんだ」という安心感を育むべく、まずは今日、お子さんの話に「そっか、そう感じたんだね」と子どもの気持ちをフラットに受け止めることから始めてみてはいかがでしょうか。

お話を聞いたのは

天野ひかり NPO法人「おやこみゅ」代表理事、フリーアナウンサー

上智大卒。テレビ局アナウンサーを経てフリーアナウンサー。NHK「すくすく子育て」キャスターとしての経験を生かし、子どもの自己肯定感を育てるコミュニケーションアドバイザーとして講演やセミナー講師などを務め、受講生は5万人以上。子どもの笑顔が輝く社会になることを願い、一児の母として子育ての喜びと大変さに共感を持って臨んでいる。『子どもを伸ばす言葉 実は否定している言葉』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)など著書多数。

この記事を書いたのは

中田綾美 ライター

成人までの人生を受験勉強にささげた結果、東京大学文学部卒業。その後なぜか弁護士になりたくて司法試験に挑戦するも、合格に至らないまま撤退。紆余曲折の末、2010年よりフリーライターの看板を掲げています。

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