「ひなちゃんの笑顔が第一優先」自閉スペクトラム症・重度知的障がいのわが子に向き合うシングルマザーの“ひなちゃんママ”。焦らず、比べず、できるだけイライラしない子育てのために大切なこと

うれしそうな顔でパクパクとごはんを食べる――そんなSNSでの発信が人気の7歳、ひなちゃん。3歳のときに自閉スペクトラム症、 6歳で重度の知的障がいという診断をうけ、小学2年生となった今、まだ会話はできません。

そんなひなちゃんの隣に寄り添うのは、いつもひなちゃんの笑顔を第一に考えるひなちゃんママ。シングルマザーとしてひなちゃんに向き合う日々の中で感じるうれしいこと、大変なこと。そしてできるだけ穏やかに子育てと向き合うための“いろは”をお伺いしました。

発語がない、つまさき立ち…周りとの成長の差に愕然とした1歳半検診

1歳を過ぎた頃から、つかまり立ちをする際につまさきで立つことが多く、「辛くないのかな~」と思っていました。これは、のちに自閉スペクトラム症のお子さんに多く見られる姿と知ることになります。

ひなちゃんママ:1歳半を迎える頃に、発語がないことや、名前を呼んでも振り向かないこと、目が合いにくいことにだんだんと違和感を感じ、成長について不安を感じることも増えました。当時、検診に行く足取りが少し重かったのを覚えています。

1歳半検診の会場で同じ年齢のお子さんの姿を見て、まず驚いたことが、お子さんと親御さんの意思疎通がとれていること。まだハイハイしかできず、私との意思疎通がとれないひなちゃんと、周りの子たちを比べてしまい、当時とても落ち込んでしまいました。

初めての療育。「ひなちゃんがどうしたら毎日を楽しく生きていけるのか」

ひなちゃんママ:その後、ネットで検索をして見つけた言語聴覚士さんに直接お会いして、娘の様子を見ていただきました。発達検査をすすめてもらう中で、成長のために何かひとつでも役に立つことがあればいいなという気持ちから、すぐに療育に通わせることにしました。

1対1で個室に入るタイプの療育では泣きだしてしまうことも多く…そして何より笑顔が少なく楽しく過ごせていないのでは…と思い、療育園にある親子クラスを試すなど、 ひなちゃんが少しでも楽しく通える場所を必死で探しました。

最終的には、よい先生とお友達に巡り合い、成長を目の当たりにすることになるのですが、30分のバス通園に加え、4時間の療育。初めてバスに乗っていくひなちゃんを見送るときには、心配で仕方がありませんでした。

ひなちゃんママ:ひなちゃんが産まれたときは「英語を習わせたいな」「ランドセルを背負って小学校へ通う姿が楽しみだな」「もう少し大きくなったら一緒に買い物や、親子でいろんな話をしたいな」…そんな将来の「したいこと」をたくさん思い描いていました。

でも、ひなちゃんの特性を受け止めてからは、「こう育ってほしい」「こうさせたい」と願うよりも、「ひなちゃんがどうしたら毎日を楽しく生きていけるのか」「どうしたら笑顔でいられるのか」を常に考えて、選択をするようになりましたね。

お友達や先生から学ぶことの多さと、重要さ。親としても大きな気づき

ひなちゃんママ:最初は、園でもひとりで遊ぶことが多かったです。年中さん後半になると、お友達と一緒に追いかけっこをしたり、誰かと一緒に遊んだりするという体験をしている姿を目にすることが増えました。家族以外の大人や同世代のお友達から学ぶことの多さは、私の想像していた以上でした。

例えば、乳幼児期から偏食がひどくて悩んでいましたが、周りのお友達と一緒に給食を食べる経験を経て、園ではおかわりをするほどに! 食べられるものも増えました。

トイレトレーニングもお友達の姿を見て習得していましたし、以前は多動で椅子に座ることができなかったのですが、今ではじっと座ってお絵描きをしたり、ごはんを食べたりすることもできるようになっています。親だけでは、これだけの成長は身に付かなかったかもしれません。

またその頃、今でもひなちゃんの趣味でもある“粘土”や“お絵描き”といったものづくりに出合い、園でもたくさん体験することができました。自分を表現できる方法が増えたことも、良かったことのひとつです。

“外で学ぶことの大切さ”には、親としても大きな気づきがありました。

写真カードやホワイトボード。イライラしないための余白とひと工夫

ひなちゃんママ:こだわりが通らないときなどは、かんしゃくを起こすことももちろんあります。現在、ひなちゃんは自分なりの切り替え方を知っていて、そこまでひどくはないのですが…例えば、今は「玄関を出るときに必ず自分の描いた絵を持っていかないといけない」というルールがあります。

朝は忙しいですし、「早く!!」という気持ちにもなってしまいがちなので、出発のだいぶ前の時間から「学校に行くよ~」という声掛けをしています。“ひなちゃんタイム”に親側が合わせることで余白が生まれ、イライラすることが減りました。

また、1日の予定を写真で見せながら、事前に伝えた状態で出かけるようにしています。以前は「トイレ」や「公園」などいくつかの写真カードを持ち歩き、行き先などを伝えていました。写真やイラストで見せることで、ひなちゃん自身も頭の中でイメージしやすく、パニックになりにくいのだと思います。

ひなちゃんママ:現在、自宅ではホワイトボードを活用していて、ひなちゃんはそこに【今何を食べたいか】【何をしたいか】などの単語を、ひらがなで書いてくれています。

会話のためのツールがあることで、言葉だけに頼らないコミュニケーションの方法を学べていると感じます。

“こぼしたなら拭けばいい”マインド

ひなちゃんママ:やはり私は親ですし、ひなちゃんが今何をしたいかなどは、意思疎通がとれなくてもわかるものです。ですが、あえて私が動くのではなく、“見守る”ことを意識しています。

自分で飲み物を注ぎたい、持っていきたい。そんなときにも本人の意思を尊重し、できるだけサポートに徹しています。

飲み物をこぼしたとしても、拭けばいいだけ。失敗してもいいんだというマインドと余白を意識すると、親側もイライラすることが減るように感じています。将来いつかは自分でなんでもできるように! と、今の経験はその第一歩だと思っています。

あきらめるのではなく、あえて外に出ようと決めた

ひなちゃんママ:スーパーのBGMが気になり耳を押さえて声を出したり、遊びの中で「おしまい」がわからず無理にやめさせるとかんしゃくにつながってしまったり…一歩外に出れば、人目が気になることばかりが起こってしまいます。

外出がおっくうに感じることもありますが、場数を踏むことで少しずつできるようになるのではないかと感じ、あえて一緒に外へ出かけることを意識しています。

以前、スーパーで一瞬、目を離したうちにいなくなってしまって冷や汗をかいたこともあります。1秒でも手を離せない、目を離せない。ずっと気を張っているのでへとへとになりますが、部屋の中に閉じこもるのではなく、外に出て、社会性を学ぶことが、成長のためにいちばんいいと感じています。

親側が満たされる方法を知っておくことも大切

ひなちゃんママ:イライラすることも不安になることもたくさんありますが、母親である私も、自分なりのリフレッシュの方法をいくつか持つようにしています。

ひとり時間をつくることでリフレッシュできるタイプなので、日中、車に乗って出かけたり、夜寝る前のちょっとした時間に大好きな芸人さんのYouTubeを見たり… 何より同じ境遇のママ友と話をすることで、この孤独な子育てが救われているように感じています。 頼れる人には頼ることも、ひなちゃんのためにつながると思っています。

言葉でのコミュニケーションはまだ難しいですが、毎日、ひなちゃんにできるだけたくさん話しかけながら過ごしています。その毎日の積み重ねが、いつかひなちゃんの言葉につながったらいいなと願っています。

“あきらめる”しかない世界がいつか変わるように

ひなちゃんママ:障がいのある子を育てることになるとは、正直全く想定していませんでしたし、実際に子育てをする中でさまざまな壁に直面してきました。なるべく外出しない方法を考えてしまうほど、人目が気になり、スーパーに行くだけでも気が抜けず、気持ちが落ち込むこともありました。

障がいのあるお子さんとそのご家族には、『あきらめなくてはいけないのかな』という気持ちを、どこかで抱えているように思うのです。

いつか…どんな特性のお子さんも、気兼ねなく自由に遊べるような環境が整い、障がいのあるお子さんも、そのご家族も当たり前にさまざまなことを体験して、楽しめる世の中になったらいいなと思います。

女の子の自閉症や知的障がいのあるお子さんの成長の様子などを発信している方は、まだ少ないと感じています。私たち親子の発信が、さまざまな特性への理解につながり、誰もが生きやすい社会への一助になれたらうれしいです。

※写真はすべてひなちゃんママ提供。

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お話を伺ったのは

ひなちゃんママ

38歳、A型、 7歳の1人娘を育てるシングルマザー
長所 世話好き  短所 忘れものが多い  好きなこと 車で遠出。

この記事を書いたのは

茂木雅世 ライター

日本茶と植物をこよなく愛する一児の母。小学生になった娘の早朝お弁当作りにあたふたしながら、疲れたときには、ネコ吸いならぬ「娘吸い」で栄養補給をする。FMヨコハマでのラジオDJやwebメディアでのお茶連載、企業のための音声コンテンツ制作などを生業にしながら、育児の支えとなってくれた「HugKum」での執筆も続ける。著書に「東京のほっとなお茶時間」「東京のおいしいボタニカルさんぽ」。

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