「百ます計算」などの「隂山メソッド」が多くの学校・家庭で成果をあげている隂山英男先生が、子供の学力を家で伸ばす方法について教えてくださるコーナーです。今回のテーマは、小学校に入学してすぐの時期における家庭学習についてです。
子供にとって心地よい学習環境を作るために
「早寝早起き朝ごはん」「短時間集中学習」に続く、子供を伸ばす3つ目の柱は「心地よい学習環境」についてです。
かんたんにいえば、子供はリラックスさせるほど伸びる、という話です。
親の笑顔が子どもをリラックスさせ、集中力を高める
子供のリラックスを生む最高の方法、それは親の笑顔です。 子供は親の笑顔を通して、自分が愛されていること、自分が認められていることを直感的に感じ、満足し、安心し、リラックスします。そしてリラックスした状態こそが、最大の能力=集中を発揮する条件なのです。反対に、緊張は集中ではなく、萎縮を生み出します。それは世界的なスポーツの大会の結果を見ても明らかです。メダル確実というプレッシャーにさらされた何人かの選手が、残念な成績にとどまったことをご記憶でしょう。逆に、よい成績を収めた選手には、常に笑顔の指導者が側にいました。この関係は、親子の場合も同じです。
とはいえ、子供はなかなか言うことを聞きません。親はつい、「ちゃんとしなさい!」「早くしなさい!」と、小言を言い続けてしまいます。しかし、その言葉には効果はありません。何度言っても効果がないいらだちがつのると、ついには「自分で考えなさい!」「もう知らない!」といった言葉につながります。そして、そんな言葉を受けた子供のほうも、「どうしたらいいのかわからない」という不安から、緊張し、萎縮してしまいます。こうなると学習に集中するどころではありません。 そうならないためには、親が笑顔でいることがいちばんです。
笑顔で褒めてあげましょう
そのための第一歩が「早寝早起き朝ごはん」「短時間集中学習」です。規則正しく生活でき、勉強もてきぱき済ませることができる子の親は、安心感からいつも笑顔で子どもに接することができます。 親が子どもに注ぐ笑顔の量に比例して、子供はリラックスし、学力も伸びていきます。私が、特に低学年のうちは子ども部屋ではなく、リビングで学習することをおすすめしている理由もそこにあります。
プリント1枚を集中してやりきった子には、笑顔とともに「すごい! こんなことが3分でできるなんて!」と伝えてあげましょう。それが子供の自己肯定感を育み、さらに高いレベルの集中を発揮するきっかけとなるのです。
記事監修
1958年兵庫県生まれ。1980年、岡山大学法学部卒業後、教職の道へ。百ます計算をはじめ、「読み書き計算」の徹底した反復学習と生活習慣の改善に取り組み、子ども達の学力を驚異的に向上させた。その指導法である「陰山メソッド」は、教育者、保護者から注目を集め、「陰山メソッド」を教材かした『徹底反復シリーズ』は、総計770万部の大ベストセラーとなっている。現在、YouTube『陰山英男公式チャンネル』で授業や講演を公開して注目を集めている。
編集協力/小倉宏一(ブックマーク) 撮影/奥田珠貴 (初出:『小学一年生』2015年7月号)