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弁護士は学力を生かせる上に「自由」だから職業として選んだ
――おふたりとも、現在若手弁護士として活躍されていますが、いつ頃から弁護士を目指したのですか?
林さん 私は公立中学の出身ですが、自分で言うのもなんですが中学では成績が良い方で。勉強ができることを生かせる職業ってなんだろうなと思ったときに浮かんだのが、弁護士とか検察官だったんです。
高校では、周囲の理系の同級生には、ひらめく能力に優れた「天才型」が多かったです。文系はどちらかというとトータルでの知識や思考が得意というか、そんな印象で。自分は圧倒的に文系だなって思ったから、文系でいちばん上をめざそうと思ったんです。
法曹界での仕事は裁判官、検察官、弁護士と3つの選択肢がありますが、その中で多くの人や分野と関わることができるのは弁護士だろうと感じていました。そして、もっとも自由にやりたいことができるのが弁護士だろうとも思っていました。

――弁護士さんって「自由」ですか?
林さん 裁判官も検察官も、自分で仕事をする相手を選ぶことはできません。弁護士は逆に、クライアントから依頼を受ける立場なので、仕事を選べる。さまざまな業界からの依頼があり、業界のことをよく知りながら、アドバイスをしたり、代理人になったりすることができます。社会人になる前って、実際に仕事を経験できる機会があまり多くないじゃないですか。でも特定の分野の仕事に就職しないといけない。実際に仕事をしながら、自分の興味がある分野を見つけて、その分野の専門家になることができるのが弁護士ならではの魅力だと思います。
自分はトライアスロンや自転車競技の選手でもあり、スポーツが大好きだから、COASをはじめとしたスポーツに関する案件に関わっています。弁護士という仕事に自分の興味を掛け合わせることができる。そして、依頼をいただく個人の方や企業・団体のやりたいことを形にして、社会的に役に立つこともできます。

トライアスロン選手でもある林拓弥弁護士。アスリートが誹謗中傷の不安なくSNSを活用・発信できる未来を目指し活動中
実際に「えん罪」を経験し、弁護士という職業に興味を持った
――高橋さんが弁護士になったきっかけは?
高橋さん 学生時代の話ですが、自分がやっていないことで先生にめちゃくちゃ怒られたことがあるんです。体育会系の教師で、有無を言わさず「来い」と言われて指導室に向かう廊下をついて歩きながら「何のことですか?」と聞いても教えてくれない。指導室に入れられて、まあひどいことをされたので、恐怖でわけがわからずあやまりました。
始終、理由も知らされず反抗もできなかった自分。解放されてからも当然むしゃくしゃして、いろいろ友だちに聞いてみたら、別の人と間違われていたことがわかりました。人違いですね。これが「えん罪」ってやつだ、と腹が立った。証言してくれる友だちと一緒に職員室に行って、その教師に訴えたけれど、あやまるどころか無言で後ろ手で「帰れ」みたいなポーズをされたんです。

僕らの世代だと、木村拓哉さんのドラマ『HERO』で検察官ってかっこいいな、と思って法曹を志す人とかも多いのですが、自分は全然ポジティブな理由とか、憧れとかじゃなくて、こういった嫌な経験を経て、えん罪に苦しんでいる人を助ける弁護士という仕事に強い興味を抱いたという経緯でした。法律家になるには司法試験の合格が必要ですが、簡単なものではないと思っていましたので、少しでも合格率を上げるために、野球部を高校途中で辞めて大学受験に切り替えました。
「法科大学院を卒業」するか、「予備試験に合格」して司法試験受験資格を得る
――おふたりともすばらしい学習力でいらしたのですね。法律家になるには法科大学院を卒業して司法試験に合格するのがマストなのですか?
林さん ルートはふたつあります。
法科大学院ルートは、法科大学院(ロースクール)に入学し、所定の単位を取得して修了することで受験資格を得ます。法学部を卒業した人は2年間、そうでない人は3年間学びますが、1年以内に修了見込みでも司法試験は受験可能。合格率は30〜40%程度です。法科大学院を卒業して5年間は受験できます。
予備試験ルートはまず予備試験に合格し、その後に司法試験に合格するやり方で、中学さえ卒業していれば予備試験は受験可能です。でも、この試験がとても難しく、予備試験の合格率は3%程度とも言われています。この予備試験に合格した受験生の司法試験合格率は90%を超えています。

――いずれにしても、司法試験に合格するには3,000~5,000時間の勉強が必要と聞きます。法科大学院の勉強をしながらその時間を受験に費やすのはとても大変そうです。暗記も多そうですね。
林さん たしかに、暗記は多いです。でも、合格する人も不合格になる人も、知識量はあまり変わらないことも多いです。覚えたことを、どう分析できるか。司法試験では決められた正解のない事例が与えられて、どういう結果になるべきかという分析の過程を問われます。結論が合っているかどうかが問題ではないんです。ひたすら覚えるだけではダメで、実際に答案を作ってアウトプットの演習をする勉強をしてきました。
高橋さん 僕は覚えるのが苦手で、ひたすら暗記ノートを作って、覚えて、アウトプットすることを繰り返していました。この反復作業を繰り返すのはかなりつらかった。
法律事務所の職員になってもいいし個人事業主でもいい。依頼主も選べる
――司法試験に受かってからはどのように働くのですか?
高橋さん 最初は弁護士事務所に所属する人が多いと思います。一定規模の弁護士事務所に入れば、色々な種類の案件があるので、豊富な経験を積めます。弁護士は、基本的には個人事業主ですので、事務所の案件もやるし、自分でつなげた仕事もするというパラレルな働き方ができます。人によっては起業する方もいるし、企業内弁護士として労働者として働く人もいるし、自分で事務所を経営する人もいます。100人いたら100通りの働き方があると思います。

林さん 私自身、弁護士30名程度が所属する事務所に所属して、さまざまな案件を通して経験を積みながら、事務所の案件とは別に弁護士個人として案件を受任しています。個人として仕事を受けるかどうかは自由に決めることができます。COASへの所属も、高橋さんに誘われて決めたんです。
高橋さん 毎日の働き方も人それぞれです。林さんのように朝早く起きてトレーニングしてから働く人もいれば、毎晩遅くまで会合などで酒を酌み交わし、昼の12時から仕事をする人もいます。私も昔は10時に起きて昼前に事務所に着き、夜遅くまで事務所にいる、という働き方をしていました。今は朝型になっています。そのあたりも私生活の変化に合わせて自由にできます。
毎日の働き方が決まっているわけではないので、COASとしての活動もできますし、取材を受けたりメディアに出演したりする時間もあるわけです。
AIが弁護士の仕事をすべて担うことはない。困った人を助けるのは「人」
――今はさまざまな仕事がAIにとって替わられていますが、弁護士の仕事はどうでしょうか。
高橋さん 弁護士の仕事もAIで代替されていくことも多いでしょうね。でも、シビアな交渉案件だったり、対話が必要な仕事はAIには難しいでしょうし、弁護士という職業がなくなることはないと思います。
林さん 何かしら困ったことがあるから弁護士にご相談されるのですが、その困りごとは千差万別ですし、みなさまにとっての最適解もひとつずつ違います。

高橋さん アスリートの誹謗中傷についても、大きく社会問題になったのは比較的最近のことで、実効的な対策も模索中ですし、法的な課題も山積みです。自分たちができることを一つ一つやっていく必要があります。弁護士の仕事の可能性はたくさんあると思いますね。
ーー今はAIエンジニアや医師など、理系の仕事に注目が集まりがちですが、弁護士の仕事も魅力的です。自由度が高く、自分らしく社会貢献ができるのはすばらしい。お子さんの将来の職業としても期待したいですね。
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お話を聞いたのは
高橋駿さん(写真・右)
弁護士/COAS発起人。2016年早稲田大学法学部卒業。2018年早稲田大学法科大学院修了。2019年弁護士登録、2024年Field-R 法律事務所入所。中央大学法学部非常勤講師(2023年~「健康・スポーツ科学B(スポーツ法)」担当)も務める。
林 拓弥さん(写真・左)
弁護士/COASアスリートパートナー。2014年愛知県立旭丘高等学校卒業、2018年一橋大学法学部卒業、2020年一橋大学法科大学院修了、2022年 弁護士登録・東京八丁堀法律事務所入所。トライアスロン・自転車競技の現役選手でもある。
COAS
COAS(Combatting Online Abuse in Sports)は、スポーツ界における誹謗中傷に関する声明・ニュース・対策等に関する情報を集約し、スポーツ界における誹謗中傷を抑止することを目的に活動している。現在は6人の弁護士にて運営。
この記事を書いたのは
インタビューを中心に教育、子育て、医療、介護、食などのテーマで WEB・雑誌・書籍などの記事を執筆。お話を伺う方にたくさんの学びをいただいています。社会福祉士、法定成年後見人、中学校・高等学校教諭一種免許状、生涯学習2級インストラクター(栄養と料理)
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