【ゆる〜く楽しむ美術案内】「マリメッコ展 模様のちから」すてきな模様が誕生したヒミツを見つけよう!

こんにちは!
学芸員資格保有のイラストレーター、新里碧(にっさとみどり)です。
【ゆる〜く楽しむ美術案内】と題しまして、とっつきにくそうな美術の世界を親子で気楽に楽しむためのtipsをご紹介します。
今回は、東京都庭園美術館で開催中の展覧会「マリメッコ展 模様のちから Marimekko: Art of Printmaking -Beauty, Dream, Love」へ。
マリメッコファンはもちろん、カラフルな工作が好きなお子さまもきっと刺激を受ける、そんな展覧会でした。

マリメッコって、知ってる?

マリメッコとは、1951年に北欧の国フィンランドで生まれたデザインハウスのこと。
「マリメッコ」は、フィンランド語で「マリのドレス」と言う意味。
大きなケシの花を大胆で鮮やかに描いた模様「ウニッコ」柄は、一度は目にしたことがあるのでは?

中央の緑とピンクのグラデーションの柄が「ウニッコ」

マリメッコは生地だけのブランドではなく、ファッションからインテリア、テーブルウェア、日常の小物まで様々なもののデザインも手がけています。
これまで生み出されたプリント・デザインは3,500種類以上!
そのどれもが、個性的でワクワクするような模様ばかり。

カラフルで、見た人を明るい気分や楽しい気分にするような模様がたくさん!
北欧のフィンランドは冬がとても長く、日本よりも太陽が出ている時間が短いのです。マリメッコは家の中でも太陽みたいに明るい模様に囲まれて過ごせるようにと、生み出されました。

暗いお家の中でも明るい気分になるデザイン!

フィンランドで暮らす人々の工夫から、人気の北欧デザインが生まれたんですね。

色と色の重なりに注目!

展示風景 左のドレス:図案:アンニカ・リマラ《ケイダス》(オアシス)1967年、ドレス:アンニカ・リマラ《モンレポス》(私の隠れ家)1967年

マリメッコの生地は「シルクスクリーン」という方法でプリントされています。
せっかくなので、シルクスクリーンの簡単な説明をします。

デザイナーが考えた模様を版で1色ずつ布に刷っていきます。
現在は機械化も進み、精密な模様も刷ることができるようになりましたが、マリメッコが始まった当時はまだ手で人が刷っていました。
なので、どうしても色と色の境界線に色が重なる部分ができてしまいます。
写真のドレスを見てみると、オレンジ色と青色の重なったところが、2色混ざって茶色になっています。
でも、そんな“偶然”も、マリメッコでは、“失敗”にせずにデザインの一部として取り入れていきました。
とっても面白いですよね。
絵の具やクレヨンで絵を描くとき、偶然混ざってできた色が結構好きな色だった、という経験を思い出しました。

模様の名前を当ててみよう!

マリメッコの生地や服は、ユニークな名前がつけられているものがたくさんあります。
展覧会のキャプション(説明)にも注目してみましょう。

この2着のドレスのタイトルは、何だと思いますか?


左が「シダ」で、右が「雲」なんです。
同じ模様でも色の組み合わせが違うと印象が違って見えるからでしょうか。
左のドレスの2色が重なった部分は、植物の葉のように見えて、右のドレスは黄色く太陽が輝く空に紫色の雲が浮かんでいるようにも見えます。

【上の写真 左:図案:アンニカ・リマラ《ランケッティ》(フォルム)1963年、ドレス:アンニカ・リマラ《サニアイネン》(シダ)1966年、右:図案:アンニカ・リマラ《ランケッティ》(フォルム)1963年、ドレス:アンニカ・リマラ《ピルヴィ》(雲)1964年】

では第2問。左のドレスの模様の名前は何でしょうか?
答えを知ると、きっと「そう見えてくる!」と思う名前です。
ヒントは「宇宙」
ぜひ、答えは展覧会でチェックしてみてくださいね。

日本人が作った模様もたくさん

左:図案:脇阪克二《カタラ》(偽りの)1970年、ドレス:リーサ・スヴァント《リエユ》(泥)1970年、中央:図案:脇阪克二《セミラミス》(セミラミス〔古代アッシリアの伝説の女帝〕)1972年、ドレス:リーサ・スヴァント《クサンティッパ》(気難しい女性)1974-75年、右:図案:脇阪克二《セミラミス》(セミラミス〔古代アッシリアの伝説の女帝〕)1972年、ドレス:リーサ・スヴァント《トラッピ》(オオノガン〔鳥〕)1973年

こちらの3着のドレスは、日本人デザイナーの脇阪克二さんがデザインした図案(模様)を使ったドレスです。
今から58年前の1968年、京都からフィンランドに渡った24歳の脇阪克二さんは、フィンランド人以外で初めてマリメッコのデザイナーになりました。
その6年後に、石本藤雄さんがマリメッコに入社。
日本人デザイナーの生み出す模様は、マリメッコの他のデザイナーたちにも多くの影響を与えました。
石本さんは32年間で約400点ものデザインを手がけ、なんと、マリメッコ史上最もたくさんデザインを作ったデザイナーの1人なんです!

左:図案:石本藤雄《ヴィレ》(そよ風)1977年、ドレス:マリメッコ《ソピヴァ》(適切な)時期不詳、右:図案:石本藤雄《マイセマ》(風景)1982年

こちらのドレスと生地の図案(模様)のデザインは、石本藤雄さんによるもの。
フィンランドと日本のデザインの共通点には、自然を愛する心、シンプルなものを好むところ、美しさは日常生活の中にあるという考えがあるそう。
たしかに、マリメッコのデザインは、花や植物、石といった自然のモチーフが多い印象がありますし、和室にも不思議と似合うのは、そんな理由からかもしれませんね。
現在、脇阪克二さんは京都のテキスタイルブランドSOU・SOUで活躍中。石本藤雄さんは地元の愛媛県松山市にアトリエをつくり、作品制作をしています。
今年の12月19日には松山城の近くに『石本藤雄ミュージアム』もオープン予定なので、気になった方はチェックしてみてください。

すてきな模様はどうやって生み出される?

左:マイヤ・ロウエカリ《〈プータルフリン パルハート〉のための最初のスケッチ》右:スケッチを元に制作した図案を使用した食器

完成した製品の他に、マリメッコのデザイナーたちが描いたスケッチの展示もありました。
お店に並ぶピカピカの製品たちも、こんなふうに紙にスケッチをするところから始まったんですね。
「どんな模様にしようかな?」と、考えながら描いているデザイナーたちの姿が想像できます。

展示風景 マイヤ・ロウエカリ デザイン関連資料

この切り絵も“模様のもと”。
いろいろな植物のシルエットがたくさん並んでいます。
さきほどのスケッチと同じデザイナーさんですが、色紙をチョキチョキ切って模様を考えることもあるんですね。

展示風景 アンッティ・ケッキ デザイン関連資料

こちらは、マリメッコと一緒にデザインを作っているグラフィックデザイナーのアンッティさんによる切り絵。
紙もハサミも特別なものじゃなくて、普通に手に入るものを使っているそう。
静かな音楽を聴きながら、床に座ってゆったり制作をするスタイルで、切り取ったあとの紙の形や、風に吹かれて偶然重なったかたちからデザインが生まれることもあるんですって。
こんなふうに、マリメッコの模様はたくさんのデザイナーたちによって作られています。
デザインも個性的ですが、デザインを生み出す方法も個性があるんだとわかる展示でした。
こういった実物がじっくり見られるのも、展覧会ならではですね。

カラフルな布は、どうやって作ってる?

展覧会をどんどん進んでいくと、大きなスクリーンに映像が流れる部屋がありました。
マリメッコの生地を印刷している工場の様子を映像を使って表現したものです!
カラフルな模様がどんどん作られていく様子は見事。

この大きなパネルは、シルクスクリーンで実際に使用していた版。
シルクスクリーンは、何度も使うと、どうしても穴が開いてしまうものなので、その穴をテープで補修して大事に使っているのがわかります。

重要文化財の建物との組み合わせも、見逃せないポイント

展覧会の会場、東京都庭園美術館は、「旧朝香宮邸」という重要文化財の建築物。
1933年(今から93年前!)にできた、歴史ある建物なんです。
朝香宮(あさかのみや)さまという昔の皇族(天皇一族)が暮らした、とっても豪華な家。
当時フランスで流行っていた、アール・デコというスタイルがふんだんに取り入れられているのが特徴です。

図案:アンニカ・リマラ《ペトローリ》(石油)1963年、ドレス:アンニカ・リマラ《シールクス》(サーカス)1963年

真っ白な空間の美術館とはちょっと違う、作品の楽しみ方がある美術館です。
マリメッコの模様も、建物のドアのガラスの模様と組み合わさって、なんだかすごく楽しい雰囲気に見えませんか?

左:図案:アンニカ・リマラ《イソ ライネ》(大きな波)1965年、ドレス:アンニカ・リマラ《ナッピメッコ》(ボタンダウンドレス)1967年、右:図案:アンニカ・リマラ《ライネ》(波)1965年、ドレス:アンニカ・リマラ《ティーラ》(アジサシ〔鳥〕)1966年

こちらの部屋の展示は、なみなみ模様のドレスと、壁紙・カーテンの幾何学模様が合わさって、空間全体が動き出しそうなリズムを感じます。

ほかにも、ドアのデザインやランプやシャンデリアもすごく凝ったデザインなので、マリメッコのデザインと合わせてぜひ、いろいろ発見してみてくださいね!

「作ってみたい!」と思ったら、こんな工作はいかが?

展覧会を見て、刺激を受けた未来のデザイナーたちに、家でできるおすすめの工作をご紹介します。

ハサミなど危ないところは、無理しないで大人に手伝ってもらってね。
デザイナーになったつもりで、ぜひチャレンジしてみてね!

展覧会オリジナルグッズ、おすすめはこちら

ここでしか買えない、オリジナルグッズも見逃せません。
展覧会グッズの定番のステッカーやポストカードの他に、うちわや扇子といった、和風のアイテムもありました。
今回私が注目した、おすすめグッズはこちら。

トートバッグ 2,200円(税込)

展覧会グッズの定番、トートバッグもこんなにポップでかわいい!
そして、マリメッコ製品としては、手に取りやすいお値段なのもうれしいところ。
薄めの生地なので、畳んで普段のバッグに忍ばせるのも良さそうです。
ちなみに、私は迷って買わなかったことを後悔しています…。

左:クロッキー帳 1,100円(税込)、右:クーピー 1,200円(税込)

私もこちらと同じ型のクロッキー帳(展覧会グッズではないもの)を普段から愛用しています。
クロッキー帳は、線がない無地の紙が閉じてあるノート。
鉛筆や色鉛筆、クーピーと相性が良く、するすると描きやすい紙です。
薄めの紙ですが、その分ページ数が多いので、失敗を恐れずに、どんどん思いついたものを描いていける気軽さが良いところ。
展覧会オリジナルカラーのクーピーセットで、自分だけの模様やスケッチを描いてみては。

子連れや障害のある方にも鑑賞しやすい取り組みも

無料配布している『ジュニアガイド』

庭園美術館では、子連れや障害のある方にも、展覧会を鑑賞しやすくする取り組みがおこなわれています。

●ジュニアガイド

展覧会の会場で無料配布している紙のガイド。
お子さん向けに、展覧会の見どころや説明がわかりやすく書かれています。

※配布数に限りがあります。大人の方のお持ち帰りはご遠慮ください。

●フラットデー

障害がある方も、赤ちゃん連れの方も、だれもが気兼ねなく来館できる「ゆったり鑑賞日」、本館内でベビーカーを利用できる「ベビーアワー」もあります。

※会期中の実施日など、詳しくは公式サイトをご覧ください。

今回の「マリメッコ展 模様のちから」は、東京都庭園美術館という、もともと生活するために作られた空間の中でマリメッコのデザインを見ることができるというところが特に印象深かったです。
マリメッコのカラフルな服やプロダクトが暮らしを明るく照らし、豊かな気持ちにしてくれることが実感できる展覧会でした。
展覧会を出る頃には、すてきな模様たちに、お日様のように暖かく包み込まれたような気持ちになりました。
ぜひ、マリメッコの魅力の秘密を体験しに行ってくださいね!

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「マリメッコ展 模様のちから Marimekko: Art of Printmaking -Beauty, Dream, Love」

●展覧会は日時指定予約制です。

公式ウェブサイト: https://www.teien-art-museum.ne.jp
会場:東京都庭園美術館
会期:2026年10月3日(土)〜12月20日(日)
開館時間:10:00~18:00(入館は閉館の30分前まで)
※11月6日(金)、13日(金)、20日(金)、21日(土)、27日(金)、28日(土)、12月4日(金)、5日(土)は夜間開館のため20:00まで開館
休館日:毎週月曜日
※ただし、11月23日(月)は開館、11月24日(火)は休館
観覧料(税込):一般 1,400円、大学生(専修・各種専門学校含む) 1,120円、高校生・65歳以上 700円、中学生以下入場無料

各種割引など、詳しくは公式サイトをご確認ください。

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この記事を書いたのは

新里 碧(にっさと みどり) イラストレーター

東京芸大を卒業後、広告代理店勤務を経て、フリーランスのイラストレーター兼ライターとして活動中。クライアントワークのほか、アート教室や手芸教室も主催。ものづくりが大好きな小学生ママ。著書『アプリ婚 お見合いアプリで出会って1年で婚約→結婚しました』(小学館)

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