《小学校高学年からの性教育》どこから話す? 性教育YouTuberシオリーヌさんに聞く、体の変化・同意・恋愛をめぐる親子の会話

「性教育は大切。でも、どう切り出せばいい?」「恋愛のことまで聞いたら、嫌がられそう…」。子どもが小学校高学年になると、伝えておきたいことは増えるのに、かえって話しにくくなることも。親世代が十分に教わってこなかった性の話に、どう向き合えばよいのでしょうか。助産師で性教育YouTuberのシオリーヌさんに、家庭での性教育の進め方や、性や恋愛について話すときに親が大切にしたい姿勢を伺いました。

もう小学校高学年…性教育は何から始めればいい?

――これまで性教育をあまりしてこないまま、子どもが小学校高学年に。何から始めればよいでしょうか。

シオリーヌさん:家庭での性教育というと、ある日「ちょっと大事な話があります」と子どもを呼んで、「避妊というのはね」「コンドームというものがあって」と、改まって説明するイメージをお持ちの方も多いと思うんです。もちろん、そういう場面も必要だけれど、性教育って、日常会話の積み重ねなんですよね。

今まで避けてきた話を急に始めるのは難しい、というご相談もよくいただきます。でも思春期は、生理や精通など、体が変化する時期。逆にそれが話し始めるきっかけにもなると思うんです。

例えば生理なら、「学校に持っていくものを一緒に準備しようよ」と、ナプキンの実物を見たり、生理用のショーツやポーチを買ったり。そんなところから、「こういう話は普通にしていいんだよ、大事なことなんだよ」と伝えられるのかなと。

――確かに生理は、一緒に準備するところから始められますよね。男の子については、どう伝えればよいでしょうか。

シオリーヌさん:何も知らないまま精通を経験すると、「大変な病気になったんじゃないか」と不安になるお子さんもいるんですよ。だから、実際に起こる前に、成長に伴う変化だと伝えておく。「寝ている間に下着に精液がつくことがあったら、軽く洗ってから洗濯機に入れてね」と、対処まで話しておけるといいと思います。

――大切だとわかっていても、親自身が性の話をするのは恥ずかしい、というご家庭もあるかと思います。

シオリーヌさん:そうですね。私たちって、性の話に慣れていないんですよ。下ネタのように恥ずかしいものとして扱われる話か、「命の誕生ってすばらしい」という神秘的な話か。その両極端は聞いていても、真ん中にあるはずの「今日のお母さんは生理です」といった日常生活の中にある話には、あまり触れてこなかった。

だから、まず親御さんが性教育の動画を見たり、本を読んだりしてほしいんです。「生理が」「ホルモンが」と普通に話しているのを聞くうちに、少しずつ特別な言葉ではなくなってくると思うので。

私も、今でこそひょうひょうと話していますけど、講演を始めた頃は、マイクを通して性の話をすることに少し抵抗がありました。でも今は、全くない。これは慣れです。

子どもに話すのが難しければ、パートナーや友だちと「子どもの性教育って、どうしてる?」と話すところからでもいいと思います。

答えに困ったら、うそをつかずに「少し時間をちょうだい」

――子どもから質問されても、その場でうまく答えられる自信がありません。

シオリーヌさん:そんなときは、いったん保留でいいんですよ。「すごく大事な質問だから、ちゃんと答えたいんだけど、どう説明したらいいか考える時間をちょうだい。必ず答えるからね」って。困っていることを隠さずに伝えていいと思うんです。ただ、その場をごまかすためにうそをつくのは、ぐっと我慢してほしい。子どもって、信じてしまうので。

――その場しのぎでついたうそが、後で子どもを困らせてしまうこともあるのでしょうか。

シオリーヌさん:以前、お話を聞かせてくれた男性が、小学生くらいのときに「赤ちゃんって、どこから生まれてくるの?」と聞いたら、お母さんが「おへそ」と答えたそうなんです。

へその緒でつながっていた、という話もあるし、ちょっと本当っぽいじゃないですか。「こんなに小さなところから出てくるなんて、すごいな」と、長いこと信じていたそうです。

それで、学校で「赤ちゃんって、おへそから生まれてくるじゃん」と言ったら、友だちにすごく笑われてしまった。そのことも、お母さんにうそをつかれていたこともショックで、今でも覚えていると。親としても、そんな思いをさせたいわけではないですよね。

――その場で答えなくてもよいと聞くと、少し安心します。保留にしたあとは、どう伝えたらよいですか。

シオリーヌさん:本や動画で調べて、自分が話せそうな言葉で伝えてみる。それでも口に出すのに抵抗がある、自分で説明する勇気がないと思ったら、「この間、聞いてくれたことの答えを見つけたよ。この絵本、一緒に見てみよう」とか、「この動画を一緒に見てみよう」と誘ってもいい。親子で一緒に学ぶ形でも、全然いいんですよ。

「いい質問だね。聞いてくれてありがとう」と受け止めれば、「性のことを聞いちゃいけないんだ」というメッセージを伝えずに済むと思います。

恋愛が始まる前に伝えたい「同意」のこと

――恋愛に興味を持ち始める時期、「同意」は家庭でどのように伝えるとよいでしょうか。

シオリーヌさん:人の体に触れるとき、とくにプライベートな接触をするときには、相手の同意を確認する。それは、日常の中で繰り返し伝えていくことだと思います。

うちの娘はまだ4歳ですが、遊びたい気持ちが勝つと、友だちの手を勝手につなぎに行くことがあるんですよ。そのたびに「今、いいって聞いた?」「つなぐ前に、いい?って聞くんだよ」と伝えています。「いい?」「いいよ」のやり取りをしてから。その経験を重ねているところです。

――言葉で教えるだけでなく、普段から経験していくんですね。

シオリーヌさん:そうですね。ただ、まず親が子どもの意思や同意を大切にしていることも必要だと思うんです。

小さい頃は、おむつを替えたり、お風呂で体を洗ったり、親が体に触れる機会が多いじゃないですか。私も無言で触らずに「ちょっとおむつを見ます」「おむつを替えるね」と声をかけていました。プライベートゾーンを自分で洗う練習も、その一つです。

着るものなど、親が決めてきたことも、成長に合わせて少しずつ本人に任せていく。子どもに「友だちに聞いた?」と言っている自分は、普段、子どもに聞いているかなって。

断られても、自分を否定されたわけではない

――相手の意思を尊重してほしい一方で、断られて子どもが傷ついていたら、親としても気になります。

シオリーヌさん:娘が断られたときは、私も結構フォローに入ります。公園で「一緒に遊ぼう」と誘って断られたら、「あなたのことが嫌いって言ったんじゃないよ。あなたは滑り台をしたかったけど、あの子は今、ジャングルジムで遊びたいのかもしれないね。そういうときって、誰にでもあるでしょ」って。

――恋愛で断られたことを受け入れられず、相手を傷つけてしまう事件も耳にします。幼い頃のこうした経験が、加害を防ぐことにもつながるのでしょうか。

シオリーヌさん:そう思います。そこで伝えたいのが、同意や、人と人との境界線なんですよね。自分の体のこと、自分の人生のことを自分で決める権利は、あなたにもあるし、相手にもある。だから、自分の気持ちだけで進めず、相手の意思を尊重することが大切なんです。

相手が「NO」と言っているのに強要することは、暴力になり得るし、犯罪につながることもある。してはいけないこととして、繰り返し伝えていく必要があると思います。

断られて悲しい、寂しいという気持ちは否定しない。でも、その気持ちを相手にぶつけて、何とかしてもらおうとするのは違いますよね。

――性別に関わらず、どの子にも必要なことですね。

シオリーヌさん:はい。体の機能や持っている臓器によって説明する内容は違いますが、人権や同意の伝え方を変えることはありません。男の子だから加害する側、女の子だから被害に遭う側と決まっているわけではなく、どの性別の子も、どちらの立場にもなり得ると思っています。

スマホ時代の性教育。画像や動画との付き合い方

――小学生にもスマホが普及し、意図せずとも性的な画像や動画に触れてしまうこともあります。事前にどんなことを話しておけばよいでしょうか。

シオリーヌさん:ここでも根本は同意や権利の話で、相手の許可なく性的な画像を撮ってはいけない、と伝えていく必要があります。

自分が撮ったり、撮られたりする側でなくても、できることはあるんですよ。友だちが相手の許可なく撮影していると知ったときに「やめようよ」と言う。直接止めるのが難しければ、大人に伝える。そういう行動を取れる人を育てることも、性暴力を防ぐために大事なのかなと。

――大人も、子ども同士のことだと「ふざけただけ」と受け止めてしまうことがありそうです。

シオリーヌさん:例えば、修学旅行でお風呂をのぞこうとした子を、「そんなことしちゃダメだぞ」と注意しながら、大人もちょっと笑っている、ということもありがちですよね。ただ、それだと「大したことではないんだ」という印象を与えてしまいます。

笑って済ませられることではない、ときちんと受け止める。「これは遊びじゃなかったんだ」と伝わる態度を、大人が見せることも必要だと思います。

――成人向けコンテンツを見せないためのフィルターは、有効でしょうか。

シオリーヌさん:年齢に応じたサービスは使ったらいいと思います。ただ、フィルターをかいくぐるものってありますよね。親のアカウントで動画を見ていたら、触れてしまうものもあるじゃないですか。「フィルターをかけているから大丈夫」とは思わずにいてほしいです。

――見ていたとわかった場合は、どう対応すればよいですか。

シオリーヌさん:ただ「見ちゃダメ」ではなく、年齢制限がある理由を説明することですね。

成人向けコンテンツは、大人の性的な欲求を満たすための商品なので、刺激の強い演出もあります。痴漢のように、現実には犯罪になる行為が題材になっているものもある。そのまま現実の人間関係でまねをしてよいものではないし、まだ十分に判断できない年齢の子どもに見せないための制限なんだよ、と話しておく必要があると思います。

心配でも、踏み込みすぎない。「上手な子離れ」とは

――子どもに好きな人や交際相手ができたら、親はどこまで関わってよいのでしょうか。

シオリーヌさん:親子といえど、別の人間です。好きな人がいると聞いたら「そっか」と話を聞くし、悩んでいれば相談にのる。でも、その恋愛に親が関与しなきゃいけないわけではないと思います。もちろん、デートDVなど、大人の助けが必要な状況ならサポートする必要があります。

――「何でも話してね」と伝えても、話してくれないときは?

シオリーヌさん:その子にとって心地よい距離感もあるので、無理に聞き出す必要はないと思います。困っていることがないか、時々声をかけながら、話さないと決めていることは尊重する。

性教育で最終的に難しいところって、「上手な子離れ」だと思うんですよ。心配であればあるほど、本人の意思を尊重するのが難しくなることもあって。

例えば子どものLINEの友だちを全部チェックして、心配な相手は親御さんがブロックするようにしていたとしても、その子は親に隠れて、SNSで知り合った人のところに泊まりに行ったりするんですよね。

親が把握しよう、管理しようとするほど、子どもはうそをついたり、抜け道を探したりすることもあるんだなと、そのときに感じました。

――心配だからこそ把握したくなりますが、それだけでは守れないんですね。

シオリーヌさん:どこかで、その子を信じて手を離すタイミングが来るんだと思います。私たちも「あのときは、うまくいかなかったな」という経験から学んできたじゃないですか。同じ後悔をさせたくないのは愛情だけれど、先回りして全部取り除くと、本人が経験する機会までなくなってしまう。

必要な情報は渡すし、相談にものる。そのうえで「助けが必要になったら全力で助けるから、言ってね」と伝えておく。そういう手の離し方がいいのかなと思っています。

相談には「あなたはどうしたい?」。選択を支える親の役割

――子どもが悩みを打ち明けてくれたとき、気をつけたいことはありますか。

シオリーヌさん:代わりに決めないことです。大人は「その二択なら、絶対こっちがいいよ」と言いたくなるけれど、その子の人生では、もう一方を選んだ先に楽しい未来が待っているかもしれないじゃないですか。「こっちにしておけば?」をぐっと我慢して、「あなたはどうしたい?」と聞く。そこは、親も辛抱が必要なのかなと。

――恋愛は本人に任せながらも、望まない妊娠などを防ぐための備えは必要ですよね。

シオリーヌさん:そうですね。恋人ができたと話してくれる関係なら、「親には言いづらいかもしれないけど、避妊のために必要なものがあるときは相談してね」と伝えることも大事だと思います。

コンドームを買いたい、ピルを飲み始めたいと思ったときに、お金がなくて買えなかった、ということはあってほしくない。「必要なお金は出すから、言ってね」と、具体的に支えることもできると思うんです。

――最後に、保護者へのメッセージをお願いします。

シオリーヌさん:大人自身も、自分の権利について十分に教わってこなかったと思うんです。自分のことは自分で決めていいし、嫌なことには「NO」と言っていい。まずは自分にもそういう権利があると知って、身近な大切な人にも広げていけたらいいのかなと。

「正しい情報を、私が全部教えなければ」と、プレッシャーを感じすぎなくて大丈夫。動画も漫画も絵本も、使えるものはいろいろあります。いろんなものや人の力を借りながら、最終的に子どもたちに必要な情報が届いていれば、それでいいと思います。

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お話を伺ったのは

シオリーヌ 助産師・性教育YouTuber

助産師として総合病院の産婦人科病棟で勤務後、2017年に性教育の講演活動を開始。2019年からYouTubeでの発信を始め、生理の知識や家庭での性教育、出産・子育てなど幅広いテーマを扱う。SNSの総フォロワーは30万人超。全国の学校や自治体での講演にも精力的に取り組んでいる。著書に『CHOICE 自分で選びとるための「性」の知識』(イースト・プレス)、『やらねばならぬと思いつつ〈超初級〉性教育サポートBOOK』(ハガツサブックス)など。

この記事を書いたのは

篠原亜由美 ライター

法学部卒業後、通信教育などを手がける教育業界の企業に勤務し、その後ライターとして、女性誌や複数のWeb媒体で、暮らしや子育てを中心としたライフスタイル分野で取材・執筆を行っている。2児の母で、子どもはすでに成人しており、中学受験や大学受験を経験。実体験をもとに、同世代の女性に寄り添えるような記事を心がけている。

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