アトピー性皮膚炎は、「外用薬(塗り薬)」「内服薬(飲み薬)」「保湿剤」の3つを使って治療を行います。病院で処方されるアトピーの薬の種類、外用薬(塗り薬)の塗り方、内服薬の飲み方の注意点、薬の副作用などにはどんなものがあるのでしょうか。
スキンケアや生活全般から子育てについてまで、何でも相談できると人気のカリスマ小児科医、北浜こどもクリニック院長の北浜直先生に、子供のアトピーの薬についてお話を伺ってきました。
病院で処方されるアトピーの薬の種類
アトピー性皮膚炎の治療の基本は、スキンケアと保湿ですが、症状がひどい場合や、痒みが激しい場合は、「外用薬(塗り薬)」と「内服薬(飲み薬)」を使用することもあります。
塗り薬
アトピー性皮膚炎の治療の基本は「外用薬(塗り薬)」の使用です。アトピー性皮膚炎を発症した場合、まずは保湿が必要なのと、肌の炎症を取る必要があります。炎症を抑える薬としては、ステロイド薬などがあります。塗り薬を処方するのは、皮膚の炎症と痒みを抑えるためです。
飲み薬
「内服薬(飲み薬)」としては、主に抗ヒスタミン薬が処方されます。抗ヒスタミン薬は、鼻炎やぜんぞくなどを始めとしてたアレルギー症状を抑える薬です。痒みが激しい場合や、一見肌はきれいに見えるのに痒がる場合などに飲み薬を使うこともありますが、当院では、根本的な治療方法としては採用していません。
市販薬や薬草はおすすめしない
市販薬は、成分の中に不純物が多いのでおすすめしません。アトピーになるような敏感な肌を持つ子は不純物に反応しやすいため、市販薬の使用は控えた方がよいと思います。また、薬草やハーブなども注意が必要です。「自然のものだから安心」なのではなく、自然のものでも化学的に作られたものでも、その子にとってアレルギー反応を引き起こしてしまう物質には十分に気を付けるべきでしょう。
アトピーの塗り薬の種類一覧
アトピーの塗り薬は以下のような種類があります。病院では、患者さんの症状や要望に合わせて処方します。
ステロイド薬
炎症を抑える薬として、ステロイド薬を使用します。ステロイド薬の強さは5段階あり、症状によって使い分けをします。ステロイド薬を始め、アトピーの治療に使う塗り薬には特にニオイなどはありません。
非ステロイド薬
特に、0歳の子や、ステロイドがまだ使えない子に処方します。非ステロイド薬と併せて適切なスキンケアを行うだけで、アトピーが緩和される子もいます
タクロリムス
アトピーにも使用される塗り薬で、皮膚の免疫を少し抑制してアトピーに作用するという非常に良い薬です。当医院では、基本的にはタクロリムスを使用し、悪化した時にステロイド薬を使用します。タクロリムスと併せて正しいスキンケアを行い、最終的にはタクロリムスも使用しなくなるのが理想です。
ヒルドイドなどの保湿剤
医療用の保湿剤です。保湿効果が注目され、美容目的での使用増加がニュースにもなった薬です。
アトピーの発症や、悪化をさせないためには日々のスキンケアが重要です。市販の保湿剤の中には不純物が多いので、病院で処方されるものを使用しましょう。
塗り薬の塗り方と注意点
アトピーの塗り薬の塗り方の注意点と、顔や頭など部分別の塗り方を紹介します。
注意点
塗り薬を塗る前には、患部を清潔にすることが重要です。お風呂に入ったときには、皮脂や汚れだけでなく、肌に残った薬も石鹸などでキレイ落としましょう。
顔
指示された分量を指示された面積に塗りましょう。口の周りは、食事やよだれで汚れやすいので、汚れをこまめに拭きとり、清潔にしてから塗りなおしましょう。
頭
頭皮に対して、塗り薬は基本使いません。頭皮に対して、塗り薬は基本使いません。頭皮は分泌物が多いので、薬を塗ってしまうと毛穴がふさがったようになり、余計にかぶれてしまいます。適切にシャンプーを行い、きちんと乾かすと問題ないでしょう。
手足
手足は薬が取れやすいため、実は薬が作用しにくい場所です。また、手足には、曲げ伸ばしを行うヒジやヒザがあります。ヒジやヒザは、曲げ伸ばしをすることで皮膚に刺激が加わったり、薬が取れやすかったりすることで炎症しやすい部位なので、しっかりケアする必要があります。
しかし、薬が取れやすい場所だからといって、包帯などで保護を行う必要はないでしょう。医師の指示に従って、指示された分量を指示された面積に塗りましょう。
アトピーの飲み薬の種類一覧
アトピーの飲み薬は以下のような種類があります。病院では、患者さんの症状や要望に合わせて処方します。症状や効果には個人差があるので、医師の指導のもと用法用量を守って使用する必要があります。
ステロイド薬
アトピーの飲み薬には、基本的には抗ヒスタミン薬を使用します。塗り薬としても使われるステロイド薬は、飲み薬としても抗ヒスタミン薬のひとつとして活用されています。アトピーの治療以外に、鼻炎や蕁麻疹の治療にも使われています。
アレロック
アレルギー症状の緩和を目的とした抗ヒスタミン薬のひとつであるアレロック。アレロックとは商品名です。花粉症の症状を緩和する薬として認識されている場合もあるかもしれませんが、じんましんや皮膚のかゆみなどにも処方されます。
ザイザル
ザイザルも、抗ヒスタミン作用によりアレルギー症状の緩和を目的とした薬です。アトピーやアレルギー性鼻炎、じんましん、湿疹、皮膚炎の治療に使用されます。
クラリチン
クラリチンとは、ロラタジンという抗ヒスタミン薬の商品名です。医療用医薬品としてだけではなく、市販薬としても販売されています。一般的に、眠くなりやすいとされている抗ヒスタミン薬の中でも、唯一眠くならない薬と言われ、航空機のパイロットが服用することもあります。
飲み薬の飲み方と注意点
アトピーの飲み薬の飲み方には、注意点があります。
指示された用法を守る
塗り薬と同様に、指示された分量を指示された回数服用しましょう。
何で飲むかに注意が必要な場合も
薬によっては、ミルクなどと一緒に飲むと多少効果が落ちるものもあります。しかし、まだミルクしか飲めない赤ちゃんが薬を飲む場合もあるので、飲み薬を何で飲むかにあまりこだわらなくてもいいと思います。気になる場合は、医師に相談してください。
眠くなってしまうことも
先にもお伝えしましたが、抗ヒスタミン薬の飲み薬は、副作用として眠くなってしまうものもあります。特に子供の場合、寝ている間は皮膚が痒くても掻かなくなることもあるため、皮膚を掻かないようにあえて眠くなる飲み薬が処方されることもあります。
アトピーの薬の副作用
アトピーの薬には、副作用があるものもあります。
副作用の内容
ステロイド薬の塗り薬を長期的に使うと、皮膚が薄くなってしまうなどの副作用があります。医師の指導のもと、症状が強く出た時にだけ塗るなどメリハリをもって使い、効果が出てきたら薬の量を減らしていてば、特に問題はありません。
飲み薬の抗ヒスタミン薬は、眠くなってしまうなどの副作用があることは前述の通りです。飲み薬についても、医師に指示された用法を守りましょう。
医師の判断に従った服薬においては、副作用は心配ない
医師の診察、判断に従った服薬については、副作用の心配はありません。用法・用量を守って正しく使いましょう。
アトピーの治療には、薬を上手に使おう
アトピーの治療において、薬を使用しなければならない場合があります。医師の診察・判断に従い、正しく使用しましょう。
記事監修
神奈川県川崎市・北浜こどもクリニック院長。
1976年生まれ、埼玉県出身。2002年聖マリアンナ医科大学卒業。2006年からは山王病院の新生児科医長務める。2010年に北浜こどもクリニックを開院。2012年医療法人社団ペルセウス設立。The Japan Times誌の「アジアのリーダー100人」に、2015年から3年連続選出されている
文・構成/HugKum編集部